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2話 入れ替わり その1
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「あの、姉さま……本当に大丈夫なんでしょうか?」
「別にそんなに気にすることじゃないでしょ? 特に理不尽に婚約破棄をした相手に気を遣う必要なんてないわ」
「そ、それはそうかもしれませんが……」
シリア姉さまは平然としていた。入れ替わりに全く罪悪感を感じていないようだ。まあ、確かに相手はディアス様だし、罪悪感を感じる必要はないのかもしれないけれど。
「でも、ディアス様はカンタール家の次期当主だし……そんな相手を怒らせたら、大変なんじゃ……」
「ああ、それに関しては大丈夫よ。私だって上手くやるわ。それに……」
「それに?」
「ううん、別に。ミシェルは私の婚約相手のこと、まだ知らなかったのよね?」
「あ、はい……まだ詳しくは聞いていませんけれど……」
シリア姉さまは18歳だけれど、私の学院には通っていなかった。確か、最近になって婚約者が決まったと聞いていたけれど。
「詳しい話はお父様に聞いておいて。まあ、兄さまでも良いけれど」
「わ、分かりました」
この場で教えてくれるわけじゃないようだ。
「それじゃあね、ミシェル。私は色々と準備に忙しいから、これで失礼するわ」
「は、はい……畏まりました」
---------------------------
私はその後、お父様の私室を訪れた。姉さまの婚約者の話を聞くために。
「お父様、聞きたいことがあるんですが……」
「あ、ミシェルか。落ち着いたかな?」
「はい、少し……」
「そうか、それなら何よりだ。それで? 聞きたいことと言うのは何だ?」
私はお父様に促され近くのソファに座った。目の前にはロートレック伯爵家の当主、ジーク・ロートレックが座っている。
「はい、シリア姉さまのことなんですが」
「シリアのこと? 一体なんだ?」
「シリア姉さまが婚約した話は聞いています。その……お相手は誰なんですか?」
「ああ、そう言えばミシェルにはまだ伝わっていなかったか。実はウィンド・オーギュスタン第三王子殿下なのだよ」
「えっ……?」
ウィンド・オーギュスタン王子殿下って言えば……文字通り、オーギュスタン王国の第三王子殿下だ。将来的には国王陛下になれるかもしれない人物の一人。その婚約者がシリア姉さまだなんて……流石は姉さまだわ。
「ははは、驚いたかな?」
「ええ、とても驚きました……でも、シリア姉さま程の人なら分かる気も致します」
「そうだな、確かにその点は私も同感だ。しかし、凄いことだよ……伯爵令嬢の身で王子殿下と婚約したのだからな」
「そうですね、確かに」
シリア姉さまの婚約者はウィンド王子殿下。この事実はとても大きいだろう。姉さまが双子の入れ替わりをしようと思った理由がよく分かる気がする。なぜなら、強力な後ろ盾が付いているのだから。
「別にそんなに気にすることじゃないでしょ? 特に理不尽に婚約破棄をした相手に気を遣う必要なんてないわ」
「そ、それはそうかもしれませんが……」
シリア姉さまは平然としていた。入れ替わりに全く罪悪感を感じていないようだ。まあ、確かに相手はディアス様だし、罪悪感を感じる必要はないのかもしれないけれど。
「でも、ディアス様はカンタール家の次期当主だし……そんな相手を怒らせたら、大変なんじゃ……」
「ああ、それに関しては大丈夫よ。私だって上手くやるわ。それに……」
「それに?」
「ううん、別に。ミシェルは私の婚約相手のこと、まだ知らなかったのよね?」
「あ、はい……まだ詳しくは聞いていませんけれど……」
シリア姉さまは18歳だけれど、私の学院には通っていなかった。確か、最近になって婚約者が決まったと聞いていたけれど。
「詳しい話はお父様に聞いておいて。まあ、兄さまでも良いけれど」
「わ、分かりました」
この場で教えてくれるわけじゃないようだ。
「それじゃあね、ミシェル。私は色々と準備に忙しいから、これで失礼するわ」
「は、はい……畏まりました」
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私はその後、お父様の私室を訪れた。姉さまの婚約者の話を聞くために。
「お父様、聞きたいことがあるんですが……」
「あ、ミシェルか。落ち着いたかな?」
「はい、少し……」
「そうか、それなら何よりだ。それで? 聞きたいことと言うのは何だ?」
私はお父様に促され近くのソファに座った。目の前にはロートレック伯爵家の当主、ジーク・ロートレックが座っている。
「はい、シリア姉さまのことなんですが」
「シリアのこと? 一体なんだ?」
「シリア姉さまが婚約した話は聞いています。その……お相手は誰なんですか?」
「ああ、そう言えばミシェルにはまだ伝わっていなかったか。実はウィンド・オーギュスタン第三王子殿下なのだよ」
「えっ……?」
ウィンド・オーギュスタン王子殿下って言えば……文字通り、オーギュスタン王国の第三王子殿下だ。将来的には国王陛下になれるかもしれない人物の一人。その婚約者がシリア姉さまだなんて……流石は姉さまだわ。
「ははは、驚いたかな?」
「ええ、とても驚きました……でも、シリア姉さま程の人なら分かる気も致します」
「そうだな、確かにその点は私も同感だ。しかし、凄いことだよ……伯爵令嬢の身で王子殿下と婚約したのだからな」
「そうですね、確かに」
シリア姉さまの婚約者はウィンド王子殿下。この事実はとても大きいだろう。姉さまが双子の入れ替わりをしようと思った理由がよく分かる気がする。なぜなら、強力な後ろ盾が付いているのだから。
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