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14話 婚約者探し その1

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「婚約者……私のですか?」

「うむ、その通りだ。国王陛下が直々に選定するのだ、まず間違いは出てこないぞ」
「は、はい……」


 この父上の「間違いは出てこない」というのは、最高権力者が選んでいるのだから、相手側も迂闊なことはできないっていう意味合いが込められているんでしょうね。

 確かに父上に選んでもらえるは素直に嬉しい。ランドールを信頼していたとかもあったし、私の目はまだまだ節穴な所が多いと思うから。

 でも……一つだけ引っかかることがあったりする。

「……どうした? アリシア?」

「え、えと……兄上は、私に婚約者が新たにできることを、どう思っていらっしゃるかなって……」


 私は無意識に変な質問をしてしまっていた。兄上は少し考えるポーズを見せていた。どういう答えが返ってくるのか、私は少し緊張しながら待っていた。


「そうだな、以前にも私から新しい恋を見つけたらどうだ? と提言しておいてなんだが……アリシアが嫁にいくのは寂しくもある」

「ほ、本当に……!?」

「ああ、そうだな」

 私は思わずソファから身を乗り出していた。だって兄上が私に対して、寂しいって言ってくれたから。もちろんそれは、兄妹として妹が離れていくのが寂しいって意味合いなんだけど。別に変な期待をしたわけじゃないわ……うん。

「トランスもこう言っておる。どうじゃ、アリシア?」

「は、はい……そうですね……」


 開放的な国家を目指して作られているカスタム王国。国王陛下に謁見するのは簡単ではないけれど、比較的貴族達は自由に動けたりする。そんな国家だから、いくら娘とはいえ養女になっている私にこんな提案が可能なんでしょうね。どういう方々と出会うことになるのか不安ではあるけれど……。

「そ、それではお言葉に甘えてもよろしいでしょうか? た、ただ……」

「わかっておる。お前が断ったとしても誰も咎めはせんよ。婚約破棄があった直後でもあるのだからな。そう緊張せず、気楽に構えるのじゃ」

「あ……ありがとうございます、父上」

「うむ」


 父上は笑顔になり、再び私の頭を撫でてくれた。兄上もソファに座りながら私に対して笑ってくれている。家族の談笑はその後もしばらく続いたけれど、話題は専ら私に関することだった。

 ランドールと別れ制裁を課し、私は新しいフィールドに立つ。その新たなフィールドの第一段階で出て来たのは、父上が決めてくれるという婚約者の話。楽しみでもあるんだけど、兄上のことを想って、どうしても素直になり切れないところもあった。
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