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40話 拒否
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「せっかくのお話はありがたいのですが、こうして謝罪していただけるだけで十分です。慰謝料の件はお断りいたします」
「えっ、エレナ様……? でも……」
「いいんです。なんだか話もややこしくなっておりますし、これ以上、あなた方と関わりになることも避けたいのです。アミーナ様……貴方は私から婚約者を奪ったということを忘れずに生きて行ってください」
「え、エレナ様……! も、申し訳ありませんでした……」
「いえ、それ以上の謝罪も結構です。まず、アミーナ様は本当にリグリット様から養育費を取れるのかどうかを心配した方が良いと思います」
この場所にアミーナ様が単独で来ること自体が既におかしい。私の態度は間違っていないはず……明らかにおかしければ、ヨハン様も口を出すだろうしね。先ほどから、彼は黙ったままだった。その態度が安心の材料になっている。
私はアミーナ様にも助言をしておいた……リグリット様から養育費を本当に取れるのかどうかという点についてだ。今は大丈夫でも、エメラダ夫人辺りが上手く断ってくるかもしれないしね。彼女は確実にそっちに注力した方が良いと思う。
------------------------
「そ、それでは……失礼いたします……エレナ様」
「はい、お気をつけてお帰り下さいませ」
「気を付けてな、アミーナ嬢」
「あ、ありがとうございます。王子殿下……それでは」
私はその後、アミーナ様と簡単に挨拶を交わしてすぐに帰ってもらった。そんな様子を見て、ヨハン様はなんだか驚いている。
「随分、早く帰したな……意外だったよ」
「そうでしょうか? アミーナ様から慰謝料を貰うのは、少し違う気がしてしまったので……それに、個人的にはあまりあの方から貰いたいとも思わないですし」
「ふふ、その態度で良いと思うよ。つまりは謝罪に来られても許せるわけではない、ということだな?」
「左様でございますね、今回の騒動の発端はアミーナ様ですから」
「はははっ、確かにそうかもしれないな」
「ええっ」
リグリット様が元凶なのは言うまでもないけれど、彼女も同じくらい騒動の元凶になっている。リグリット様からアミーナ様のことを最初に紹介された時は、こんな大きな事態になるなんて想像すら出来なかった。
今回、アミーナ様に対して明確な拒否を行ったわけだけれど、その謝罪だけはありがたく頂戴しておこうと思う。その気持ちだけで今は十分だ。今の段階では、アミーナ様を完全に許せる自信なんてなかったのだから……。
「えっ、エレナ様……? でも……」
「いいんです。なんだか話もややこしくなっておりますし、これ以上、あなた方と関わりになることも避けたいのです。アミーナ様……貴方は私から婚約者を奪ったということを忘れずに生きて行ってください」
「え、エレナ様……! も、申し訳ありませんでした……」
「いえ、それ以上の謝罪も結構です。まず、アミーナ様は本当にリグリット様から養育費を取れるのかどうかを心配した方が良いと思います」
この場所にアミーナ様が単独で来ること自体が既におかしい。私の態度は間違っていないはず……明らかにおかしければ、ヨハン様も口を出すだろうしね。先ほどから、彼は黙ったままだった。その態度が安心の材料になっている。
私はアミーナ様にも助言をしておいた……リグリット様から養育費を本当に取れるのかどうかという点についてだ。今は大丈夫でも、エメラダ夫人辺りが上手く断ってくるかもしれないしね。彼女は確実にそっちに注力した方が良いと思う。
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「そ、それでは……失礼いたします……エレナ様」
「はい、お気をつけてお帰り下さいませ」
「気を付けてな、アミーナ嬢」
「あ、ありがとうございます。王子殿下……それでは」
私はその後、アミーナ様と簡単に挨拶を交わしてすぐに帰ってもらった。そんな様子を見て、ヨハン様はなんだか驚いている。
「随分、早く帰したな……意外だったよ」
「そうでしょうか? アミーナ様から慰謝料を貰うのは、少し違う気がしてしまったので……それに、個人的にはあまりあの方から貰いたいとも思わないですし」
「ふふ、その態度で良いと思うよ。つまりは謝罪に来られても許せるわけではない、ということだな?」
「左様でございますね、今回の騒動の発端はアミーナ様ですから」
「はははっ、確かにそうかもしれないな」
「ええっ」
リグリット様が元凶なのは言うまでもないけれど、彼女も同じくらい騒動の元凶になっている。リグリット様からアミーナ様のことを最初に紹介された時は、こんな大きな事態になるなんて想像すら出来なかった。
今回、アミーナ様に対して明確な拒否を行ったわけだけれど、その謝罪だけはありがたく頂戴しておこうと思う。その気持ちだけで今は十分だ。今の段階では、アミーナ様を完全に許せる自信なんてなかったのだから……。
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