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3話 入れ替わり その2
しおりを挟む(ディアス侯爵令息視点)
「ディアス様、私と一緒になって本当に良かったんですの? 彼女……ミシェルを捨てても」
「私には君しか見えていないよ、ナターシャ」
彼女の名前はナターシャ・フォート。年齢はミシェルと同じ18歳だ。彼女も私やミシェルと同じ学院の学生であった。
「ありがとうございます。それにしても驚きましたわ。別れを告げると聞いてはいましたが、あの卒業パーティーの日に行うなんて……しかも公衆の面前で」
「はははは、驚いてくれたかな? あの行動は君を愛しているという証でもあったんだ。過去を捨てる為に、完全にミシェルを振ったからね」
「私の為だったのですね?」
「そういうことだ」
「まあ、嬉しいですわ!」
私はナターシャとキスを交わした。彼女はその美しい姿以外にも侯爵令嬢という肩書きを持っている。伯爵令嬢でしかないミシェルと一緒になるよりも、明らかに利益になるのだ。
「それにしても……ミシェルの別れを告げた時の呆けた表情は笑ったな。あそこまでの悲壮感を出すとは思ってもみなかったぞ」
「確かに面白かったですわね。私、会場で思わず吹き出しそうになりましたわ」
「ふふふ、確かにな。まあ、ミシェルとは今後も違うパーティー会場で会うこともあるだろう。その時は思い切りからかってやろうじゃないか」
「あら、そんなことをして大丈夫なんですの?」
「おいおい、私を誰だと思っているんだ? ディアス・カンタール侯爵令息だぞ? 伯爵家など恐れる相手ではないよ」
少しだけナターシャが怪訝な表情になっていた。
「どうかしたのか?」
「ディアス様……まさか、ミシェル嬢を虐めるつもりですか?」
「ははは、それも良いかもしれないな。しばらく、表に出て来れない程に罵倒を浴びせても良いかもしれん」
「まあ……!」
最近は父上の当主教育も厳しくなっている。私もストレスが溜まっているのだ。そのストレス発散の場として、ミシェルを有効活用するのは、面白いかもしれないな。貴族街に呼び出して虐めたり、パーティー会場で虐めたり……やりようはいくらでもありそうだ。
ふふふ……なかなか楽しそうだな。
「大丈夫なんですの? あまり虐めすぎると逆上される可能性もありそうですが……」
「その時の為の護衛だろう? いざと言う時に私の身を守れない護衛など、処刑されても文句は言えないよ」
私は部屋に居る護衛に聞こえるように言った。忠告のようなものだ。ミシェルが逆上した時に、ちゃんと私を守れと暗に言っているのだ。
「安全なら良いですわ。私も参加してもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ、ナターシャ。一緒にミシェル虐めを楽しもうじゃないか。良いストレス発散になるだろう」
私もナターシャも将来は忙しくなる身だ。今の内にストレスを発散しておかないと、後で困るかもしれんからな。ミシェル……済まないが犠牲になってもらうぞ。
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