上 下
2 / 36

第2話、災害の後で

しおりを挟む
 大雨、崖崩れ、河の氾濫などで領地を見回っていた父親アダモが崖崩れの濁流に巻き込まれて亡くなってから半年がすぎた。

 15歳の若さで領主になった俺は父親と濁流に巻き込まれ多くの家臣や領民を失い、頼りになる家臣は老人の執事バロンだけだ。

 俺は土魔法で前世の土木、建築の知識を使い決壊して濁流が街に流れ出した河や支流は、2度と氾濫しないように河の両側に頑丈な石垣の堤防を2重に設置したのでこれで氾濫は起きないだろう。

 次にしたのは街の住民の住まいだ。

 土魔法を使えば2時間くらいで3LDKの丈夫な石作の家を建てられるので、家を失った人達の家を建てて無償で提供したがその数は住民の半数にあたる5千戸だ。

 最後に俺の得意な分野の農業で農地を整地し、河から流れ出した泥は栄養豊富なのでそれを使い農地を改良しておいた。

 それと、ついでに今まで荒地だった場所を土魔法で開墾して改良して街に溢れた泥を新しい農地に使い、街の泥をなくし一石二鳥で荒地を農地に変え農民に無償で分け与えたのだ。

 次々と街が短期間で復興すると、此れには住民が驚き。

「アラン様は無能な息子と言われていたが凄いお方だ」

 と言い俺の株が上がって領民たちの人気が出て仕事がやりやすくなった。

 特に農民は農作地が綺麗に整備されたうえ無償で農地を分け与えられ、流されていた家や壊れた家も無償で建ててもらい災害の前より良くなったと言い、俺を神様のように思っていて俺の為なら何でもすると言っているらしい。

 母上のエリーも俺を見直して少しは頼りがいがあると認めたみたいで最近は何をするにも先に相談するようになった。

 可笑しいのはバロンで。

「わしはアラン若様が只者でないと信じておりました」

 全くどの口で言うのだ。父親が生きている時は能無しのバカ息子と先頭に立って言っていたくせに今では掌を返して俺を褒めている。

 この半年で領民の俺を見る目が変わったみたいで領主としての仕事がやりやすくなった。



 話は変わるが、隣のモーガン・カルダ伯爵は、今は大雨の災害の復旧で戦いない状態だが、復旧が終われば武術に優れた父親と側近が亡くなったので好機とみて攻めて来るだろう。

 今の我が子爵家の正規の兵は災害で亡くなり少なくなって災害前の半分の100人、戦いの時に兵士になる農民の準兵士も少なくなって300人でモーガン伯爵の軍は正規の兵士だけでも500人以上、農民の農兵を合わせると千人はいるので勝てるはずがないのだ。

