上 下
34 / 43

34話 終着点が見えてきた?

しおりを挟む
「よ、ヨハン様……それは本当なんですか?」

「ああ、私も又聞きでしかないが、確かな情報筋からの連絡だ」

 私はヨハン様から聞いた内容に驚かされていた。私の家系であるランカスター家がクローヌ川……つまりバークス公爵家の土地として河川付近を選んだことは周知の事実になっていたけれど。

 ヨハン様から聞かされたことは、私の想像を絶するものであった。エメラダ夫人がその土地の引き渡しを拒んだとかであれば、まだ分かるのだけれど……彼から聞かされたのは、まさかのアミーナ様のことだったからだ。


「アミーナ・ファルス伯爵令嬢の本気……まあ、復讐と言った方が正しいか」

「で、ですよね……リグリット様に直接、子供を孕んだので養育費を請求するなんていうのは……」


 アミーナ様が本当に妊娠しているかは、現在のところでは不明だけれど、真偽なんてすぐに分かることだしその部分で嘘だとは思えなかった。ただ、自分が孕んだという理由でリグリット様に養育費を請求する度胸は……まあ、流石と言えるかもしれない。素直に喜べることではないけれど……。


「まあ、エレナの考えは何となく分かるよ。アミーナ嬢が養育費をリグリットに請求するのが納得いかないんだろう?」

「は、はい……左様でございます……」


 ヨハン様に嘘を言っても仕方がないので、私は正直に答える。リグリット様はもちろんだけれど、私からするとアミーナ様も加害者になるわけで……その加害者が、私に謝罪することもなく、自分は被害者だとばかりにリグリット様に養育費の請求をしているのが納得できなかった。

 アミーナ様が妊娠したのは自業自得だとしか、私からすれば思えないし……。


「まあ、バークス公爵家は養育費と君からの慰謝料請求である、クローヌ川の引き渡しでとても大変な状況なようだ」

「なるほど……まあ、同情する気にはなれませんが」

「まあ、そうだな。リグリット殿もエメラダ夫人から完全に見放されたらしいが、そちらについても私達が気にすることではないと思う」

「そうですね、私達はバークス公爵家がちゃんと慰謝料を支払うのかを注視していれば良いわけですからね」

「そういうことだな。まあ、流石にクローヌ川を含んだ土地の明け渡しを拒否するとは思えないが。リグリット・バークスの問題も抱えている中で、今更、慰謝料の支払いを拒んだりしたら、いくら公爵家とはいえ滅んでしまうからな。後の内部でのイザコザについては、私達が携わらないようにすれば、問題は生じないだろう」

「左様でございますね……少し、終着点が見えてきたようで安心しました」

「そうだな」


 終着点、と言ってしまうと語弊があるかもしれないけれど……ようやく一区切り出来る目安が見えて来たと思う。

 この時の私は安心感に酔いしれていた。

 この後に起きる、大きな事件のことを予想できずに……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない

千紫万紅
恋愛
王位継承争いによって誕生した後ろ楯のない無力な少年王の後ろ楯となる為だけに。 公爵令嬢ユーフェミアは僅か10歳にして大国の王妃となった。 そして10年の時が過ぎ、無力な少年王は賢王と呼ばれるまでに成長した。 その為後ろ楯としての価値しかない用済みの王妃は廃妃だと性悪宰相はいう。 「城から追放された挙げ句、幽閉されて監視されて一生を惨めに終えるくらいならば、こんな国……逃げだしてやる!」 と、ユーフェミアは誰にも告げず城から逃げ出した。 だが、城から逃げ出したユーフェミアは真実を知らない。

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

【完結】可愛くない、私ですので。

たまこ
恋愛
 華やかな装いを苦手としているアニエスは、周りから陰口を叩かれようと着飾ることはしなかった。地味なアニエスを疎ましく思っている様子の婚約者リシャールの隣には、アニエスではない別の女性が立つようになっていて……。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

藍生蕗
恋愛
 子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。  しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。  いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。 ※ 本編は4万字くらいのお話です ※ 他のサイトでも公開してます ※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。 ※ ご都合主義 ※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!) ※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。  →同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

処理中です...