虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット

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第12話、サヤカ聖女の騎士団が出来る

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 今日はスタシャリ公爵家に帰る日です。

 サヨが起こしに来て身支度をしてくれて食堂に行くと、少し青白い疲れた顔のトムウッド殿下がいました。

「殿下、おはようございます。お疲れみたいですが大丈夫ですか?」

「おはよう、色々あって少し疲れ気味かも」

 私は殿下に治癒魔法を掛けて差し上げると殿下は青白い光に包まれて顔に赤味が戻り、私を見つめて。

「サヤカは優しいな、身体が楽になったよ。ありがとう」
 
私は殿下に見つめられて胸がドキッとしましたが平静を装って。

「いえ、どういたしまして、ご無理なさらないで下さいね」

 食事が運ばれてきて、殿下と一緒に食事をしましたが、考えてみると殿下と2人だけで食事をするのは初めてなので私は幸せな気分になりました。

 食事が終わり、お茶を飲んでいると殿下が王国の現状と帝国の関係を話して。

「帝国が戦争を仕掛けてくるのは分かっている。国内の王国を裏切ろうとしている貴族たちを処分しないといけないのだが、証拠を掴めずに困っている。何かいい考えはないか」

 と聞いてきたので私は考えて。

「疑いのある貴族の屋敷に相手に分からない様に魔法で忍び込んで、証拠の書類などを探してみてはどうでしょうか?」

「えっ?そんな魔法があるの?」

「はい、透視魔法と、透明化魔法を使えば相手に見つからず簡単に侵入が可能ですが、私がやってみましょうか?」

 殿下は少し考えてから。

「いや、やっぱり駄目だ。僕の大事なサヤカを危険な目に合わす事は出来ない」

 僕の大事なサヤカと言われて、私はやっぱり聖女になった私に何かあったなら困ると思って、殿下が言ったのだと思い少し寂しかったのです。

 その日は、お父様は宰相としての仕事があるからと、王宮に残り、私とお母様は普段より多い騎士に警護されながら自宅の屋敷に戻ったのです。

 屋敷に戻ると弟のガリュウが.

「僕が言った事が本当になったね。お姉さんが聖魔法を授かり聖女になるなんて凄いな、でも聖女様になったから此処から出て行くの?」

「ガリュウ、ありがとう、私は何処にも行かないわ。今迄と同じよ、ガリュウはいつも可愛いわね」

 頭を撫でようとしたのですが、逃げられてしまいました。

 久しぶりに自宅で、お母様とお茶を飲んで話していると沢山の馬蹄の足音がして、執事が来て。

「サヤカ聖女様の騎士団が見えました」

 私とお母様が同時に。

「えっ? 早い! 本当に?」

 執事に案内されて玄関を出ると、馬を馬小屋に繋いだ女性ばかりの騎士たちが整列して私の前に膝をついて 。

「この度サヤカ聖女様の騎士団に任命された20人で、騎士団長を拝命したシャネット・スワローズです。我々騎士団一同は身命を捧げてサヤカ聖女様に仕える事を誓います」

 私は、シャネットが騎士団長として仕える事に驚いたのでしたが、聖女らしく毅然とした態度で皆さんを見渡して。

「任務ご苦労様です、此れから宜しくお願いします」

 後の対応は執事に任せて、シャネット団長だけを連れてお母様と応接間に行くとジャネットは。

「先日までのご無礼をお許しください、此れからはサヤカ聖女様に誠心誠意お仕え致します」

 私は真面目過ぎるジャネットが可笑しくなり、思わず笑いが漏れ。

「クスッ、あの冷たくて厳しいシジャネット・スワローズは何処に行ったのかしら?そんなにかしこまらなくて良いわよ」

 お母様も笑いながら。

「オホホ、サヤカの言う通りよ、ジャネット楽にしなさい」

「はい、ありがとうございます、聖女様になってもサヤカお嬢様は変わりませんね、ウフフ」

 お母様を呼びに執事が来て出て行き、ジャネットと二人になり、私は有る計画の為にジャネットに聞いてみたのです。

「ジャネット、貴方は魔法を使えるの?」

「魔法は、まるで駄目です、生活魔法で水を出せるくらいです。でも剣でしたらその辺の男性騎士にも負けませんけれど、この間も近衛騎士団の副団長と模擬戦で引き分けでしたよ」

「そうなんだ、もしかしたら私の冒険に付きあって貰うかも知れないけれど、その時は宜しくね」

 ジャネットは怪訝な顔をして。

「はい、分かりました」

 それから、私は聖女のお披露目のパーティーまでにある計画の為の調べものをして準備をしたのでした。
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