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30話 陛下との会話 その3
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「ヨハン、バークス公爵家への罰について、異論はあるのか?」
「いえ……異論という程のことは……」
「そうか……ではヨハンよ、特に異論がないのであれば、これ以上のバークス公爵家への刺激は出来る限り控えて……」
「申し訳ございません、陛下。お話をさせていただいても、よろしいでしょうか?」
私はついつい、オランゼ国王陛下の言葉を遮るように発言してしまった。本来であれば許されることではないけれど、オランゼ国王陛下は何も言わない。
「どうした、エレナ嬢? 話してみよ」
「ありがとうございます、陛下。今回の件についての、ファルス伯爵家のことなのですが……」
「ファルス伯爵家だと? バークス公爵家ではなく、か?」
「はい、ファルス伯爵家のことでございます、陛下」
私から意外な言葉が出て来たと思ったのか、国王陛下は目を丸くしていた。バークス公爵家ならともかく、ファルス伯爵家とは……といった面持ちなのかもしれない。
「ふむ、どうしたというのだ?」
「アミーナ嬢についてですが……バークス家のエメラダ夫人は、全ての責任をアミーナ嬢に押し付けている側面があります」
「ぬ、それは……」
「彼女はリグリット様の浮気相手ではありますので、その点は批判されても仕方ないのかもしれません。しかし、本来の原因という観点から見れば、リグリット様にあるのではないでしょうか?」
ここで初めて、オランゼ国王陛下は黙った。今まで流れるように返答をしてきたにも関わらず、だ。私の意見に一理あると感じたのかもしれない。
「父上、確かにエレナ嬢の言う通りかと思います。しかも、私達がガイア・バークス公爵と一緒に、リグリットを糾弾した時、彼は全ての責任をアミーナ嬢に押し付けていたのですから。それにまんまと引っかかったのが、ガイア殿です」
「全ての責任というのは、アミーナ嬢を女狐呼ばわりして、自分と付き合わなければ死んでやる云々を言ったとされる、あれか」
「はい、その通りです……」
「ふむ……」
オランゼ国王陛下は再び黙り始めた。自らの考えを整理しているようだ。軽く唸りながら悩んでいるように見える。
「しかし、リグリットは遠方へ飛ばされるのは確実だろう。エメラダ夫人の性格から言って、リグリットをそのまま当主に据えるとは考えにくいが……」
確かにそれは言える。ガイア様なら、ほとぼりが冷めてからリグリットを当主にする可能性があったけれど、エメラダ夫人がそれをするとは考えにくかった。それよりは、その弟のマグリット様を当主に据えるでしょうね。確かまだ12歳とかだったと思うけれど。
「リグリット・バークス公爵令息も十分な罰を受けていると思うが。これ以上、何を望むのだ?」
「しかし、アミーナ嬢の家系に対する慰謝料は法外過ぎます。私が腑に落ちない部分は、主にそこにあるかと」
「バークス公爵家が行った慰謝料請求か」
「はい」
「確かに、3000万ゴールドというのは法外だな」
そう、3000万ゴールドは慰謝料の額としては法外過ぎる。バークス公爵家は私への慰謝料をそこから出しても十分に利益になるほどの金額を伯爵家に提示したことになるのだから。
「よし、わかった。慰謝料の件については、私の方からも話を回しておこう。慰謝料請求については、きっちと議会を通し、基準内の額に収めるようにとな」
「あ、ありがとうございます、陛下!」
「なに、気にすることはない。しかし、敵だったはずのエレナ嬢から塩を贈られるような気持ちだろうな、アミーナ嬢は……なかなか、屈辱的かもしれんな」
「そうかもしれませんね、ファルス家としては有り難いことでしょうが、助けてくれたのがエレナ嬢本人となると……これも罰になるのかもしれません」
ファルス伯爵家にとってみれば、屈辱的か。まあ、そこは私が与り知るところではないわ。でも、法外な慰謝料に関しては減額される可能性が出て来た。それが国王陛下に通っただけでも、成功と言えるのかもしれないわね。