 俺は、復興は土魔法を使い半年で終わらせたが、モーガン伯爵領の復興は手作業なので俺の予想では完全に復興するには2年以上はかかるとみている。

 この2年を有効に使い戦力を整え俺はモーガン伯爵を追い返すつもりだ。

 その為には人材を集めるのが第一で前世の知識を使い失業者の為に職業紹介所を開設した。

 職員は俺の小さいころから知っている、幼馴染のこの間の災害で亡くなった父親の側近だった兵士の娘で同じ15歳のキャシーというお転婆な娘だ。

 キャシーを呼び出すと相変わらずで。

「アラン様、何のご用ですか? 側室ならお断りいたしますが、正室なら考えます」

「バカな事や冗談を言うな。お前を正室にも側室にする気は毛ほども無い。仕事の話だ。ちゃんと給料も払う」

「給料を貰えるならどんな仕事でも頑張ります」

 キャシーに職業紹介所の仕事の内容を話、やはり仕事を探していた15歳と16歳の女性を部下につけて職業紹介所を開設した。

 災害の後なので失業者が多く農民は農地が増えて人手不足で農民の家で働く人が増えたみたいだが、領地では食料が不足しているので農民が増えて食料が増えるのは良い事だ。

 勿論、我が子爵家でも兵士と使用人の募集をして出来れば俺の側近になれる人材を探しているが果たして良い人材が来るだろうか。

 キャシーはお転婆でああ見えても頭が良く、仕事を真面目にして職業紹介所を軌道に乗せるのに成功している。

 この職業紹介所がこの世界で初めて商業ギルドと呼ばれ後の冒険者ギルドなどの各種ギルドの先駆けになったのだ。


 ある晩、エリー母上が俺に袋を見せながら。

「アラン貴方を見直したわ。こんなに早く領地を復興させてアダモもあの世で喜んでいるでしょう。これはいざという時の為に用意していたお金よ。今度の災害で使おうと思ったけれどアランのお陰で使わないで済んだのでアランに渡しておくわ。白金貨50枚と大金貨など5億3千ルピーが入っているのよ。自由に使いなさい」

 この世界のお金は硬貨だけで単位はルピーで硬貨の種類は。

鉄貨   1ルピー
小銅貨  10ルピー
大銅貨  100ルピー
小銀貨  1,000ルピー
大銀貨  1万ルピー
小金貨  10万ルピー
大金貨  100万ルピー
白金貨  1,000万ルピー

 平民の子供2人の平均家庭で1カ月暮らすには大銀貨5枚、5万ルピーがあれば充分で前世に比べれば物価は5分の1で、母上が俺に渡したお金は円にすると26億円と大金だ。

 今回の災害でもしも俺が土魔法を使えなかったなら復興に5年以上かかり、母上が俺に渡したお金では足りなくクラーク子爵領は領民から見放され破滅していただろう。

 俺は土魔法を授けてくれた神様に感謝したのだ。

 バロンが管理していた税金の内容とお金の流れも知り、子爵領の全権を握った俺はお金も自由に使えるようになり、暇なときは領内を見て回りながら領民の話を聞いて領地を改革するつもりでいる。



 今日は応募して来た人たちの面接をする日で応募して来たのは50人でどんな人がいるか楽しみだ。

 俺は神の目と言われる相手の考えが分かる心眼で応募者を見るので良い人材を見つける事が出来るだろう。

 初日は50人の面接をして終わって採用不採用の通知は1週間後にした。

 出来れば面接に来た全員を採用したいが、心眼で見て相手の見たいのを見ると、例えば今日面接した俺の側近にしたい人物をこんな風に見られる。

名前   デニス
性別   男
年齢   24歳
総合能力 80
忠誠心  80
悪心   10
武術   60
知力   80
向上心  80

 あくまでも俺の知りたいのを100点満点で数字化したものでこれが俺の採用の基準になる。 

 悪心が20以上、忠誠心が50以下の人は不採用にすると今日面接した50人の不採用は5人で45人は採用とした。

 内訳はデニスを含めて俺の側近に3名を採用、事務官に2名、屋敷の使用人2名、残りの38人は兵士として採用した。

 給料は、最初は平均より高い大銀貨7枚7万ルピー、円にすると35万円くらいだ。

 この国の労働者の給料は平均5万ルピーなので7万ルピーと知った採用者は喜んでいる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【完結】婚約破棄し損ねてしまったので白い結婚を目指します

金峯蓮華
恋愛
5歳の時からの婚約者はひとりの女性の出現で変わってしまった。 その女性、ザラ嬢は学園中の男子生徒を虜にした。そして王太子、その側近も。 私の婚約者は王太子の側近。ザラに夢中だ。 卒園パーティーの時、王太子や側近は婚約者をザラを虐めた罪で断罪し婚約を破棄した。もちろん冤罪。 私はザラに階段から突き落とされ骨折してしまい卒園パーティーには出ていなかった。私だけ婚約破棄されなかった。  しがらみで仕方なく結婚するけど、白い結婚で時が来たら無効にし自由になるわ〜。その日が楽しみ……のはずだったのだけど。 作者独自の異世界のお話です。 緩い設定。ご都合主義です。

