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29話 陛下との会話 その2
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「お待ちください陛下……では、これ以上、バークス公爵家に関わるなとおっしゃるのですか?」
「そこまで言うつもりはないが……お前は過剰にバークス公爵家を裁こうとしていないか?」
「そ、それは……!」
オランゼ国王陛下からの正論? と言えばいいのだろうか。その言葉にヨハン様は黙ってしまっていた。どこか顧みるところがあったのかもしれない。
「エレナ嬢も同じだ。其方の優先すべきことはなんだ?」
「私の……優先すべきことでしょうか……?」
「その通りだ。ヨハンは其方の為に動いている。優先すべきことくらいはすぐに、答えられるだろう?」
私の優先すべきこと……それは一体、何を意味するのだろうか? おそらく陛下は、客観的に見るように促しているのだと思う。私が優先すべきこと……それを客観的に見れば、自ずと答えは出て来る。
「我が家であるランカスター家の利益だと思います。私はランカスターに生まれた身ですので、今回の事件に関してもそれを優先して動きたいと考えております」
「うむ、素晴らしい意見だ。そうなれば、エレナ嬢の願いはバークス公爵家からの土地の奪取でほぼ、成立するだろう? それより先は其方が望むことではないのではないか?」
「それより先……ですか?」
具体的には何を意味するのだろうか? おそらくは、バークス公爵家の今後についてだと思うけど。
「バークス公爵家はランカスター侯爵家が望む土地を提供し、相応のダメージを負うことになるだろう。同時に、次期当主候補筆頭であったリグリット・バークス公爵令息は、しばらく謹慎処分になるだろう。そこまでのダメージはほぼ確定なのだ。それ以上の罰を望むのは過剰になってしまうかもしれん……議会も黙ってはいないだろう」
確かにそうかもしれない。オランゼ国王陛下がおっしゃるように、一定の罰をバークス公爵家が負うことになるのは確定だ。それ以上の罰は望むなと言いたいのだろう。多分、オランゼ国王陛下はバークス公爵家との必要以上の摩擦を懸念している。
まあ、実質的なトップのエメラダ夫人が危険人物だから仕方ないとは思うけれど。オランゼ国王陛下の言葉は決して間違ってはいないと思う。ただし、私としては腑に落ちない点はやはりあったりする。
「しかし、父上……彼らはファルス家にも多額の慰謝料を請求しています。それは、ファルス伯爵家が崩壊しかねない程の額であり……」
「それは、自業自得というものだろう? いや、自業自得までいかなくても、私達が介入するところではないはずだ。あくまでも、バークス公爵家とファルス伯爵家の問題なのだからな。エレナ嬢としても、まさか自分を追い詰めたきっかけでもあるアミーナ・ファルス伯爵令嬢に同情などしないだろう?」
「それは……確かにその通りかもしれませんが……」
陛下のおっしゃっている言葉は決して間違ってはいないと思う。でも……なんだろう? やはり、腑に落ちない点があった。このまま見て見ぬ振りをしても良いのだろうけれど……このまま陛下の言葉通りに進めるのは、後から後悔を生み出してしまいそうだった。だから、私は失礼だとは感じつつも口を開くことにする。
自分の中に生まれた、腑に落ちない部分を解消させる為に……。
「そこまで言うつもりはないが……お前は過剰にバークス公爵家を裁こうとしていないか?」
「そ、それは……!」
オランゼ国王陛下からの正論? と言えばいいのだろうか。その言葉にヨハン様は黙ってしまっていた。どこか顧みるところがあったのかもしれない。
「エレナ嬢も同じだ。其方の優先すべきことはなんだ?」
「私の……優先すべきことでしょうか……?」
「その通りだ。ヨハンは其方の為に動いている。優先すべきことくらいはすぐに、答えられるだろう?」
私の優先すべきこと……それは一体、何を意味するのだろうか? おそらく陛下は、客観的に見るように促しているのだと思う。私が優先すべきこと……それを客観的に見れば、自ずと答えは出て来る。
「我が家であるランカスター家の利益だと思います。私はランカスターに生まれた身ですので、今回の事件に関してもそれを優先して動きたいと考えております」
「うむ、素晴らしい意見だ。そうなれば、エレナ嬢の願いはバークス公爵家からの土地の奪取でほぼ、成立するだろう? それより先は其方が望むことではないのではないか?」
「それより先……ですか?」
具体的には何を意味するのだろうか? おそらくは、バークス公爵家の今後についてだと思うけど。
「バークス公爵家はランカスター侯爵家が望む土地を提供し、相応のダメージを負うことになるだろう。同時に、次期当主候補筆頭であったリグリット・バークス公爵令息は、しばらく謹慎処分になるだろう。そこまでのダメージはほぼ確定なのだ。それ以上の罰を望むのは過剰になってしまうかもしれん……議会も黙ってはいないだろう」
確かにそうかもしれない。オランゼ国王陛下がおっしゃるように、一定の罰をバークス公爵家が負うことになるのは確定だ。それ以上の罰は望むなと言いたいのだろう。多分、オランゼ国王陛下はバークス公爵家との必要以上の摩擦を懸念している。
まあ、実質的なトップのエメラダ夫人が危険人物だから仕方ないとは思うけれど。オランゼ国王陛下の言葉は決して間違ってはいないと思う。ただし、私としては腑に落ちない点はやはりあったりする。
「しかし、父上……彼らはファルス家にも多額の慰謝料を請求しています。それは、ファルス伯爵家が崩壊しかねない程の額であり……」
「それは、自業自得というものだろう? いや、自業自得までいかなくても、私達が介入するところではないはずだ。あくまでも、バークス公爵家とファルス伯爵家の問題なのだからな。エレナ嬢としても、まさか自分を追い詰めたきっかけでもあるアミーナ・ファルス伯爵令嬢に同情などしないだろう?」
「それは……確かにその通りかもしれませんが……」
陛下のおっしゃっている言葉は決して間違ってはいないと思う。でも……なんだろう? やはり、腑に落ちない点があった。このまま見て見ぬ振りをしても良いのだろうけれど……このまま陛下の言葉通りに進めるのは、後から後悔を生み出してしまいそうだった。だから、私は失礼だとは感じつつも口を開くことにする。
自分の中に生まれた、腑に落ちない部分を解消させる為に……。
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