虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット

文字の大きさ
上 下
12 / 38

第12話、サヤカ聖女の騎士団が出来る

しおりを挟む

 今日はスタシャリ公爵家に帰る日です。

 サヨが起こしに来て身支度をしてくれて食堂に行くと、少し青白い疲れた顔のトムウッド殿下がいました。

「殿下、おはようございます。お疲れみたいですが大丈夫ですか?」

「おはよう、色々あって少し疲れ気味かも」

 私は殿下に治癒魔法を掛けて差し上げると殿下は青白い光に包まれて顔に赤味が戻り、私を見つめて。

「サヤカは優しいな、身体が楽になったよ。ありがとう」
 
私は殿下に見つめられて胸がドキッとしましたが平静を装って。

「いえ、どういたしまして、ご無理なさらないで下さいね」

 食事が運ばれてきて、殿下と一緒に食事をしましたが、考えてみると殿下と2人だけで食事をするのは初めてなので私は幸せな気分になりました。

 食事が終わり、お茶を飲んでいると殿下が王国の現状と帝国の関係を話して。

「帝国が戦争を仕掛けてくるのは分かっている。国内の王国を裏切ろうとしている貴族たちを処分しないといけないのだが、証拠を掴めずに困っている。何かいい考えはないか」

 と聞いてきたので私は考えて。

「疑いのある貴族の屋敷に相手に分からない様に魔法で忍び込んで、証拠の書類などを探してみてはどうでしょうか?」

「えっ?そんな魔法があるの?」

「はい、透視魔法と、透明化魔法を使えば相手に見つからず簡単に侵入が可能ですが、私がやってみましょうか?」

 殿下は少し考えてから。

「いや、やっぱり駄目だ。僕の大事なサヤカを危険な目に合わす事は出来ない」

 僕の大事なサヤカと言われて、私はやっぱり聖女になった私に何かあったなら困ると思って、殿下が言ったのだと思い少し寂しかったのです。

 その日は、お父様は宰相としての仕事があるからと、王宮に残り、私とお母様は普段より多い騎士に警護されながら自宅の屋敷に戻ったのです。

 屋敷に戻ると弟のガリュウが.

「僕が言った事が本当になったね。お姉さんが聖魔法を授かり聖女になるなんて凄いな、でも聖女様になったから此処から出て行くの?」

「ガリュウ、ありがとう、私は何処にも行かないわ。今迄と同じよ、ガリュウはいつも可愛いわね」

 頭を撫でようとしたのですが、逃げられてしまいました。

 久しぶりに自宅で、お母様とお茶を飲んで話していると沢山の馬蹄の足音がして、執事が来て。

「サヤカ聖女様の騎士団が見えました」

 私とお母様が同時に。

「えっ? 早い! 本当に?」

 執事に案内されて玄関を出ると、馬を馬小屋に繋いだ女性ばかりの騎士たちが整列して私の前に膝をついて 。

「この度サヤカ聖女様の騎士団に任命された20人で、騎士団長を拝命したシャネット・スワローズです。我々騎士団一同は身命を捧げてサヤカ聖女様に仕える事を誓います」

 私は、シャネットが騎士団長として仕える事に驚いたのでしたが、聖女らしく毅然とした態度で皆さんを見渡して。

「任務ご苦労様です、此れから宜しくお願いします」

 後の対応は執事に任せて、シャネット団長だけを連れてお母様と応接間に行くとジャネットは。

「先日までのご無礼をお許しください、此れからはサヤカ聖女様に誠心誠意お仕え致します」

 私は真面目過ぎるジャネットが可笑しくなり、思わず笑いが漏れ。

「クスッ、あの冷たくて厳しいシジャネット・スワローズは何処に行ったのかしら?そんなにかしこまらなくて良いわよ」

 お母様も笑いながら。

「オホホ、サヤカの言う通りよ、ジャネット楽にしなさい」

「はい、ありがとうございます、聖女様になってもサヤカお嬢様は変わりませんね、ウフフ」

 お母様を呼びに執事が来て出て行き、ジャネットと二人になり、私は有る計画の為にジャネットに聞いてみたのです。

「ジャネット、貴方は魔法を使えるの?」

「魔法は、まるで駄目です、生活魔法で水を出せるくらいです。でも剣でしたらその辺の男性騎士にも負けませんけれど、この間も近衛騎士団の副団長と模擬戦で引き分けでしたよ」

「そうなんだ、もしかしたら私の冒険に付きあって貰うかも知れないけれど、その時は宜しくね」

 ジャネットは怪訝な顔をして。

「はい、分かりました」

 それから、私は聖女のお披露目のパーティーまでにある計画の為の調べものをして準備をしたのでした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう
ファンタジー
なろう様でも投稿しています。 真夏の昼下がり歩道を歩いていた「加賀」と「八木」、気が付くと二人、見知らぬ空間にいた。 そこに居たのは神を名乗る一組の男女。 そこで告げられたのは現実世界での死であった。普通であればそのまま消える運命の二人だが、もう一度人生をやり直す事を報酬に、異世界へと行きそこで自らの持つ技術広めることに。 「転生先に危険な生き物はいないからー」そう聞かせれていたが……転生し森の中を歩いていると巨大な猪と即エンカウント!? 助けてくれたのは通りすがりの宿の主人。 二人はそのまま流れで宿の主人のお世話になる事に……これは宿屋「兎の宿」を中心に人々の日常を描いた物語。になる予定です。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

都市伝説と呼ばれて

松虫大
ファンタジー
アルテミラ王国の辺境カモフの地方都市サザン。 この街では十年程前からある人物の噂が囁かれていた。 曰く『領主様に隠し子がいるらしい』 曰く『領主様が密かに匿い、人知れず塩坑の奥で育てている子供がいるそうだ』 曰く『かつて暗殺された子供が、夜な夜な復習するため街を徘徊しているらしい』 曰く『路地裏や屋根裏から覗く目が、言うことを聞かない子供をさらっていく』 曰く『領主様の隠し子が、フォレスの姫様を救ったそうだ』等々・・・・ 眉唾な噂が大半であったが、娯楽の少ない土地柄だけにその噂は尾鰭を付けて広く広まっていた。 しかし、その子供の姿を実際に見た者は誰もおらず、その存在を信じる者はほとんどいなかった。 いつしかその少年はこの街の都市伝説のひとつとなっていた。 ある年、サザンの春の市に現れた金髪の少年は、街の暴れん坊ユーリに目を付けられる。 この二人の出会いをきっかけに都市伝説と呼ばれた少年が、本当の伝説へと駆け上っていく異世界戦記。 小説家になろう、カクヨムでも公開してましたが、この度アルファポリスでも公開することにしました。

処理中です...