『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら

黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。 最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。 けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。 そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。 極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。 それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。 辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの? 戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる? ※曖昧設定。 ※別サイトにも掲載。

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

シンデレラ。~あなたは、どの道を選びますか?~

月白ヤトヒコ
児童書・童話
シンデレラをゲームブック風にしてみました。 選択肢に拠って、ノーマルエンド、ハッピーエンド、バッドエンドに別れます。 また、選択肢と場面、エンディングに拠ってシンデレラの性格も変わります。 短い話なので、さほど複雑な選択肢ではないと思います。 読んでやってもいいと思った方はどうぞ~。

シロツメグサの花輪

柊原 ゆず
恋愛
過保護な兄に振り回される妹の話です。

バズる間取り

福澤ゆき
BL
元人気子役&アイドルだった伊織は成長すると「劣化した」と叩かれて人気が急落し、世間から忘れられかけていた。ある日、「事故物件に住む」というネットTVの企画の仕事が舞い込んでくる。仕事を選べない伊織は事故物件に住むことになるが、配信中に本当に怪奇現象が起こったことにより、一気にバズり、再び注目を浴びることに。 自称視える隣人イケメン大学生狗飼に「これ以上住まない方がいい」と忠告を受けるが、伊織は芸能界生き残りをかけて、この企画を続行する。やがて怪異はエスカレートしていき…… すでに完結済みの話のため一気に投稿させていただきますmm

ようやく幸せになりました!〜泡沫の華々たち《異譚》

かぐら
恋愛
 ヴァット王国王妃、ステファニーは公務をこなすだけのお飾り王妃として日々を鬱々と過ごしていた。  表立って庇い、助けてくれるのは宰相だけ。絶対中立を是とする監視役の侯爵家、伯爵家が裏で出来る限り助けてくれるが、彼らではカバーしきれないほどに誹謗中傷が多く、文官からも仕事を押し付けられる始末。  当時王太子だったルークと恋仲だったカタリナを引き裂いた悪女として、社交界どころか民からも嫌われていた。  ―― 王命で、婚約間近だった隣国の伯爵令息シェルジオ・グランパスと仲を引き裂かれ、強制的に王太子妃とされてしまったのに。  しかも、初夜に「お前を愛することはない。白い結婚で通すが離婚はしない」とまで言われて。  ある日、エインスボルト王国に留学中に仲良くしていたエインスボルト王国第一王女ツェツィーリアからいつものように手紙が届いた。  …いつもと違うのは、その便箋の縁。デザインのように書かれていたのは絵ではなく、言語学でもマイナーな失われていた言語、ベガルド語だった。  何度かやりとりしてこの言語を解読できる者は検閲官にはいないことが分かった。そこで、ステファニーは意を決して同じように便箋のデザインに見せかけてベガルド語を書き込んだ。  ―― 助けて、と。  竜騎士であり竜人でもある隣国伯爵✕お飾り王妃の話。  王妃(ステファニー)視点、隣国王女(ツェツィーリア)視点、宰相(レガール卿)視点の三章立て+α予定。 ※ 9/16 に本編完結。9/19 番外編(シェルジオ)1本を追加 ※ 拙作「恥ずかしいに決まってるじゃないですか!」の二十四年後、「わたくしこの方と結婚しますわ!」の二十九年後の話ですが、読まなくても支障ないはず。 ※ 立場上、ヒーローよりも脇役(エインスボルト兄妹等)が活躍します。どうしてこうなった。 ※ 世界観は長編「彼女が幸せを掴むまで〜」と同じです。 ※ タイトルに「〜泡沫の華々たち《異譚》」を追加しました ※ 10/13に、カクヨムで泡沫の華々たちシリーズをひとつにまとめて投稿を開始しました。その中に加筆修正した当話も含まれています。

処理中です...