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2話
しおりを挟むヨシュアの身勝手な婚約破棄……しかも学園の昼食スペースで行われたそれは私に思いの外、ダメージを負わせていた。自然と涙が零れてしまったのだ。
ヨシュアのことはまだそれほど知っているわけではないけれど、それでも色々と問題のある人だと思うようにはなっていた。貴族としての格式が高すぎるというか……変にプライドが高いので平民を見下す言葉も多かったように思える。
平民よりも自分が優れていると断言するからには、自らがそれ相応の能力を得ていることが前提条件になる気がするのだけれど……どうなんだろうか。
「大丈夫なの? エスメラルダ……あんな一方的な婚約破棄をされて……」
「大丈夫ではないわ、シャリー。でも、仕方ないのよ……ヨシュアが決めたことなんだから。私は伯爵令嬢でしかないから、文句を言うことも難しいと思うわ……」
ヨシュアは人間的にはともかく、その地位は侯爵令息となっている。彼が言った言葉を否定するのは難しかった。
ちなみにシャリーというのは私の女友達の一人だ。私のことを気に掛けてくれているようで、非常にありがたい。
「ヨシュアの決定した婚約破棄については、どうすることもできないわ。そのまま進めて行くしかない……」
「そんな……そんな無慈悲なことって……」
「慰謝料などは請求できるだろうけれど、果たしてヨシュアが払うかどうかね……まあ、実際に払うかどうかは彼の父上が決めるんでしょうけれど」
私もヨシュアもまだ正式な地位を持っているわけではない。まだまだ子供なのだから、その責任は親が取るのだった。
「なにより酷いのが学園内で婚約破棄をしたことよ! これだとエスメラルダが晒し者になるじゃない!」
「そこなのよね……本当に困るわ……」
「おっ、婚約破棄された女が来たぜ」
ほら、いきなり挨拶がてら現れたわ……クラスの男子が。私を見下したくてたまらないようね。
「なによいきなり……」
「そんな顔すんなって、エスメラルダ! 悲しいのは分かってるんだぜ? ヨシュアに捨てられて昨日は眠れなかったか?」
「……」
ハッキリ言って相手にもしたくないけれど、言葉を的を射ていたので言い返せなかった。大体、8時間くらいしか眠れてない。
「お前がどうしても望むなら、俺が慰めてやってもいいぜ? ほらほら、ちょうど慰めやすいお前の机がそこに転がってるだろう?」
「いやらしい……何を言って……!?」
この男の名前はアルドというのだけれど、前から好きな相手ではなかった。これみよがしに突っかかってくるのは最低だ。いえ、それよりも……どうして私の机が教室の外に置いてあるの?
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