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22話 糾弾に向かう その1
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私は現在の状況がどうなっているのか、気になって仕方がなかった。エメラダ夫人には感謝しているところも確かにある。穏便にリグリット様との婚約解消をしてくれたし、慰謝料の支払いも約束してくれたのだから。
おそらくエメラダ夫人は、その両方の約束を守ってくれるだろう。逆にヨハン様が居たあの状況でそんな嘘を吐いたら大変なことになってしまうし……ほぼ間違いなく、その約束は果たされると思う。
でも、私は素直には納得できない部分があった。それはアミーナ・ファルス伯爵令嬢の家系が没落するかもしれないことと、アミーナ嬢が現在、バークス家に軟禁状態にあるということだ。エメラダ夫人はファルス伯爵との交渉を有利に進めるためにわざと、アミーナ様を解放しない選択肢を取ったのではないか……。
普通に考えれば、公爵と伯爵という立場の関係だけで有利に話を進められたはず。しかし、エメラダ夫人は念には念をという意味合いで保険を掛けたのではないだろうか?
「ヨハン様……私はそのように考えておりますが、如何でございますか?」
「そうだな……エメラダ夫人は昔から切れ者として知られている。自らの関係者以外には容赦をしない非情さと、関係者にはその度合いに応じて慈愛の精神を見せるという両面を持ち合わせているのだ」
「慈愛の精神……」
そうなると、私は慈愛を見せてくれた立場ということになるわけか。
「ああ、慈愛の精神だ。現状の我が国に於いてもめずらしタイプと言えるだろう。しかし、ああいう両極端な判断を瞬時に行える者が必要なことも事実だ。国家の存続、運営というのは……時には綺麗事だけでは進められないこともある。父上である国王も無慈悲な決断を下したことは何度もあるからな」
「それは承知しております。しかし……」
アミーナ様は自業自得だと思うし、息子にまんまと翻弄されるガイア様にも同情する気はないけれど……もちろん、今回の事件の首謀者たるリグリット様には余計に。でも、このままエメラダ夫人の計画通りに事が進むのは腑に落ちなかった。彼女の計画通りに事が進んだとしても、私の家系であるランカスター家やヨハン様んは被害は及ばないと思うけれど……。
「このまま、エメラダ夫人の思うように事が運んでは面白くない……エレン、今の君はそんな顔をしているぞ?」
そんな顔をしていただろうか? ヨハン様に指摘されて恥ずかしくなってしまう。
「ヨハン様はどう思いますか? このまま、エメラダ夫人の計画通りに進んで……大丈夫なのでしょうか?」
「そうだな……ここで、エメラダ夫人を勢いに乗らせることは得策とは言えないだろう。今後、違う事件が勃発した時に調子づかせてしまう恐れがある」
「はい、私もそう思います」
エメラダ夫人ほどに精神が養われた方が、今回のことだけで調子に乗るとは思えないけれど、可能性は否定できない。それに……今回のことに関して、バークス家のダメージが低いことも気になってしまう。
「腑に落ちない点があるのならば、徹底的に追及するべきだろうな。それが我が王国の未来を築くことになるのだから。バークス家に赴いてみるか?」
「ヨハン様が許してくださるのであれば、是非お願いいたします」
「よし、それでこそエレナというものだ。早速、向かうとしようか」
「はいっ!」
これが正しいことなのかはまだ分からない……自分の中でも疑問点は数多く存在している。しかし、腑に落ちない点が多いのも事実だ。それを解消するには……行動を起こすのが一番、手っ取り早かった。
おそらくエメラダ夫人は、その両方の約束を守ってくれるだろう。逆にヨハン様が居たあの状況でそんな嘘を吐いたら大変なことになってしまうし……ほぼ間違いなく、その約束は果たされると思う。
でも、私は素直には納得できない部分があった。それはアミーナ・ファルス伯爵令嬢の家系が没落するかもしれないことと、アミーナ嬢が現在、バークス家に軟禁状態にあるということだ。エメラダ夫人はファルス伯爵との交渉を有利に進めるためにわざと、アミーナ様を解放しない選択肢を取ったのではないか……。
普通に考えれば、公爵と伯爵という立場の関係だけで有利に話を進められたはず。しかし、エメラダ夫人は念には念をという意味合いで保険を掛けたのではないだろうか?
「ヨハン様……私はそのように考えておりますが、如何でございますか?」
「そうだな……エメラダ夫人は昔から切れ者として知られている。自らの関係者以外には容赦をしない非情さと、関係者にはその度合いに応じて慈愛の精神を見せるという両面を持ち合わせているのだ」
「慈愛の精神……」
そうなると、私は慈愛を見せてくれた立場ということになるわけか。
「ああ、慈愛の精神だ。現状の我が国に於いてもめずらしタイプと言えるだろう。しかし、ああいう両極端な判断を瞬時に行える者が必要なことも事実だ。国家の存続、運営というのは……時には綺麗事だけでは進められないこともある。父上である国王も無慈悲な決断を下したことは何度もあるからな」
「それは承知しております。しかし……」
アミーナ様は自業自得だと思うし、息子にまんまと翻弄されるガイア様にも同情する気はないけれど……もちろん、今回の事件の首謀者たるリグリット様には余計に。でも、このままエメラダ夫人の計画通りに事が進むのは腑に落ちなかった。彼女の計画通りに事が進んだとしても、私の家系であるランカスター家やヨハン様んは被害は及ばないと思うけれど……。
「このまま、エメラダ夫人の思うように事が運んでは面白くない……エレン、今の君はそんな顔をしているぞ?」
そんな顔をしていただろうか? ヨハン様に指摘されて恥ずかしくなってしまう。
「ヨハン様はどう思いますか? このまま、エメラダ夫人の計画通りに進んで……大丈夫なのでしょうか?」
「そうだな……ここで、エメラダ夫人を勢いに乗らせることは得策とは言えないだろう。今後、違う事件が勃発した時に調子づかせてしまう恐れがある」
「はい、私もそう思います」
エメラダ夫人ほどに精神が養われた方が、今回のことだけで調子に乗るとは思えないけれど、可能性は否定できない。それに……今回のことに関して、バークス家のダメージが低いことも気になってしまう。
「腑に落ちない点があるのならば、徹底的に追及するべきだろうな。それが我が王国の未来を築くことになるのだから。バークス家に赴いてみるか?」
「ヨハン様が許してくださるのであれば、是非お願いいたします」
「よし、それでこそエレナというものだ。早速、向かうとしようか」
「はいっ!」
これが正しいことなのかはまだ分からない……自分の中でも疑問点は数多く存在している。しかし、腑に落ちない点が多いのも事実だ。それを解消するには……行動を起こすのが一番、手っ取り早かった。
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