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第25話、総攻撃

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 次の日の朝早く王国軍の様子を見ていた諜報部から報告があり。

「王国軍は、貴族たちが最初の敗戦を見て戦争に反対して離脱する者が出て半分の貴族たちがバーカビ国王を見限って領地に戻っていきました。バーカビ国王は帰る貴族たちを怒鳴り散らしてあくまでも戦うつもりです」

 俺は総攻撃をするべきか考えて残っている兵士の数を聞いて。

「残っている兵士の数はどのくらいだ」

「正確にはわかりませんが、2万人くらいだと思われます」

 敵は半分の貴族たちが戦場を離脱したと思われるが、まだ2万の兵士がいるので総攻撃をかけるべきか考えて、用心の為に今日1日は様子を見ることにした。

 その日は昼を過ぎても王国軍の動きはなく勢いついているバレンが。

「アラン様、敵は怖じ気ついているのでしょう。今から総攻撃をしたらいかがでしょうか」

「焦るな。今日1日は様子を見る」

 結局その日は王国軍が攻めてこなかったのだ。

 

 その晩に食事の後でバレンが。

「明日は私が先陣を切って総攻撃をかけましょうか」

「バレンが先陣で戦うのは危険なので駄目だ。俺に考えがあるので先陣は歩兵だ」

「最初は歩兵ですか? 理由を聞いても良いですか」

 俺の作戦を説明して。

「歩兵は敵を谷間に誘い込むための餌だ。本当の先陣は弓部隊にする。第2陣は土魔法隊で騎馬部隊はここぞというときに投入する。そこで好機と見たなら全軍で総攻撃をするがこの作戦はどうだ」

「やはりアラン様は作戦を立てるのが上手ですね。私は王国軍の一部隊長という少人数で戦って来たので大勢での戦いは初めてなので勉強になります」

「おだてるな。俺も戦争は初めてなので不安だらけだ」

「それにしては落ち着て作戦を考えていますね。とても戦争が最初とは思えないです」

 俺は前世の戦争の戦い方を知っているので参考にしているがそんなことは言えないので嘘を言い。

「士気に影響するから落ち着いているように見せているだけだ。やせ我慢をしているだけだ」

「アハハ! やせ我慢ですか。ハッハッハ」

「笑うな! 俺の言ったことがそんなに可笑しいか」

「まさかアラン様やせ我慢などと言うとは思わず笑ってしまいました」

 傍にいたベンが。

「俺は、アラン様はいつも堂々と落ち着いているので心臓に毛が生えていると思っていました」

 これにはオーロラさんや側近たちも笑てしまっていたのだ。



 いよいよ今日は戦いに決着をつける為に総攻撃をかけるが作戦通り行くのか、敵はどんな作戦なのか心配だ。

 我が軍は敵の陣地に向かい進軍を初めて谷間を抜けると、敵は俺たちが攻めて来るとは思っていなかったみたいで大慌てで戦いの準備をしている。

 作戦通り歩兵500人を先頭に谷間の入り口まで進んで進軍を止めると、準備を終えた敵も数弓部隊が先頭で歩兵数千人が整然と並んで進んできた。

 100m先に来た所で歩兵を後ろに下がらせて味方と敵の弓部隊が一斉に弓矢を放つと敵の兵士がバタバタと倒れたが敵の弓部隊の放った矢は実力の違いだろうが味方には届かなかったので見方は誰1人として倒されなかった。

アニーが風魔法で矢を遠くに飛ばせたのと、日ごろの訓練の成果だろう。


 弓矢で大勢の兵士が倒れたのに倒れた兵士に構わず敵の兵士が進んできたので土魔法隊がこの戦いで初めて岩石の雨を降らしたのだ。

 これには敵の兵士が驚いていたが、弓矢と岩石で倒れたのは少なくとも千人近くはいるだろう。

 弓部隊と土魔法隊が交互に弓矢と岩石を放ち、敵の兵士は2千人近くが倒れたのを見て騎馬部隊を投入した。

 やはり騎馬部隊の威力は凄く瞬く間に敵の兵士を蹂躙して敵の兵士は恐怖に慄き戦場から逃げ出したのだ。

 好機と見た俺は全軍に総攻撃を命じたのだ。

 カーク男爵も自分の領兵の先頭に立ち大剣で敵をなぎ倒し、カーク男爵に負けてたまるかとクエン伯爵も敵陣に千人の兵士を引き連れて突入して敵を倒している。

 王国軍は河の前に陣地を築いていて戦いの不利を見て、貴族たちは橋を渡って逃げようとしていた。

 それを見て逃げられないように土魔法隊に岩石で橋を壊すように命じた。

 橋を岩石で壊された敵は追い詰められて河の激流に落ちて流される者もいる。


 戦いは昼過ぎには決着がつきバーカビ国王に従っていた貴族たちや王国軍の兵士たちは白旗を上げて降伏したが、バーカビ国王の姿が見えなかった。

 イアンが俺の傍に来て。

「バーカビ国王はあの陣屋のテントの中に隠れています」

 俺が側近たちとバーカビ国王が隠れているテントに行きテントの中を見ると、若い時は王国一の美男子と言われていたが、今はその面影もない太った豚のような中年の男が俺たちを見ると恐怖に体を震わせながらも剣を手に持ち、怒鳴り散らし。

「ぶ、無礼者―! 我はアーサー王国の国王のバーカビ国王だぞ。無礼は許さん」

 俺より先にベンが笑い。

「アッハッハッハー! 自分の兄とその子供を殺した罪人のくせに国王だと、笑わせるなお前など国王を名乗る資格はない」


 心眼で見たがやはりオーロラさんの父親で前王のカーシ国王を毒殺し、王妃と王子も殺しオーロラさんに暗殺者に殺して王印を奪うことを命じたのはバーカビで俺は許せないと思ったが、バーカビは手に持った剣で俺に襲い掛かり。

「死ねー!」

 叫びながら切りつけて来たのだ。

 ベンが俺の前に立ち。

「馬鹿目! 死ぬのはお前だ」

 バーカビは空中の何かを掴むように手を伸ばして血を吹きながら倒れたのだ。

 余りにも醜いバーカビの最後に、俺はこいつのためにどれ程の多くの人が苦しんだ事だろうと思い、今までは領民だけを考えて統治をして来たが、新しい国を興したなら善政を行い、国民全体を考え奴隷を無くし国民を平等に統治をおこなう事を誓ったのである。
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