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第35話、念願の砂糖を作る

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 クラーク領にいる間には久しぶりなので色んな人が訪ねて来て今日もギルドのチャドとキャシー夫婦がきてチャドが。

「アラン様が国王になったのには驚きました。でもこれでこの国も良くなるでしょう。ナル王都に冒険者ギルドを開設したいのですがよろしいでしょうか」

「王都にも冒険者が多いのでその方が助かる」

「早速、準備に取り掛かります」

 キャシーが小さいころの話をして。

「それにしても小さい頃はひ弱だったアラン様が国王になるとは人生とは分からないものね」

 20歳のキャシーが年寄りみたいな事を言うので思わず。

「キャシーおばあちゃんが言うみたいな事をいうのだな」

「失礼な。私はまだ20歳なのに」

 チャドも追い打ちをかけて。

「でしょう。最近キャシーは年寄りみたいな事を言い、私を子供扱いするのですよ」

 俺が何気なく隣のオーロラさんを見るとオーロラさんが。

「それは女性の方が精神年齢が上で愛する人が心配だから言うのでそれだけ愛されている証拠よ」

 オーロラさんに上手く言われてチャドも納得したみたいだ。

 チャド夫婦が帰ると今は稲作の指導員のグンターが来て

「アラン様、この間、山脈の麓で自生していたこんな物を見つけましたが食べられるのでしょうか」

 グンターが袋から取り出した物を見て驚いた。

 通称、砂糖大根と呼ばれているが正式にはヒユ科に属し、ほうれん草の仲間のてん菜だ。

 てん菜は寒冷地で育ち前世の日本では北海道で砂糖の材料とされ生産され、根の形は大根よりもカブに似ている。

 クラーク領は北海道程、寒冷地ではないが高地の山脈の麓なら寒いので生息に適していて繁殖したと思われる。

 次の日、グンターの案内で馬を飛ばして、てん菜を見つけた場所に行くと、てん菜が群生とまではいかないが所々に密集して生えていた。

 俺は思わず拳を突き上げてやったー! と叫んで ダンカーに笑われた。

 これで念願の砂糖を作れる。

 確かにてん菜から砂糖を作れるがてん菜の根の量が沢山要るので先ずは天然のてん菜から種をとり栽培して増やさなければいけない。

 てん菜の栽培に適したこの山脈の麓を開墾して広大な面積の畑を作り、てん菜の種を植えれば来年には試験的に砂糖を作れるかも知れない。


 農業とは自然が相手なので作物が直ぐに出来るわけでなく時間が掛かるので根気がいる仕事だ。

 稲作の指導はギードに任してダンカーには、てん菜の栽培の方法を教えて、てん菜畑を作らせて来年には砂糖を作りに挑戦するつもりだ。

 俺がナル王都に戻る時てん菜を持って帰り試験的に砂糖を作っていると、ダンカーから連絡があり、てん菜畑作りは人手が足りず目標の4分の1に届かずこのままでは来年の作付けが難しいと言って来た。

 土魔法を使えるのがダンカー1人なのに俺がてん菜が見つかって喜び急いで砂糖を作ろうとしたせいだ。

 確かにこの世界は科学や農業など全ての分野で前世に比べて遅れているがこの世界には魔法がある。

 その魔法を農業に生かす事が出来れば前世と違うやり方で農業を発展させられると考えた俺は、てん菜の栽培を1年遅らし、その間に魔法を使える人に俺が直接農業を教え魔法農業隊を作り、農業の発展につなげる事にした。

 魔法農業隊には今までと違い全国から土魔法を使える人だけでなく、火魔法、水魔法、風魔法 を使える人も加え募集すると大勢集まり、俺が心眼で見て農業に向いている200人を魔法農業隊に選抜した。

 今年、成人した者が多く読み書きのできない人もいたので最初は指導に苦労しそうだが、じっくり教えていくことにした。

 オーロラさんが読み書きを教えてくれることになり、国作りは各大臣に任せて俺は中断していたクラーク子爵領から持って来たてん菜の根から砂糖を作ってみた。

 作りかたは知っていたが道具がなく手作業だったが何とか砂糖を作る事に成功した。

 出来上がった砂糖は少なく最初にオーロラさんとドリスに小皿に少し入れて渡し。

「これが前世でお菓子や料理に使っていた砂糖だ。舐めてごらん」

 オーロラさんとドリスが少し舐めて。

「わぁ~! 甘い! 」

 ドリスも

「なにこれ! 舌がとろけそう。美味しい。アラン様、これは絶対売れるわ」

 ドリスは砂糖と塩は国が管理して国の財源にすると大張り切りだが砂糖の生産は来年からだと言うと、残念がっていた。


 200人の魔法農業隊には読み書きと並行して農業の基本的な事も教え始めた。

 作物を作るうえで大事な土壌なので色んな土壌を作ってどんな作物に合うのか勉強させた。

 俺が緑魔法で作物を速く作れるが、それでは俺がいないと作れなくなるのでなるべく緑魔法を使わず普通に作物を育てることにしている。

 魔法農業隊を指導していて読み書きを教えるだけで時間を取られやはり教育がいかに大事か痛感して教育に力を入れることにした。
 幸いレオナの妹のカトリーヌが教育に熱心なので彼女を王宮に呼び話をして。

「カトリーヌ教育省を作り6歳から15歳まで無償で義務教育をすることにしたが、君が教育大臣になって計画を推し進めてくれないだろうか」

「本当ですか。喜んで引き受けます。アラン様なら教育がいかに大事か分かっているので必ず学校を作ると思っていましたので実は用意をしていました」

「助かる。財務大臣のドリスと話し合って予算をもらってくれ」

 これで教育省も出来て最低限の行政機関もできて形が整ったので、少しずつでも行政改革を押し進める体制が出来た。
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