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第23話、アランの作戦

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 諜報部のイアンから報告を聞いたが、その内容は余りにも馬鹿馬鹿しい話で、まさか女1人の為にこの国が此処まで酷くなっているとは思いもしなかった。

 それにしてもイアン達がいくら闇魔法を使えるからと言っても、大胆に王宮の中のバーカビ国王の寝室まで忍び込むとは思わなかった。

 前国王派はドクフナーを毒婦と呼んでいるらしいが、傾国の美女は聞いたことがあるが傾国の毒婦は聞いたことがない。

 子が子なら親も親だ。子が誤ったなら正すのが親なのに子の口車に乗って欲にかられて国を滅ぼすような行動をするノウタリ公爵を許す訳にはいかない。

 俺はイアンの報告を聞いたこの時、この国を立て直す決意をしたのだ。

 その為には今度の戦いに絶対に勝たなければならない。

 戦いはデニスに任して来たが、今度の戦いは俺の前世の知識の作戦で戦ってもらうことにしたのだ。


 この世界では歩兵が中心で戦うのが普通だが、俺の作戦は敵が攻めて来るのを待ち、弓部隊が弓矢で攻撃をした後に騎馬部隊が出撃すると、この世界で初めての騎馬部隊に敵は驚き、退却をするだろう。

 最後は退却する敵に魔法で攻撃をするのが俺の考えた作戦だ。

 戦う前の作戦会議で側近とカーク男爵、クエン伯爵の前でおれの作戦を言うとカーク男爵が。

「今までにない作戦で騎馬部隊での戦いとは素晴らしい作戦だ」

 戦いを任せてきたデニスも。

「騎馬部隊をどこで使うか迷っていたが、騎馬部隊を中心に戦うのは考えていませんでした。今度の戦いはアラン様の作戦で戦う方が良いと思います」

 皆が俺の作戦に賛成して俺は騎馬部隊の部隊長に任命した騎馬部隊の部隊長190cmの長身で髭を伸ばした、見るからに子供が見たなら泣き出しそうな強面の槍使いの武人バレン25歳を呼び出し。

「バレン今度の戦いは弓部隊が火ぶたを切るが騎馬部隊が中心で戦う。お前は今までは一兵卒として戦ってきたが、今は指揮官だということを忘れるな。部下の動きをよく見て戦いなさい。俺が銅鑼を3回ドドーンと鳴らしたならどんなに優勢でも引き上げるのだぞ」

「分かりました。必ず守ります」

 バレンは猪武者で前後を忘れて戦うので心配でくどいほど言ったが分かってくれたようだ」

 イアンが帰って10日後にバーカビ国王の引き連れた王国軍が姿を現したのだ。

 崖の上にいたイアンが王国軍の様子を知らせ。

「敵は河を渡った所で進軍を止めて簡単な陣地を作っています。テントを張り直ぐには攻めてこないみたいです。夜に忍び込んでバーカビ国王を殺しましょうか」

 俺は新しい国を興す決意をしていたのでイアンを叱り。

「馬鹿者! そんな勝ち方をして民衆が付いて来ると思うのか。誰が見ても正々堂々と戦い敵を粉砕して我が軍が強いことを見せつけなければ貴族どもは俺に従わないだろう」

「申し訳ございません。私が浅はかでした」

「分かれば良い。2度と卑怯な事は申すな」

 俺は戦いに勝つのも勝ち方があると考えている。

 この国は、今は戦国時代で力で貴族たちをねじ伏せなければ言うことを聞かないだろう。俺は今度の戦いでクラーク子爵軍がこの国で最強だと思い知らせるつもりだ。

 その為にはバーカビ国王軍を正々堂々と戦い力でねじ伏せ、完全な勝利をして前国王派と現国王派の貴族たちが俺に従うようにしなければいけないのだ。


 心配なのでバレンを再度、呼んで続きの細かい作戦を話し。

「敵が戦場に出て来たなら砦の前に兵士千人を出すがこれは弓部隊の攻撃で退却させないための囮だ。敵はこちらの兵士が少ないので進んでくるだろう。直ぐに味方の兵士を退却させたなら騎馬部隊が出撃しなさい。敵は最初は奴隷兵を出すだろうが、なるべく殺さずに武器を捨てて降伏させて保護しなさい。正規の兵士が出て来たなら騎馬部隊の強さを思う存分見せてあげればいい」

「分かりました。作戦を頭に刻み込んで戦います」

 これだけ細かく言えば猪武者のバレンといえども作戦通りに動くだろう。

 バーカビ国王軍は陣屋を築いているので出来上がる3日程は攻撃をしてこないだろうが、用心の為にイアンの諜報部と砦の屋上から兵士に24時間、見張り番を置いた。

 砦の中の俺の部屋に引き上げるとオーロラさんが。

「アラン様、お疲れでしょう。疲れの取れる薬草のお茶を用意したのでお飲みください」

「ありがとう。気が利くな。オーロラさんも疲れただろう。もう休みなさい」

「私はのんびりしていたので疲れませんわ。それより今度の戦いに勝てるのでしょうか」

「相手は烏合の衆だ。100%勝てるとは言わないが80%の確率で勝てるだろう。だが俺は戦争は初めてなので作戦通りに行くか分からないので不安だ」

「デニスさんに聞きましたが、アラン様の立てた作戦なら勝てると思います」

「デニスに聞いたのか。オーロラさんは何故勝てると思うのだ」

「だって、この世界にない作戦で騎馬部隊など敵は見るのは初めてで敵の兵士は恐怖で逃げまどい、戦いにならないと思います」

「そうなれば良いのだが」

「絶対そうなります。アラン様はもっと自信を持つべきですわ」

「アハハ! そうか。オーロラさんが言うのなら自信をもとう」

 やはりオーロラさんが傍にいると落ち着く、戦場は危険だが連れてきて良かった。


 オーロラさんが隣の部屋に行き寝ようとするとアニーが来て。

「夜分すみません。1人でいると落ち着かなくてオーロラさんがこちらにいると聞いて話をすると落ち着くと思いまして」

「いつの間に2人は親しくなったのだ」

 オーロラさんが。

「以前から女同士何でも話し合える親友になりました」

「そうだったのか。アニーでも不安になるのか」

「当たり前でしょう。これでもか弱い女ですもの」

「アニーさん嘘おっしゃい。心臓に毛が生えている癖に」

「酷い! 私はそんなに強くありません」

「私の部屋に行って女同士で話しましょう」

 どうやら俺は邪魔みたいで2人はオーロラさんの部屋に行って女同士で男の俺に聞かせられない話をするみたいだ。
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