虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット

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第29話、帝国との開戦

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 其の頃、帝国の陣地内では、帝国軍は一夜にして出現した王国軍の巨大な防御壁に驚き、急いで皇帝に知らせたのです。

 知らせを受けた皇帝はテントの外に出て王国軍側の巨大な防御壁を見て。

「嘘だろう! あの巨大な防御壁を一晩で作れるはずがない」

 と現実を認められずにいたのだが、第一将軍が。

「配下の者を偵察に行かせましたが、あの防御壁は高さが20mで幅が5mあり、長さは真ん中の兵士たちが出入りする為と思われる1kmの場所を除き10kmは有ります。防御壁以外の所は深い谷で通る事は出来ませんので、防御壁を登るか防御壁の無い1kmの間から攻撃するしかありません」

 皇帝は、歯ぎしりして内心では、昨日の内にあの米粒みたいな砦を攻撃して落としておけば良かったと後悔していたが、表情に出さずに。

「王国軍の阿保め、此方を攻撃するつもりで防御壁の間を1km開けているのだろうが、此方がそれを利用して王国軍を蹴散らしてやろう、皆の者、出撃の用意をせよ」

 こうして皇帝はサヤカ聖女の罠にはまった。


            ~~~~~~~~~~~~~~


 一方王国側は私の作った魔法を倍にして反射する盾と防御に優れた軽い鎧を身に着けて戦う兵士たちは準備を終わり。

 防御壁の窓には矢には特殊な火の玉の魔法を付けた弓矢を持った兵士と、魔法力を倍にする魔法具を付けた、魔法騎士団長ゴッドファー・サバイバが率いる魔法軍団が待機していたのです。

 防御壁の開いている1kmの間にも、魔法を倍にして反射する盾と防御に優れた軽い鎧を身に着けて戦う兵士たち1万人が、いつでも戦える準備をして帝国軍を待ち構えていたのです。


 防御壁のどんな攻撃にも耐えられる防御バリアーに守られた監視塔には総大将のトムが念話用の腕輪を付けて采配を振るう為に入りました。

 私は、防御壁の上でいつでも飛び立、戦えるようにジイチャンと様子を見ていたのです。

 帝国軍が動き出して、どうやら先頭は5千人位の魔法軍団の様です。

 其の後には1万位の弓部隊が、更にその後には数え切れない数の兵士たちが続々と、数に物をいわせて王国軍を蹂躙しようとして進んで来たのです。

 此方に勝てる用意が無かったら、逃げ出したくなるような数です。

 トムは、兵士の各隊長に念話で敵がなるべく近づく攻撃しない様に命令を出しました。

 帝国軍は王国軍が攻撃をしてこないので防御壁に近付きその距離が100m位の所で、帝国の魔法軍団が魔法で攻撃して来ました。

 魔法を反射する盾を持っている兵士たちが盾を掲げて魔法の攻撃を反射して帝国側に倍の威力で返すと、帝国の魔法軍団は次々と倒れて、半分位は倒れて魔法軍団は驚き悲鳴を上げて逃げ惑い、指揮官の魔法使いも死んだのか、魔法軍団は統制を乱して我先に逃げ出したのです。

 帝国軍は、魔法軍団に入れ替わり弓部隊が弓を構えていたのですが、先に王国の弓部隊が火の玉を破裂させる矢を無数に放つと、帝国の弓部隊の所に落ちて、火の玉が破裂して辺りは火の海になったのです。

 1万人の弓部隊は壊滅しましたが、続く兵士たちが剣を振りかざして突撃して来たのです。

 其処に又、火の玉の矢を無数に打ち込むと帝国の兵士たちは火の海に囲まれて焼け死ぬか逃げ出したのでした。

 此の戦いを丘の陣地で最初は余裕で見ていた皇帝は、自軍が大量の死者を出すと、此のままでは、全滅すると思い顔を真っ赤にして怒り狂い。

「な、何という事だ! い、遺憾! 兵を引けー、引き上げろー」

 帝国軍はこうして丘の上の陣地に引きあげたのです。

 帝国軍が引き上げると王国軍から歓声が上がり、拳を突き上げたり、抱き合って喜びを爆発させたのでした。

 私の側にトムや将軍などが集まり、シャネット騎士団長が泣きながら私に抱き付き。

「サヤカ聖女様のお陰で勝ちました、ありがとうございます」

トムも。

「本当だな、サヤカの作戦と魔法のお陰だな、それにしても見事な勝ち方だな」

 ショウジャ将軍が顔をクシャクシャにして喜び。

「あの大軍を此方の被害は殆どなく追い返すとは、信じられんな、サヤカ聖女様の魔法もそうですが、軍師としての才能も素晴らしいですな」

 私が、褒められて顔を赤くして恥ずかしがっていると、ゴガン砦の責任者の部隊長ガタリィが飛び込んできて。

「ワッハッハー、サヤカ聖女様は素晴らしい、長年苦しんでいた帝国を叩き返すとは、溜飲が下がりました、ワッハッハー」

 トムが綺麗な顔を歪めて苦笑いして。

「まだ、戦いは終わっていないのだぞ、戦いは何があるか分からいのだから油断は禁物だ」

 ジャネットも頷いて。

「殿下の言う通りですわ、明日に備えて休みましょう」

 次の日にまさかトムが言った事が本当になるとは夢にも思わなかったのです。
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