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1話 カスタム王国での婚約破棄
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世の中には信じられないと思わせる出来事があると思う。
「……アリシア、済まないが婚約破棄をしてほしい」
「……えっ? どういうことですか……?」
私は信頼を寄せていたランドール侯爵令息に婚約破棄を言い渡されたのだ。場所は貴族街の隅……噴水公園の端であり、人通りはあまりない場所。
「お前は気立ても良く料理も上手い……しかし、遊び心がないというか……柔軟性に欠くところがあった」
婚約破棄を言ったランドール様は、その理由について淡々と述べていた。私の気持ちとしてはほとんど聞き流していたけれど。柔軟性に欠ける? どういうことかしら……? ランドール様の妻として相応しくなる為に料理や家事も一通り身に着けたというのに……この方は何を言っているの?
「一言で言うと、他に好きな女性ができた。家事などには疎いが、お前よりも柔軟性がありパーティーなどでも盛り上げてくれるサブラビッチ家のイリスだ」
「……イリス?」
イリス・サブラビッチ……? 私と同じく伯爵令嬢に該当する女性の名前だ。白いロングストレートが特徴の女性で非常に美しかったのを覚えている。パーティなどで何度か話したことはあるけれど、あまり良い印象はなかったけれど……。
嘘……ランドール様はイリスに心を奪われてしまったということ? そんな……。
「ここまでにしておこうか。正式な婚約破棄の手続きは後ほどにしておこう」
「そ、そんな……! 酷いです……ランドール様……!!」
私は自然と涙を零していた。彼に対しての怒りと深い悲しみはそんな涙なんかでは決して洗い流されないけれど。それでも泣くしかない。それでランドール様が心を入れ替えてくれると信じて。
「……私の心は既にイリスに傾いている。そのような態度を取っても無駄だ。私にとってお前はつまらない女だった……だが、お前の気立てならば拾ってくれる貴族はいるだろう」
「……!!」
信じられない言葉が私の内部に深く突き刺さって行く……この方、いいえ……この男は今なんと言ったのだろう?
こんな酷い言葉を普通に言える人だったなんて。私はこんな男に人生を捧げるつもりでいたというの……?
「それではなアリシア・コムラータ。婚約破棄は言い渡した、素直に受けるように」
そう言いながら、ランドールは悪びれる様子もなく私の前から姿を消して行った。私はあまりの出来事にその場に立ち尽くし、やがて膝から崩れて行った……こんなことってあり得るのかしら? 信じられない……。
侯爵令息であるランドールは私の家系、コムラータよりもはるかに格式が高い。その一点だけでも私は泣き寝入りをする以外にないと言えた。どうしよう……
「アリシアか? こんなところでどうしたんだ?」
そんな時、私の名前を呼ぶ優しい言葉が耳に届いた。私はすぐにその方向に目をやる。
「あ、兄上……!」
私は別の意味合いで大粒の涙を零し始めていた。そこに立っていたのは、腹違いではあるが紛れもない私の兄、現国王陛下の長男、トランス王子だったのだから。
「……アリシア、済まないが婚約破棄をしてほしい」
「……えっ? どういうことですか……?」
私は信頼を寄せていたランドール侯爵令息に婚約破棄を言い渡されたのだ。場所は貴族街の隅……噴水公園の端であり、人通りはあまりない場所。
「お前は気立ても良く料理も上手い……しかし、遊び心がないというか……柔軟性に欠くところがあった」
婚約破棄を言ったランドール様は、その理由について淡々と述べていた。私の気持ちとしてはほとんど聞き流していたけれど。柔軟性に欠ける? どういうことかしら……? ランドール様の妻として相応しくなる為に料理や家事も一通り身に着けたというのに……この方は何を言っているの?
「一言で言うと、他に好きな女性ができた。家事などには疎いが、お前よりも柔軟性がありパーティーなどでも盛り上げてくれるサブラビッチ家のイリスだ」
「……イリス?」
イリス・サブラビッチ……? 私と同じく伯爵令嬢に該当する女性の名前だ。白いロングストレートが特徴の女性で非常に美しかったのを覚えている。パーティなどで何度か話したことはあるけれど、あまり良い印象はなかったけれど……。
嘘……ランドール様はイリスに心を奪われてしまったということ? そんな……。
「ここまでにしておこうか。正式な婚約破棄の手続きは後ほどにしておこう」
「そ、そんな……! 酷いです……ランドール様……!!」
私は自然と涙を零していた。彼に対しての怒りと深い悲しみはそんな涙なんかでは決して洗い流されないけれど。それでも泣くしかない。それでランドール様が心を入れ替えてくれると信じて。
「……私の心は既にイリスに傾いている。そのような態度を取っても無駄だ。私にとってお前はつまらない女だった……だが、お前の気立てならば拾ってくれる貴族はいるだろう」
「……!!」
信じられない言葉が私の内部に深く突き刺さって行く……この方、いいえ……この男は今なんと言ったのだろう?
こんな酷い言葉を普通に言える人だったなんて。私はこんな男に人生を捧げるつもりでいたというの……?
「それではなアリシア・コムラータ。婚約破棄は言い渡した、素直に受けるように」
そう言いながら、ランドールは悪びれる様子もなく私の前から姿を消して行った。私はあまりの出来事にその場に立ち尽くし、やがて膝から崩れて行った……こんなことってあり得るのかしら? 信じられない……。
侯爵令息であるランドールは私の家系、コムラータよりもはるかに格式が高い。その一点だけでも私は泣き寝入りをする以外にないと言えた。どうしよう……
「アリシアか? こんなところでどうしたんだ?」
そんな時、私の名前を呼ぶ優しい言葉が耳に届いた。私はすぐにその方向に目をやる。
「あ、兄上……!」
私は別の意味合いで大粒の涙を零し始めていた。そこに立っていたのは、腹違いではあるが紛れもない私の兄、現国王陛下の長男、トランス王子だったのだから。
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