虐げられ続け、名前さえ無い少女は王太子に拾われる

黒ハット

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第6話、サヤカ、スタシャリ公爵で暮らし始める,1

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  自分の部屋を見終わり、一階のリビングに案内されて入ると、公爵夫妻が着替えて待っていました。

  ヤサモリァ公爵様のあだ名は、【氷の宰相】と聞いていたのですが、とてもそんな感じには見えない柔和な顔で。

「サヤカ、君は今日からサヤカ・スタシャリで私たちの子供になったのだよ、今日から私の事はお父様と呼びなさい」

  セシャター公爵夫人もニコニコして。

「サヤカ、私の事はお母さまと呼んでね、私たち夫婦には女の子がいないので、貴女が養女に成ると聞いたときは夫婦とも喜んだよ、此れから親子として宜しくね」

  こんなどこの誰とも知らない、名前も無かった孤児の私を引き取って子供にしてくれた優しい二人に心から感謝して涙が出てしまい。

「はい、お父様、お母様、私を娘にしてくれて感謝しております、本当にありがとうございます。これから不束な娘ですが宜しくお願い致します」

  お父様とお母様が同時に私を抱きしめて。

「可愛い娘が出来てアリーナ女神に感謝するよ」

  そんな時に。

「僕を忘れているなんて、ひどーい、ちゃんと紹介してよー、もぅ」

  お母様が慌てて。

「貴方、さっきまで昼寝をしていたから後で紹介しようと思っていたのよ」

「もう良いよ、サヤカ姉さん初めまして、僕はこの家の長男で名前はガリュウで10歳だよ、僕のお姉さんに成るんだよね、滅茶苦茶綺麗なお姉さんが出来て嬉しいよ、宜しくね」

  私は、少しおませで可愛い弟が出来て嬉しくなりガリュウの手を握って。

「サヤカよガリュウみたいな可愛い弟が出来て嬉しいわ、宜しくね」

  ガリュウは顔を真っ赤にして頷き、逃げるようにリビングから出て行ったのでした。

  お母様が笑いながら。

「あの子,サヤカが綺麗すぎるから照れてしまって逃げたのよ、オッホホ」

  其の頃サヨは5人の侍女達から。

「サヨさんだけがサヤカ様を独占するなんてズルいわ、私たちにもお世話をさせてよ」

  と抗議を受けていたのでした。

  話し合いの末に結局、順番にサヨに付いて一緒にサヤカ様の世話をする事になったのです。

  そんな事があったとは知らない私は、暖かく迎えてくれた新しい家族と使用人の皆さんにに感謝して食堂に向かいました。

  食事は、お父様とお母様に弟を加えた4人で和やかに食べて、時々弟が私を赤い顔をしてチラチラみていましたが、美味しく頂きました。

  お風呂に入る時には、サヨともう一人の初めての侍女が世話をしてくれて、恥ずかしいのですが、私は身体は自分で洗うと言っても、サヨと違う侍女が。

「公爵家の作法に慣れてください」

  と言い何もさしてくれないです。

  その晩は、ベッドに入り寝ようとしたのですが、余りにも今の自分が幸せ過ぎて、此れはすべて夢で 目が覚めたなら、あの暗くて埃まみれの図書室の硬いベッドの上なのではないかと思い、恐くて眠れなく涙が出て止まりませんでした。

  そんな時に、ドアをノックしてお母様が部屋に入り、ベッドで泣いている私を見て、黙って私のベッドに入り優しく抱きしめて下さり。

「サヤカ、もう大丈夫よ、安心して眠りなさい」

  私は、泣きながらお母様に抱き付きそのまま眠ってしまったのでした。

  次の日の朝に目が覚めると見なれない天井で、辺りを見渡して、そうだ、昨日にスタシャリ公爵家の養女として来たことを思い出したのです。

  そういえば、昨夜私が泣いている時に優しく抱きしめてくれたお母様がいません、私が眠ったのを見届けて部屋に帰ったのでしょうか。

「サヤカ、目覚めたの?」

  お母様の声がして私は思わず変な声で、「ひゃい」噛んでしまいました。

「お母様おはようございます、昨夜は迷惑を掛けてすみませんでした」

「いいのよ、気にしないで、心の傷はそんなに簡単には無くならないわよ、時間が解決して来ると思うわよ、だから私には遠慮しないで甘えてね」

「はい、ありがとうございます」

  私は、優しい新しく家族になった両親、弟、それにこの家族の養女にしてくれた陛下夫妻と王太子様に感謝したのです。

  お母様が私の顔を両手で挟んで。

「うん、今日もサヤカは可愛いわね、食堂で朝食を頂きましょうか、サヨ身支度をお願いね」

「お母様、最初からそんなに甘やかされたら私、我儘娘になるかも知れないですよ」

「オッホホ、いいのよ、少し我儘位が可愛いわよ」

  サヨに身支度をして貰い、食堂に行くと丁度お父様も起きて来たので。

「お父様、おはようございます」

「おおー、サヤカ、おはよう、可愛い我が娘よ、ご機嫌いかがかな?」

  お父様の言い方が余りにも自然で、本当の実の娘に対するみたいでしたので、私は嬉しくなり、お父様に抱き付いいてしまい。

「お父様、ありがとうございます、大好きですわ」

「おおー! 娘とはこんなに可愛い生き物なのか、たまらん」

  それを見ていた弟のガリュウが。

「息子で悪かったですね、フンだ」

 その姿が可愛かったので私は彼の頭を撫でて。

「ガリュウは今でも可愛いから、大人になったなら令嬢たちが群がると思うと今から心配だわ」

「え、えっとー、大丈夫だよ、サヤカ姉さんより良い女の人はいないから、うん」

  ガリュウが、訳の分からない返事をして食堂にいた両親は笑い、使用人たちは笑い声を押さえて肩を震わせて笑っていたのです。

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