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5話 ディアスを騙す その1
しおりを挟む(ディアス侯爵令息視点)
私は時計台で待機していた。手紙で本日の10時に来るように促したが、果たしてミシェルは来てくれるだろうか。
「さて……ミシェルがどういう態度を表すのか、とても楽しみだな」
「私は逆上しないことを祈っていますわ」
「逆上したらその場で取り押さえて投獄してやるさ。まあまず、そんなことは起こらないだろうけどな」
今回はナターシャも一緒に連れて来た。あのパーティーの場には彼女も居たが、一緒ではなかったからな。ナターシャと一緒のところを見たら、ミシェルは果たしてどういう反応を示すのか……ふふふ、今から楽しみになって来たぞ。
「投獄は流石にやり過ぎたと思いますけど……ミシェル嬢が悔しさで歯ぎしりするところは見てみたいですわ」
「ナターシャもなかなか性格が悪いな」
「あら、それは誉め言葉でございますよね?」
「もちろん褒め言葉さ……ふふふ」
「うふふふふふ」
楽しみだな……ミシェルがどんな顔をするのか、非常に楽しみだ。もしもの為に、護衛もいつもよりも厳重にしている。まず、物理的な問題が起こることはないだろう。まあ、物理的な問題が起こった時のミシェルの顔も見てみたいがな……ふふふ。
「ナターシャ、私は性格が悪いかな?」
「とても悪いと存じますわ。でも、それがディアス様の魅力にも繋がっていると思います。自らのストレス発散の為に、わざわざ卒業パーティーを選んで婚約破棄を言い渡したのでございましょう?」
「うむ、その通りだ。あの時のミシェルの顔は今でも忘れられんからな! はははははっ」
「うふふふ、私も忘れられませんわ。直接、言葉を交わしたわけではありませんが。あの時の悲しんだ表情はとても笑えましたわ。他の貴族令嬢も何人か笑っているくらいでしたから」
「はははは、皆、性格が悪いのではないな。私のことを悪いと言えない連中は多そうだな」
「そうかもしれませんわね」
人間など所詮はその程度の集まりだ。対岸の火事は蜜の味と言うしな……ん? ちょっと違うか?
と、そんな時、一台の馬車が現れた。このタイミングで時計台に現れる馬車となれば、1つしかないだろう。
「……」
「やあ、ミシェル……元気だったか?」
「……」
ミシェルは無言で馬車から降りて来た。複数の付き人の姿があるがその内の一人は顔を隠している。まあ、どうでも良いが。しかし、ミシェルの奴……やはり怒っているのか。私の挨拶に対して反応をしないとは良い度胸だな。
そんな態度をしたことを後悔させてやろうじゃないか。
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