「いえ……異論という程のことは……」
「そうか……ではヨハンよ、特に異論がないのであれば、これ以上のバークス公爵家への刺激は出来る限り控えて……」
「申し訳ございません、陛下。お話をさせていただいても、よろしいでしょうか?」
私はついつい、オランゼ国王陛下の言葉を遮るように発言してしまった。本来であれば許されることではないけれど、オランゼ国王陛下は何も言わない。
「どうした、エレナ嬢? 話してみよ」
「ありがとうございます、陛下。今回の件についての、ファルス伯爵家のことなのですが……」
「ファルス伯爵家だと? バークス公爵家ではなく、か?」
「はい、ファルス伯爵家のことでございます、陛下」
私から意外な言葉が出て来たと思ったのか、国王陛下は目を丸くしていた。バークス公爵家ならともかく、ファルス伯爵家とは……といった面持ちなのかもしれない。
「ふむ、どうしたというのだ?」
「アミーナ嬢についてですが……バークス家のエメラダ夫人は、全ての責任をアミーナ嬢に押し付けている側面があります」
「ぬ、それは……」
「彼女はリグリット様の浮気相手ではありますので、その点は批判されても仕方ないのかもしれません。しかし、本来の原因という観点から見れば、リグリット様にあるのではないでしょうか?」
ここで初めて、オランゼ国王陛下は黙った。今まで流れるように返答をしてきたにも関わらず、だ。私の意見に一理あると感じたのかもしれない。
「父上、確かにエレナ嬢の言う通りかと思います。しかも、私達がガイア・バークス公爵と一緒に、リグリットを糾弾した時、彼は全ての責任をアミーナ嬢に押し付けていたのですから。それにまんまと引っかかったのが、ガイア殿です」
「全ての責任というのは、アミーナ嬢を女狐呼ばわりして、自分と付き合わなければ死んでやる云々を言ったとされる、あれか」
「はい、その通りです……」
「ふむ……」
オランゼ国王陛下は再び黙り始めた。自らの考えを整理しているようだ。軽く唸りながら悩んでいるように見える。
「しかし、リグリットは遠方へ飛ばされるのは確実だろう。エメラダ夫人の性格から言って、リグリットをそのまま当主に据えるとは考えにくいが……」
確かにそれは言える。ガイア様なら、ほとぼりが冷めてからリグリットを当主にする可能性があったけれど、エメラダ夫人がそれをするとは考えにくかった。それよりは、その弟のマグリット様を当主に据えるでしょうね。確かまだ12歳とかだったと思うけれど。
「リグリット・バークス公爵令息も十分な罰を受けていると思うが。これ以上、何を望むのだ?」
「しかし、アミーナ嬢の家系に対する慰謝料は法外過ぎます。私が腑に落ちない部分は、主にそこにあるかと」
「バークス公爵家が行った慰謝料請求か」
「はい」
「確かに、3000万ゴールドというのは法外だな」
そう、3000万ゴールドは慰謝料の額としては法外過ぎる。バークス公爵家は私への慰謝料をそこから出しても十分に利益になるほどの金額を伯爵家に提示したことになるのだから。
「よし、わかった。慰謝料の件については、私の方からも話を回しておこう。慰謝料請求については、きっちと議会を通し、基準内の額に収めるようにとな」
「あ、ありがとうございます、陛下!」
「なに、気にすることはない。しかし、敵だったはずのエレナ嬢から塩を贈られるような気持ちだろうな、アミーナ嬢は……なかなか、屈辱的かもしれんな」
「そうかもしれませんね、ファルス家としては有り難いことでしょうが、助けてくれたのがエレナ嬢本人となると……これも罰になるのかもしれません」
ファルス伯爵家にとってみれば、屈辱的か。まあ、そこは私が与り知るところではないわ。でも、法外な慰謝料に関しては減額される可能性が出て来た。それが国王陛下に通っただけでも、成功と言えるのかもしれないわね。
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