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第18話、悪人たちを断罪する

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 ゴウマヤァ公爵やその派閥の貴族達を処罰する為の報奨を渡すパーティには、王都にいる殆どの貴族たちが集まり、王宮の大広間は大勢の貴族たちで溢れていました。

 勿論、ゴウマヤァ公爵やその派閥の貴族たちは何食わぬ顔で又その家族たち、その中には私を虐待し続けた母娘、得意満面の笑顔でいたのです。

 私は母娘を見て心の中で呟いたのです。

「今こそ、私を虐待し続け、森に捨てて殺そうとした恨みを思い知るがいいわ」

 最後に陛下夫妻とトムと私が壇上に上がり陛下が挨拶を始めました。

「皆の者! 今まで王国に忠誠を誓い多大な功績を残した人たちを称え報奨を与えるパーティを始める」

 会場から拍手が沸き上がったが、拍手が止むと陛下は再び話し始めて。

「しかし、その前に残念な報告がある。皆も知っているだろうが、帝国が我が国を侵略して大陸の覇者になる為に戦争を仕掛けてこようとしている。信じられない事に王国の貴族の中に王国を裏切り帝国に味方をする貴族たちがいる事が判明した。その者は人身売買や、麻薬の売買にも手を出している犯罪者なのだ、証拠は掴んでいる」

 陛下が一呼吸置くと、ゴウマヤァ公爵の派閥の貴族たちは思いがけない成り行きに顔色を青くしていたのだが、ゴウマヤァ公爵だけは、平然としていて薄ら笑いさえ浮かべていたのだ。

 陛下は再び口を開き。

「その者たちの名は、ワルキュイ・ゴウマヤァ公爵とその派閥の者たちだ」

 会場は一瞬、水を打ったように驚きシーンと静まり返ったが、ゴウマヤァ公爵が顔を引きつらせながらも強がりの笑いをして。

「ワッハッハー、陛下と言えども証拠も無いのに戯言は止めて頂きたいですな」

 私は黙っていられず。

「証拠なら、十分程ありますわ、何だったらお見せしましょうか?」

「馬鹿な、証拠など有るものか、聖女様と言え嘘は許せませんぞ」

 私は微笑みながら。

「どういう訳か、私の手元にゴウマヤァ公爵、貴方の日記が届いております、其れには貴方が帝国の使者に会い裏切りの契約をした日にちや、他に人身売買した日と相手の名が記されていますが、貴方の手元から無くなっているのではありませんか?」

 流石にゴウマヤァ公爵は王国が自分の日記を手に入れている事を知り顔色を青くして。

「わ、わしは、日記など付けた事が無い、それは捏造した物に違いない、わしを陥れようとした者が捏造したに違いない」

「そう言い張りますか?専門家の鑑定の結果貴方の自筆と鑑定されましたが」

「嘘だ、鑑定人も買収されてグルだろう、わしは無実だ」

「分かりました。其れでは仕方ありませんね、言い逃れの出来ない証拠をお見せしましょう」

 私は大広間に魔法で映像と音声を流しました。

 映像はゴウマヤァ公爵が人身売買をしている所や麻薬の取引の映像が映し出されて、音声も流れて言い逃れの出来ない証拠でした。

 私は追い打ちを掛けて。

「ゴウマヤァ公爵、貴方は聖国の王妃で私の母親を誘拐して、私を生んだ後に殺害しましたね。生まれた私を貴方の屋敷の図書室に幽閉して、そこの母娘に鞭や棒で殴り付け虐待させて、挙句の果てには利用価値が無いと分かり、魔物の森に私を投げ捨てて殺そうとしましたね。幸いにも王太子殿下に拾われて生き延びましたが」

 名指しされた母娘は驚き、恐怖の為か顔色を真っ青にして震えていましたが私は構わずに。

「私は聖女で、この大陸の最高位者です。貴方たちは、この大陸の最高位の私の母親を誘拐して殺害をし、其れでは飽き足らずに、私を虐待して殺害しようとした罪は到底、許せません」

 ゴウマヤァ公爵は「まさか」と呟きガックリ項垂れて膝から崩れ落ちたのでした。

 陛下が大きな声で叫んだのです。

「此の大罪人たちを牢屋にぶち込めー!!」

 ワルキュイ・ゴウマヤァ公爵とその派閥の者たちは、ショウジャ将軍が用意していた軍人と騎士団たちに引き立てられて牢屋に入れられたのです。

 あの私を虐待していた母娘も聖女の私にしていた罪に慄きながらも。

「あの子が生きていて聖女になっていたなんて、いっその事もっと早く殺せばよかった」

 と言い、反省もせずに、最後は泣き喚きながら、私の騎士団に引き立てられて牢屋に連れて行かれました。

 全てが終わると陛下が会場の貴族たちに向かい。

「騒がせてすまなかった!だが此れで王国の膿は取り除く事が出来、帝国との戦いの準備に専念できる。皆の者、一致団結して帝国との戦いに勝って王国の平和と家族を守ろうではないか」

 会場から津波のような拍手が沸き上がり、王国は一枚岩になり帝国に立ち向かう下地が出来たのです。

 私は、その様子をトムと並んで見ていたのですが、トムが私の耳元で。

「帝国に勝って早くサヤカと一緒に成りたいな」

 私も同じ気持ちなので少し顔を赤らめて頷いたのでした。
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