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3話 制裁について その1
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トランス王子こと私の兄上は、ランドール・イクサバに何かしらの制裁を約束してくださった。イクサバ家といえば、カスタム王国でも名家に属する家系だけれど、そんなことが可能なのかしら?
私は貴族街にあるコムラータ家の屋敷に戻りながら考えを巡らせていた。私と王子……つまりは王家との間柄はほとんど知られてはいない。特に隠すことでもないのだろうけど、現国王であるヨハン・レイモンド様が側室が居ることを気にされているからだとか。
ヨハン国王は私の実父にあたる……でも私はコムラータ伯爵令嬢として育ち、コムラータ家の当主であるイグリオは私の義父にあたり、とかなりややこしい家系図になっていた。
元老院からの不当な追及を避ける意味合いでも、私と王子殿下との関係は伏せられていたと言えると思う。その事実はランドールも知らなかったわけで……。
兄上は発言からも制裁を考えていらっしゃると思われるけど……ランドールに対する制裁ということ? 一体どういったものになるのかしら……。
「アリシアや、少しは落ち着いたかね?」
「お父様……はい、なんとか落ち着きました」
義父にあたるイグリオ・コムラータが私に声を掛けてくれた。本当は落ち着いてはいないけれど、お父様に心配をかけるのは本意ではない。私は無理をしながらも笑顔を繕っていた。
「……ここでは無理をすることはない。例え血のつながりはなくとも、お前は私の大切な娘だよ」
「……お父様……!!」
あまりに温かい手が私の頬を伝って行った。お父様の大きな手が私を包み込んでいたのだ。私は兄上に癒された婚約破棄の辛さを再び思い返すに至っていた。
「お父様……私は、ランドール様に婚約破棄を……!」
「ああ、わかっているとも。なにも心配することはない、アリシアよ。後のことは任せておくんだ」
「……お父様……?」
お父様から聞こえて来たのは意外な一言と言えるかもしれない。その瞳には覚悟のような焔が灯っていたから……。兄上である王子殿下の他に、お父様もなにかを覚悟したように感じられた。
「お父様……あまり妙なことはなさらないでください……! 下手をすれば、伯爵の地位を失うことにもなりかねません……!」
「心配することはない、アリシアよ。本格的な制裁は王子殿下にお任せするさ。私は、少しばかりのお灸をすえるだけだ」
と、お父様は自信満々に言ってみせるけれど……その瞳は明らかに笑っていなかった。……これはもしかしたら、ランドール侯爵令息に同情する流れになるかもしれないわね。
私は貴族街にあるコムラータ家の屋敷に戻りながら考えを巡らせていた。私と王子……つまりは王家との間柄はほとんど知られてはいない。特に隠すことでもないのだろうけど、現国王であるヨハン・レイモンド様が側室が居ることを気にされているからだとか。
ヨハン国王は私の実父にあたる……でも私はコムラータ伯爵令嬢として育ち、コムラータ家の当主であるイグリオは私の義父にあたり、とかなりややこしい家系図になっていた。
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「アリシアや、少しは落ち着いたかね?」
「お父様……はい、なんとか落ち着きました」
義父にあたるイグリオ・コムラータが私に声を掛けてくれた。本当は落ち着いてはいないけれど、お父様に心配をかけるのは本意ではない。私は無理をしながらも笑顔を繕っていた。
「……ここでは無理をすることはない。例え血のつながりはなくとも、お前は私の大切な娘だよ」
「……お父様……!!」
あまりに温かい手が私の頬を伝って行った。お父様の大きな手が私を包み込んでいたのだ。私は兄上に癒された婚約破棄の辛さを再び思い返すに至っていた。
「お父様……私は、ランドール様に婚約破棄を……!」
「ああ、わかっているとも。なにも心配することはない、アリシアよ。後のことは任せておくんだ」
「……お父様……?」
お父様から聞こえて来たのは意外な一言と言えるかもしれない。その瞳には覚悟のような焔が灯っていたから……。兄上である王子殿下の他に、お父様もなにかを覚悟したように感じられた。
「お父様……あまり妙なことはなさらないでください……! 下手をすれば、伯爵の地位を失うことにもなりかねません……!」
「心配することはない、アリシアよ。本格的な制裁は王子殿下にお任せするさ。私は、少しばかりのお灸をすえるだけだ」
と、お父様は自信満々に言ってみせるけれど……その瞳は明らかに笑っていなかった。……これはもしかしたら、ランドール侯爵令息に同情する流れになるかもしれないわね。
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