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第33話、戦いの前夜

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 アニス魔女とベスト王子が王国軍を引き連れてベルト領地に来るのが2カ月後と分かった。

 ベルト街には防御壁と堀があるので敵は簡単に街に入れないだろうが、念の為に街の5km先に砦と防御壁を作る事にして土魔法隊を動員して作らせることにしたのだ。

 防御壁は高さ20m、幅5m、長さは5kmにしたので此れなら敵はこれから先に進めないだろう。

 防御壁の屋上には弓部隊と魔法隊を配置して騎馬隊は獣道に潜ませるようにした。

 砦と防御壁が完成したのは敵が来る1カ月前で、作戦は敵が近づいたなら最初に弓部隊が攻撃をしてその後に魔法隊が魔法で攻撃する。

 それでも敵が進んで来たなら大砲を撃つ、最後は騎馬隊が敵の本陣に攻撃をする作戦だが、上手く行けば戦いは俺たちが勝つだろう。


 戦いの1カ月前に住民に王国軍が攻めて来る事と理由を話すと、住民たちは皆もいざっとなったなら戦うと言ったので俺は嬉しかったが、戦いに加わるのは禁止したのだ。

 ギルドマスターのジョンソンに会い王国軍が攻めて来ると話すと。

「やっぱりですか。ナラン王都のギルドから連絡が来て知っていましたが、ギルドは国とは別な組織なので中立を守ります。もしかして敵の兵士が略奪を始めたなら冒険者たちと住民を守ります」

「それでいいが、この街にいる冒険者たちには街を見回り警備して欲しいが駄目か?」

「戦いに参加しないで警備するくらいなら良いでしょう」

 これで住民の安全は確保できるので戦いに専念出来る。



 敵が近づいたので我が軍も迎え撃つために砦に集結して戦いの準備をしている。

 味方の軍は警備隊を弓部隊として加えたので2千人に増えたが、敵は3万なので15倍だ。

 ここまで準備できたのはカミラとミキルが敵の様子を調べたお陰で2人には特別に報奨金を上げておいた。

 アリシアとは作戦を念密に話し合い間違いが起こらないようにした。

 カミラとミキルにアニスのいる場所を見つけて知らせるように言い、俺は単独行動をしてアニスを倒す事に専念するつもりだ。



 俺たちが全ての準備を終えた10日後に敵軍が姿を見せたが、兵の数が少ないのは多分、先陣なのだろう。

 先陣の兵士の数は5千人くらいで、砦からバリュスの作ってくれた望遠鏡で見ていると陣地を築き始めている。

 場所は俺たちの砦から5kmくらい先の小高い丘の上に本陣を作り、本陣から2km先にそんなに役に立ちそうもない土嚢を積んでいる。

 自分たちの数が俺たちの15倍なので勝ったつもりで防御を疎かにしているみたいだ。


 敵は陣地作りに1週間かかり、作り上げたのにその1週間過ぎてもアニスとベスト王子の本隊は姿を見せない。


 10日後にようやく本隊が到着したが、1週間過ぎても戦いを始める気配がしないのは何故だろう。


 砦の屋上から敵陣を見ていたジャンクが。

「この砦と防御壁を見て怖気ついたのと違うのか。このまま逃げ帰るかも知れないぜ」

ルイザがチャリーの真似をして。

「ノッポはやはり馬鹿ね。ここまで来てそんなわけないでしょう。多分こちらの出方を見ているかもしれないわ」

 皆は色々言っているが俺はもしかしたなら何か企んでいる気がする。



 翌日に敵の本陣から使者の旗を掲げて出て来た者がいるので望遠鏡で見ると、妖艶な若い女が護衛たちを従えて戦場には似つかわしくない派手なドレス姿で俺たちの砦に向かって来たのだ。

 俺が神の目で見るとドレス姿の女はアニスでやはり魔女で魅了、催眠、変幻の妖術を使えて魔力が60以下の人間には魅了と催眠などの妖術が効くが魔力が65以上の人には効果がない事が分かった。

 その他にもアニス魔女は人間を操るのに長けているが、武術と魔法を使えない事が分かった。

 俺は魔力が60以下の者たちはアニスに魅了されないように砦の中から出ないように言い待っていると、砦の近くに来たアニスが。

「新しく国王になられたベスト陛下の言葉を伝える。ベスト陛下は無益な戦いを望んでいない。バランとクロードを引き渡せば兵士や住民には攻撃しないと約束する」

 そこまで言うとアニスの目が赤く怪しく光り出したので俺が。

「残念だったな。アニスお前は魔女で魅了の妖術を使って皆を操っているのは分かっているが、魔力の多い者には効果がないのは分かっている」

 アニスは当然のように。

「ホッホホー! 貴方の部下が私を調べていたのは分かっていたわ。私が魔女だと分かって、それがどうしたのよ。貴方の兵士を戦いに出さないわけには行かないでしょう。出て来たなら私の妖術を使って私の味方にさせてあなた達を殺して差し上げるわ。ホッホホホー」

 この場で殺してしまえばアニス魔女の妖術が解けて戦わないで済むと思い、火魔法の炎を放ったが、アニスの姿は突然に消えた。

 如何やら妖術で自分の幻影を見せていたみたいなのだ。

 突然に消えたアニス魔女を見てバラン兄が。

「魔力が60以上の人に効かないのなら60以上の人たちで特殊部隊を作って戦えば良いだろう」

「魔力が60以上の兵士は幹部を含めても100人くらいしかいないので100人で3万の敵の兵士と戦うのは無理だ」

 俺は火魔法、土魔法、念力魔法の混合魔法を使って流星群を作るのを密かに練習して成功しているが、流星魔法を使えば敵の兵士を全滅させて勝てるだろう。

 だがアニス魔女が生き延びたなら又現れて何をするか分からないので、どうしても今回殺して決着を付けたいのだ。
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