5 / 36
第5話、塩と商人
しおりを挟む漁村に行き村長に合うと60代の村長は俺の手を取り深々と頭を下げて。
「わしは村長のギオルと言います。災害の時は誠にありがとうございました。アラン様のお陰様で何とか生きています」
そうか漁村の住民の家は全て濁流に流されて住民の被害も一番ひどく、半分の住民は俺の父親と同じ濁流に流されて亡くなり、俺が家を無償で建てて母上から貰ったお金を渡し1年くらいは生活出来るようにしたのだ。
その後どうなったのか聞き。
「災害の後、村民はどうなった。漁業は再開したのか? 」
「漁業は再開したのですが、魚を買う人が少なく村民たちと漁業はやめて農村で働く事にするか相談しているところです」
この世界では海の魚を食べる習慣がなく食べるのは何処にでもいる淡水魚が主だ。
海水魚は保存が出来ないから貴重な動物のタンパク質なのに漁村に近い人たちだけしか食べないので漁民は貧しい生活を強いられている状態なのだ。
「漁村の住民は全部で何人いる? 」
「全員で50人しかいません」
「全員の生活の面倒をみるから俺の仕事を手伝ってくれないか」
「本当ですか。ありがとうございます。アラン様の為なら死に物狂いで働きます」
「そうか。今から住民を集めてくれ」
全住民と言っても男女、子供、老人も合わせて50人だが全員が集まると。
「俺は海水から塩を作る方法を知っている。君たちにその方法を教えるので塩つくりに協力してくれ」
俺の言葉に皆は。
「海の水から塩を作れるのか? 」
やはり信じられないみたいだが俺は構わず。
「信じられないのは最もだが俺の言う通りにしてくれ」
(これからは入浜式塩田での塩の作り方を参考にして書きました)
それから入浜式塩田で塩を作る事にして塩田の高さを海の干満差の中間位にして、その周りに浜溝(はまみぞ)をめぐらすことで、満潮時に海水を塩田に入れ、干潮時には雨水などを排水する自然を利用した構造を作らせた。
満潮のとき、浜溝の床面まで海水を入れておくと地場にまかれた砂の水分が太陽熱と風力により蒸発すると、「毛細管現象」が起こり、浜溝から浸透した海水が床面に上昇し、海水の塩分が次々に砂に付着する。
次に塩分の付着した砂を「沼井」という場所に集めて海水を注ぐと、砂に付いた塩分が溶けて塩分濃度の高い「かん水」となり、「藻垂壷(もだれつぼ)」に溜まり。こうして「かん水」を集める作業を「採かん」という。
「かん水」は「煎ごう」されるまで、「助壷(すけつぼ)」や「大壷(だいつぼ)」などに貯蔵しておく。
最後に集められた「かん水」(濃度の高い塩水)をろ過し、釜で焚き上げることで水分が除かれ、結晶となり塩が作られる。
この仕組みを作るのに3カ月かかり実際に塩が出来たのは半年後で、出来た塩を舐めた村長のギオルが。
「塩だー! 本物の塩だー! 」
感激して嬉し涙を流しながら叫んでいる。
全員の住民が初めて作り上げた塩を舐めて
「塩だー! 」
と叫び男も女や子供も抱き合って喜んでいた姿は俺の脳裏に焼き付いた。
漁村で塩を作っている事は秘密にして製造法を知られないようにするために漁民には製造過程の役割を教えなかったのは当然だ。
こうしてこの世界で初めての海水から塩を作る事に成功した俺は、領民にできた塩を最初は無料で配り次からは今、使っている岩塩の10分の1の値段で発売した。
これでクラーク子爵領の領民の食生活はお米に続いて塩を使えて変わるだろう。
塩を発売して1カ月後にナル王都からある人物が屋敷に訪ねて来た。
護衛のベンが。
「ナル王都からアラン様にわざわざ会いに来たと言っていますがどうも怪しい。追い返しますか?」
ナル王都から俺にわざわざ会いに来たと言うのが気になり会ってみる事にして。
「ベン、失礼のないように応接間に案内しなさい。暗殺者の時は即座に対応する準備をしておけ」
ベンに案内されて応接間に入って来たのは驚くことに30代の綺麗な女性で俺を見ると。
「初めてお目にかかります。私はナル王都で商いをしているアリス商会の会長のアリスと申します」
いやー、驚いたぜ。アリス商会と言えば前世の〇菱グループくらい有名でこの国で知らない人がいないくらいなのだ。
しかも美人の女の代表の会長とは、俺も挨拶を返して。
「俺はクラーク子爵領の領主のアラン・クラークです。宜しく。遠いナル王都からわざわざお越しご苦労様です。どんな御用件でしょうか」
もっていたカバンから塩を取り出し。
「この塩はアラン様が海の水から作ったと言うのは本当でしょうか? 」
「はい、そうですが。それがどうかしましたか」
アリスさんが呆れた様子で。
「どうしたかじゃないでしょう。これは歴史的な出来事なのがわからないの。岩塩の10分の1の値段にも驚くわ」
俺はこの時これはお金になると思い塩を作る方法を当分の間、秘密にすることにすると案の定アリスさんは。
