虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット

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第31話、帝国を打ち破る

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  私が闇魔法使いを倒してゾンビたちを焼き払い、王国軍の防御壁の上に戻ると、王国軍の兵士たちが、歓声を上げて迎えてくれました。

 トムが駆け寄り私の手を取り。

「一時はもう駄目かと思ったよ、サヤカのお陰で助かったよ、ありがとう」

 ジャネットが泣きながら私に抱き付き。

「ワァーン、サヤカ聖女様ー!・・・・・、無事で良かった」

  ジイチャンが飄々と。

「何て言ったってサヤカ聖女様だからな、フォ、フォ、フォ、」

 此れには、皆が笑い出して私は口を尖がらして。

「もうー!・・ジイチャンは私の使い魔の癖に直ぐに揶揄うんだから」

 私の言葉に今度は皆が爆笑したのです。

 私たちは、臨時の宿舎に戻り、夕食を食べた後にトムと外に出て、草原に敷物を敷いて座り満天の星空を見上げていたのです。

 トムが私の肩を抱き寄せて。

「今日は今迄で一番、焦ったよ、まさか闇魔法で死人を操るとは思いもしなかったから」

「本当にそうですね、死人を操るなんて人間のする事じゃないわ」

「でも、サヤカのお陰で無事に切り抜けることが出来て、帝国に勝てそうだ、今日の褒美に何か上げないとね」

 私は恥ずかしいけれど。

「褒美に私を抱きしめてくれますか」

 トムは私を優しく抱きしめてキスをして。

「サヤカ、大好きだよ、愛しているよ」

「私もトムが大好きで愛している」

 2人の愛の言葉は、満天の星空の下の草原に流れて静かに消えたのです。

 次の日の朝に、此れからの戦いについて軍議が開かれて、帝国軍は魔法軍団も弓部隊も壊滅して、兵士の数も減っているので王国軍は総攻撃を掛けて決戦をすることになったのです。

 昼前に戦いは始まり、トムは愛馬に跨り私の上げた雷魔法剣で一振り20人位の帝国軍を倒して進み、ジャネットとショウジャ将軍が、剣で2人共、競い合うよに負けじと相手を倒し、魔法騎士団長ゴッドファーの魔法軍団も魔法で帝国軍をなぎ倒して怒涛の勢いで帝国の本陣に進んでいた。

 帝国軍は、本陣を守っていた最後の砦の騎馬軍団の1万を投入して来たのです。

 私は、1万の帝国の騎馬軍団に流星魔法を放ちました。

 2m位の大きさの5千の真っ赤な流星が、騎馬軍団に降り注ぎ、騎馬軍団は壊滅したのです。

 帝国軍は、残っていた騎馬隊が皇帝を守りながら逃走したのでした。

 王国の騎馬隊が皇帝を追いかけようとしたのですがトムが全軍に停止を命じて

「今回は、帝都まで攻め入り帝国を壊滅させるつもりだから焦る事は無い、我々は帝国を打ち破ったのだ、皆の者よくやった。今日は此処までだ。休んで明日からに備えてくれ」

「ワァー! 勝った!!・・・・帝国に勝った・・・バンザーイ、バンザーイ」

 兵士たちから歓声が上がり、私も拳を突き上げて「やったー!」と叫んだのでした。


         ~~~~~~~~~~~~~~~


 一方、敗れた帝国軍は皇帝を守りながら帝都を目指して馬を走らしていた。

 馬上で皇帝は。

「どうして兵力が倍の負けるはずの無い、帝国が負けたのだ」

 と呟きながら馬を走らせていたのだ。

 今日は、最初はあの黒装束の男の闇魔法で完全に勝ったと思ったのだが、あの憎い聖女に闇魔法使いが倒されると、帝国軍の兵士たちは倒され始め劣勢に立たされてしまい。

 最後の砦の帝国最強の魔法で強化した騎馬軍団も、聖女の見た事も無い流星魔法で壊滅させられて命からがら逃げ出してしまい、此れから如何すれば良いか考える事も出来ずに帝都に向かい馬を走らせている皇帝だったのだ。


 3日3晩、休まずに馬を走らせて帝城に辿り着いた皇帝を待ったいたのは、妖艶な綺麗な顔を般若のようにして怒り狂った王妃のソフィーナだった。

 皇帝の顔を見るなり、皇帝の顔を殴り付けて。

「何ていう様なの、よくもまあ、私の大事な兵隊を全滅させて、おめおめと帰って来れた物ね」

 二人の様子を見ていた、ただ一人生き残った第一将軍は有り得ない出来事に驚き。

「あの冷徹な氷の皇帝が・・・・・」

 と呟き絶句していたのだ。

 ソフィーナ王妃は第一将軍を睨みつけて。

「貴方も同罪ね、何が将軍よ、死んで詫びなさい」

 そう言いながら黒い光線を放ち第一将軍の首を切り落として、茫然としている者たちに向かって。

「今から私が采配を振るいます。従わない者は第一将軍と同じ目に合わせるから、分かったわね」

 その場にいた者たちは震えながら膝を付き、ソフィーナ王妃に忠誠を誓ったのだった。

 皇帝は信じられない思いでソフィーナ王妃を見て。

「私が愛した王妃は何処に行ったのだろうと」

 空虚に呟いたのであった。
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