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38話 アミーナの訪問 その1
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「しかし、エレナ。リグリットが逆上した時は身の危険を感じたのではないか?」
「そうですね……護衛が居たとはいえ、大怪我をさせられるのではないかと思いました」
「本当に危なかったな。まあ、奴は現在は地下牢に幽閉されている。二度とエレナに近づけないように手配するさ」
「ありがとうございます、ヨハン様」
私とヨハン様はランカスター家の屋敷で静かな時を送っていた。リグリット様は、この屋敷で急に暴走した責任を問われ、遠方に飛ばされる前に半年間の懲役を科せられることになった。噂では相当な肉体労働が待っているらしい。そこそこの凶悪犯と一緒に仕事をさせられるとか……リグリット様みたいな高位貴族は格好の的にされるだろうという見通しがある。
それを含めての今回の罰、ということでしょうね。まあ、同情する気にはなれないけれど。
「エレナ……」
「ヨハン様? きゃあ!」
ヨハン様はいきなり立ち上がると、私を勢いよく抱き寄せる。あまりに急なことだったので、思わず声が出てしまった。
「この数カ月も経たない間に、本当に色々なことが起きた」
「そうですね……ヨハン様」
「エレナは一番の当事者であるにも関わらず、本当に気丈に振舞っていたと思うよ」
「いえ、そんなことはないです。きっと、私だけでは事の大きさに潰されていたと思いますし。これもヨハン様達のおかげです」
広義の意味で考えれば、国王陛下にもお世話になった気がする。私達の進むべき道を示してくれたというかそんな感じだ。バークス公爵家に対して、必要以上の攻撃は行わないようにと暗に示してくれたのも大きい。あれで掛けるべきブレーキのタイミングが分かったような気がするしね。
「落ち着いたら、旅行にでも行かないか? 今のエレナに必要なことは静養、というよりは色々なものを見て楽しむことにあると思うんだ。心を落ち着かせる意味合いでも良いと思うがどうだろうか?」
「は、はい……ヨハン様と一緒でしたら、どこへでも行かせていただきます!」
「よし、決定だな。慰謝料として手に入れたクローヌ川にも立ち寄ってみるか」
「そうですね、そうしましょうか」
クローヌ川にわざわざ向かうというのは、バークス公爵家にとってはなかなかに嫌味だ。ただ、そのくらいは許されるだろう。本当に彼らには引っ掻き回されたのだから。
「お楽しみのところ、失礼いたします。エレナ様、お客様がお見えになっておりますが、如何いたしましょうか?」
「えっ? お客様……?」
そう言いながら私の部屋に入って来るメイドの一人。事前にお客様が来るなんて聞いていないけれど。
「誰が来たのかしら?」
「はい、アミーナ・ファルス伯爵令嬢でございます。お通ししてもよろしいですか?」
アミーナ様が来たの……? ヨハン様も意外な人物の訪問に驚いている様子だったが、私はそれ以上に驚いていた……予想外過ぎて。
「そうですね……護衛が居たとはいえ、大怪我をさせられるのではないかと思いました」
「本当に危なかったな。まあ、奴は現在は地下牢に幽閉されている。二度とエレナに近づけないように手配するさ」
「ありがとうございます、ヨハン様」
私とヨハン様はランカスター家の屋敷で静かな時を送っていた。リグリット様は、この屋敷で急に暴走した責任を問われ、遠方に飛ばされる前に半年間の懲役を科せられることになった。噂では相当な肉体労働が待っているらしい。そこそこの凶悪犯と一緒に仕事をさせられるとか……リグリット様みたいな高位貴族は格好の的にされるだろうという見通しがある。
それを含めての今回の罰、ということでしょうね。まあ、同情する気にはなれないけれど。
「エレナ……」
「ヨハン様? きゃあ!」
ヨハン様はいきなり立ち上がると、私を勢いよく抱き寄せる。あまりに急なことだったので、思わず声が出てしまった。
「この数カ月も経たない間に、本当に色々なことが起きた」
「そうですね……ヨハン様」
「エレナは一番の当事者であるにも関わらず、本当に気丈に振舞っていたと思うよ」
「いえ、そんなことはないです。きっと、私だけでは事の大きさに潰されていたと思いますし。これもヨハン様達のおかげです」
広義の意味で考えれば、国王陛下にもお世話になった気がする。私達の進むべき道を示してくれたというかそんな感じだ。バークス公爵家に対して、必要以上の攻撃は行わないようにと暗に示してくれたのも大きい。あれで掛けるべきブレーキのタイミングが分かったような気がするしね。
「落ち着いたら、旅行にでも行かないか? 今のエレナに必要なことは静養、というよりは色々なものを見て楽しむことにあると思うんだ。心を落ち着かせる意味合いでも良いと思うがどうだろうか?」
「は、はい……ヨハン様と一緒でしたら、どこへでも行かせていただきます!」
「よし、決定だな。慰謝料として手に入れたクローヌ川にも立ち寄ってみるか」
「そうですね、そうしましょうか」
クローヌ川にわざわざ向かうというのは、バークス公爵家にとってはなかなかに嫌味だ。ただ、そのくらいは許されるだろう。本当に彼らには引っ掻き回されたのだから。
「お楽しみのところ、失礼いたします。エレナ様、お客様がお見えになっておりますが、如何いたしましょうか?」
「えっ? お客様……?」
そう言いながら私の部屋に入って来るメイドの一人。事前にお客様が来るなんて聞いていないけれど。
「誰が来たのかしら?」
「はい、アミーナ・ファルス伯爵令嬢でございます。お通ししてもよろしいですか?」
アミーナ様が来たの……? ヨハン様も意外な人物の訪問に驚いている様子だったが、私はそれ以上に驚いていた……予想外過ぎて。
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