虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット

文字の大きさ
上 下
14 / 38

第14話、サヤカ聖女の披露パーティで

しおりを挟む

 万雷の拍手で迎えられた私は、緊張の余り逃げ出したい思いでしたが何とか冷静を取り戻して挨拶をしたのです。

「只今、陛下よりご紹介にあずかりました聖女のサヤカ・スタシャリでございます。まだ年若い未熟者ですが王国の為に精一杯、聖女としての使命を全うする覚悟でございます。皆様のご指導を仰ぎながら聖女として頑張りますので宜しくお願い致します」

 何とか無事に挨拶を終える事が出来てホッとすると、出席者から先程よりも大きな万雷の拍手が沸き起こり、隣の殿下が小さな声で。

「うん、良い挨拶だったよ、流石にサヤカ聖女だ」

 次に三大公爵家の筆頭で前王の弟であるショウジャ・ランゴバル様が挨拶をして、正義感の強い武人で王国の将軍らしく綺麗に髭を蓄えた厳つい顔を綻ばせながら私の前に膝をつき。

「サヤカ・スタシャリ聖女様、聖女就任おめでとうございます。ショウジャ・ランゴバル公爵で将軍です。国民と軍部を代表してお祝いを申し上げます」

 私の手を取り軽いキスをすると立ち上がり出席者に向かい。

「此の国難の時期に聖女になられたサヤカ・スタシャリ聖女様に害をなすものは、ショウジャ・ランゴバルが許さんと心得よ、以上だ」

 そう言い放つと陛下が苦笑いをし、私が呆気にとられている間に自分の席に戻ったのでした。

 スズリャ王妃様が挨拶に立ち。

「堅苦しい事はここまでです。後は皆さんパーティを楽しんで下さいね」

 陛下が私に。

「立派な挨拶だったよ、よくやった」

 王妃様も私の手を取り。

「サヤカは物凄いわね。何でも吸収して若いのに物怖じしなくてこの先が楽しみだわ」

「そんな事ないですよ。挨拶の時も逃げ出したい位でしたよ」

 それからは、高位の貴族たちが次々に挨拶に訪れて対応に追われて大変でした。

 最後に挨拶に来たのは三大公爵家のワルキュイ・ゴウマヤァ公爵でした。

 太って腹の突き出た、脂ぎった顔で私を舐め回すように見てから言葉を発して。

「どれ、最後にわしが挨拶しようか、わしはワルキュイ・ゴウマヤァ公爵です。それにしてもサヤカ聖女様はお綺麗ですな、さぞ男に持てるでしょう、ワッハッハー、わしも若い時は王国一の美男子と言われたのですが、事業に成功して金回りが良くなり、美食の結果こんな身体になってしまいましたが、ワッハッハー」

 私は、男の傲慢で無礼な態度に腹がたちましたが、それよりもゴウマヤァ公爵の後ろに付いて来た2人を見て身体中の血が逆流する思いがしたのでした。

 何と! その2人は、忘れもしない私を虐待していた母娘だったのです。

 母娘は、私が虐待して森に捨てた子供だとは気が付かないで、母親は狐顔の強欲そうな顔で歳に似合わない派手なドレス姿で私に。

「サヤカ聖女様、ごきげんよう。ゴウマヤァ公爵の妻のアバァリンです。よろしくお願いします」

 娘は少し狐目の巨乳で色気たっぷりの美女だが、乳房がこぼれ落ちそうな胸の開いた真っ赤な派手なドレス姿で私を見下したような感じで。

「サヤカ聖女様、聖女に就任おめでとうございます」

 直ぐに殿下の方に目をやり色気たっぷりにしなを作って。

「トムウッド王太子様、ごきげんよう、お久しぶりです。後でダンスをご一緒してくださいませ」

 私は、何とか正気を保ちワルキュイ・ゴウマヤァ公爵を神の目で見て見たのです。

ワルキュイ・ゴウマヤァ公爵50歳
滅びた聖国の王妃の誘拐犯
ゴウマヤァ公爵家の入り婿
謀略に優れた詐欺師
弱い闇の魔法使い
王国を帝国に売り渡そうとしている、裏切り者。

 何ともおぞましい悪人だったのです。

 私は母娘の方は神の目で見る気にもなれず、見ませんでした。

 ワルキュイ公爵に何処で何をしているのか分かるように、追跡の魔法と、記録の魔法を掛けたのです。

 ゴウマヤァ公爵家の人達が私の前を去ると殿下が心配そうに私を見て小声で。

「サヤカ、大丈夫か?顔色が悪いよ」

「だ、大丈夫です、でも後で陛下夫妻と両親に話したい大切な話があります」

 王妃様も私を見て。

「あの、傍若無人なゴウマヤァ公爵家の者たちのせいね、許せないわ。今に見ていなさい」

 私は、心の底ではゴウマヤァ公爵家の人達を絶対に許さない!

証拠を集めて真実を暴き処刑台に送り、絶対に復讐をする決意をしたのでした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

処理中です...