「海の水から塩を作る方法を教えて頂けないかしら。代金は白金貨100枚、10億ルピーでいかがでしょうか」
冗談じゃない! 白金貨1000枚でも教えるはずがない。この塩をこの国だけではなく大陸に普及したなら白金貨100枚などは、はした金なのに断るのは当然なので俺はきついことを言い。
「お断りします。金貨1000枚でもお断りいたします。アリスさんも商人ならこの塩の価値が分かるはずです。違いますか。分からないのなら商人を止めた方が良いのではないですか。それとも俺を騙そうとしているのでしたらお帰りください」
「アッハッハッハー! 参ったわ! とても16歳とは思えないわ。試したりしてごめんなさい。私は色んな人と会って取引をしたけれどアラン様みたいに頭の回転の良い人は初めてよ」
流石に王国一の商人で一筋縄ではいかないみたいな感じなので。
「時間が勿体ないので本音で話しませんか」
「分かりました。塩の作り方は諦めます。アラン様の作った塩をクラーク子爵領以外で販売する権利を認めて作った塩を私の商会に売っていただけますか」
俺は忙しく塩の販売など出来そうもないので願ってもない話なので。
「良いでしょう。正式な契約書を結びましょう」
アリスさんは正式な契約書と聞いて。
「アラン様は何者なの。私より物知りでとても15歳の領主とは思えないわ。此れからは塩以外の取引も出来そうね。末永くお付き合いをお願い致します」
「末永くとは結婚の初夜みたいな言葉だな」
「アラ! 本当ね。私独身なので結婚しましょうか」
「冗談を言うな。俺は当分結婚する気はない」
アリス商会とはその後、長い付き合いになり商人の力の凄さに驚く事になったのである。
708
お気に入りに追加
1,180
あなたにおすすめの小説
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【魔法学園編 突入☆】
はぴねこ
BL
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。
前世で52歳で亡くなった主人公はその自我を保ったまま、生前にプレイしていた『星鏡のレイラ』という乙女ゲームの世界に攻略対象のリヒトとして転生した。
ゲームでは攻略が難しくバッドエンドで凌辱監禁BL展開になってしまう推しのカルロを守るべくリヒトは動き出す。
まずは味方を作るために、ゲームでもリヒトの護衛をしていたグレデン卿に剣の指南役になってもらった。
数年前にいなくなってしまった弟を探すグレデン卿に協力する中で、 リヒトは自国の悍ましい慣習を知ることになった。
リヒトが王子として生まれたエトワール王国では、権力や金銭を得るために子供たちを上位貴族や王族に貢ぐ悍ましい慣習があった。
リヒトはグレデン卿の弟のゲーツを探し出してグレデン卿とゲーツを味方にした。
ゲームでカルロの不幸が始まるのはカルロの両親が亡くなってからのため、カルロの両親を守って亡くなる運命を変えたのだが、未来が変わり、カルロの両親は離婚することになってしまった。
そして、そもそもカルロの両親はカルロのことを育児放棄し、領地経営もまとも行なっていなかったことが判明した。
カルロのためにどうしたらいいのかとリヒトが悩んでいると、乳母のヴィント侯爵がカルロを養子に迎えてくれ、カルロはリヒトの従者になることになった。
リヒトはこの先もカルロを守り、幸せにすると心に誓った。
リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。
カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。
魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。
オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。
ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
心躍るロンド ~面白き自然農の世界~
うーちゃん
エッセイ・ノンフィクション
偶然本屋で出会った一冊の本に導かれ、それまで農業経験ゼロだったぼくは「自然農」の世界に足を踏み入れることになった。そこで見たもの、感じたこと、出会った人々。自然農を実践する中でぼくも大きく成長していく。自然を感じながら作物を育てる喜び。それはまるで心躍(おど)るロンド(輪舞曲)だった。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦
*主人公視点完結致しました。
*他者視点準備中です。
*思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる