37 / 43
37話 リグリットの叫び その3
しおりを挟む
(リグリット視点)
「なぜだ……? なぜ私はこんなところに居る……?」
「お前は遠隔地の領主になる前に、懲役が科せられることになったのだ。我が息子よ……まさか、ここまで落ちぶれてしまうとはな……」
私は現在、王国の地下牢に幽閉されていた。小汚いトイレと、何か月も替えていないようなシーツを乗せたベッドしかない空間だ。私が居るべきところではないはず……この場所は本来であれば、罪人が入るべきところだろう?
鉄格子の前に立っているのは、父上と母上だ。弟のマグリットの姿はない。
「リグリット……あなたは屋敷で私達や、ランカスター家の方々に危害を加えようとしたのよ? 半年間の懲役刑が科せられるのは当然でしょう? むしろ、その程度で済ませたのは私やガイアの力でもあるの。ここでの懲役の試練はあなたにとって、必ずプラスになると思うわ。頑張ってね」
「そ、そんな……! 母上……!?」
私は朝起きると、理由も告げられずにこの場所へと誘われたのだ……そして、閉じ込められてしまった。議会で即興で決まった事柄だとでも言うのか……?
「お、お待ちください母上……! 私は遠隔地の領主になるのでしょう……!?」
「そうね……ただしその前に、半年間の懲役刑が科せられたのよ。しっかりと受け入れなさい」
「ま、まさかそんなことが……!?」
違う、この場所はおかしいのだ……地下牢は独房にはなっておらず、もう一人は言っている者が居る。周辺の牢獄に入っている者達も私を見て舌なめずりをしているのだ。そいつらは一斉に不気味な視線を向けている。
「とにかく頑張ることだ……それではな」
「しっかりと懲役を務めなさい。そうすればもしかしたら、遠隔地の領主になる時には追加の資金が渡されるかもしれないから」
「ま、待ってください母上、父上……!」
二人はそう言い残して私の前から姿を消した。その状況を見計らったかのように、地下牢に居る罪人たちはしゃべり始めた。
「おいおい、貴族のお坊ちゃまが何をしでかしてこんな糞の掃き溜めに来ることになったんだ?」
「ひゃはははははは! こりゃあ、躾けのしがいがありそうだな? ママのおっぱいも卒業してないんじゃねぇのか!」
「まずは先輩への口の利き方から、しっかりと教育してやるぜ……? いままで苦もなく贅沢三昧だった貴族様よ~~~」
「な、何を言っているんだ……? 私はリグリット・バークス公爵令息だぞ……? 私に妙なことをしてただで済むわけが……!」
「そんなもん、この地下牢の世界では何の役にも立たねぇよ! ひゃははははははは!!」
同じ牢獄に入っている人間かも不明な男が近付いて来た。私の人生はもしかしたらここで終了してしまうかもしれない……。
「なぜだ……? なぜ私はこんなところに居る……?」
「お前は遠隔地の領主になる前に、懲役が科せられることになったのだ。我が息子よ……まさか、ここまで落ちぶれてしまうとはな……」
私は現在、王国の地下牢に幽閉されていた。小汚いトイレと、何か月も替えていないようなシーツを乗せたベッドしかない空間だ。私が居るべきところではないはず……この場所は本来であれば、罪人が入るべきところだろう?
鉄格子の前に立っているのは、父上と母上だ。弟のマグリットの姿はない。
「リグリット……あなたは屋敷で私達や、ランカスター家の方々に危害を加えようとしたのよ? 半年間の懲役刑が科せられるのは当然でしょう? むしろ、その程度で済ませたのは私やガイアの力でもあるの。ここでの懲役の試練はあなたにとって、必ずプラスになると思うわ。頑張ってね」
「そ、そんな……! 母上……!?」
私は朝起きると、理由も告げられずにこの場所へと誘われたのだ……そして、閉じ込められてしまった。議会で即興で決まった事柄だとでも言うのか……?
「お、お待ちください母上……! 私は遠隔地の領主になるのでしょう……!?」
「そうね……ただしその前に、半年間の懲役刑が科せられたのよ。しっかりと受け入れなさい」
「ま、まさかそんなことが……!?」
違う、この場所はおかしいのだ……地下牢は独房にはなっておらず、もう一人は言っている者が居る。周辺の牢獄に入っている者達も私を見て舌なめずりをしているのだ。そいつらは一斉に不気味な視線を向けている。
「とにかく頑張ることだ……それではな」
「しっかりと懲役を務めなさい。そうすればもしかしたら、遠隔地の領主になる時には追加の資金が渡されるかもしれないから」
「ま、待ってください母上、父上……!」
二人はそう言い残して私の前から姿を消した。その状況を見計らったかのように、地下牢に居る罪人たちはしゃべり始めた。
「おいおい、貴族のお坊ちゃまが何をしでかしてこんな糞の掃き溜めに来ることになったんだ?」
「ひゃはははははは! こりゃあ、躾けのしがいがありそうだな? ママのおっぱいも卒業してないんじゃねぇのか!」
「まずは先輩への口の利き方から、しっかりと教育してやるぜ……? いままで苦もなく贅沢三昧だった貴族様よ~~~」
「な、何を言っているんだ……? 私はリグリット・バークス公爵令息だぞ……? 私に妙なことをしてただで済むわけが……!」
「そんなもん、この地下牢の世界では何の役にも立たねぇよ! ひゃははははははは!!」
同じ牢獄に入っている人間かも不明な男が近付いて来た。私の人生はもしかしたらここで終了してしまうかもしれない……。
39
お気に入りに追加
3,914
あなたにおすすめの小説
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。
ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」
人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。
「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」
「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」
一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。
「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」
「……そんな、ひどい」
しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。
「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」
「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」
パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。
昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。
「……そんなにぼくのこと、好きなの?」
予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。
「好き! 大好き!」
リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。
「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」
パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、
「……少し、考える時間がほしい」
だった。
婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。
ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」
はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。
「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」
──ああ。そんな風に思われていたのか。
エリカは胸中で、そっと呟いた。
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる