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1話 婚約者と幼馴染令嬢
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「今日も美しいな、エレナ。君と婚約出来たことを光栄に思うよ」
「ありがとうございます、リグリット様!」
私の名前はエレナ・ランカスター。立場的には侯爵令嬢である。私の目の前に立っている人物はリグリット・バークス公爵令息。私の婚約者だ。今のやり取りは単純に彼が私の容姿を褒めてくれただけである。
ダイダロス王国の中でも名家と称されるバークス家。その長男を務めるリグリット様の婚約者になれたことは非常に名誉なことだと言えると思う。
もちろん、侯爵家と公爵家という高い貴族の立場であるがゆえに、政略的な婚約の側面がないわけではない。でも、私は彼のことを一人の男性としても愛していこうと考えていた。豪華なパーティーに出席することも多いので、外見にはなるべく気を使っているつもりだ。だからこそ、こうやって褒められるととても嬉しい。
「リグリット様に褒められると、とても嬉しく思います」
「そうかそうか、そういう言葉を聞けるのは嬉しいな。ありがとう、エレナ」
「はい、リグリット様……!」
彼は婚前交渉として、私との関係を持って来たりもしない。貴族としての常識にも精通している人物だ。そんな彼と婚約出来たことは、非常に運が良いことだと言えると思う。おそらくは、ライバルは多かっただろうから。
彼自身も好きになれて、私の家系であるランカスター家の繁栄にも繋がる。こんなに良い婚約は他にないのでは? と思える程だった。まあ、私の初恋は彼ではなく別の人物ではあるんだけれど……そっちは残念ながら、叶うことはないだろうしね。
「さて……これからの予定なんだがな、エレナよ」
「はい、リグリット様」
私は真面目に彼の言葉に耳を傾けた。予定ということは、今後の舞踏会などの出席になるのだろう。私は彼の次の言葉を待っていた。
「私の幼馴染のアミーナ・ファルス伯爵令嬢と久しぶりに会えるのだ。エレナにもぜひ、同席してもらいたいのだが」
「アミーナ嬢でございますか……?」
「ああ、そのとおりだ」
アミーナ・ファルス伯爵令嬢……確か、家族全体で他国に遠征をしていた家系のはず。ダイダロス王国に戻って来たということね。つまり、リグリット様はその幼馴染のアミーナ嬢と会う、ということか。
少しだけ、不安がよぎってしまった。いえ、考え過ぎね。リグリット様に限って間違いなんて起こすわけはないし。
「畏まりました、リグリット様。私も婚約者として、同席させていただきます」
「ありがとう、エレナ。助かるよ」
リグリット様の満面の笑みが私の瞳に入って来た。そんな笑みを見せられてはわがままを言うわけにはいかない。私にだって会いたい幼馴染は居るのだから……。幼馴染という存在は何時の時代に於いても特別な存在だ。それを無下にするのはおかしいと思っている。
私はそこまでは肯定的に考えていた……リグリット様の裏切りに直面するまでは……。
「ありがとうございます、リグリット様!」
私の名前はエレナ・ランカスター。立場的には侯爵令嬢である。私の目の前に立っている人物はリグリット・バークス公爵令息。私の婚約者だ。今のやり取りは単純に彼が私の容姿を褒めてくれただけである。
ダイダロス王国の中でも名家と称されるバークス家。その長男を務めるリグリット様の婚約者になれたことは非常に名誉なことだと言えると思う。
もちろん、侯爵家と公爵家という高い貴族の立場であるがゆえに、政略的な婚約の側面がないわけではない。でも、私は彼のことを一人の男性としても愛していこうと考えていた。豪華なパーティーに出席することも多いので、外見にはなるべく気を使っているつもりだ。だからこそ、こうやって褒められるととても嬉しい。
「リグリット様に褒められると、とても嬉しく思います」
「そうかそうか、そういう言葉を聞けるのは嬉しいな。ありがとう、エレナ」
「はい、リグリット様……!」
彼は婚前交渉として、私との関係を持って来たりもしない。貴族としての常識にも精通している人物だ。そんな彼と婚約出来たことは、非常に運が良いことだと言えると思う。おそらくは、ライバルは多かっただろうから。
彼自身も好きになれて、私の家系であるランカスター家の繁栄にも繋がる。こんなに良い婚約は他にないのでは? と思える程だった。まあ、私の初恋は彼ではなく別の人物ではあるんだけれど……そっちは残念ながら、叶うことはないだろうしね。
「さて……これからの予定なんだがな、エレナよ」
「はい、リグリット様」
私は真面目に彼の言葉に耳を傾けた。予定ということは、今後の舞踏会などの出席になるのだろう。私は彼の次の言葉を待っていた。
「私の幼馴染のアミーナ・ファルス伯爵令嬢と久しぶりに会えるのだ。エレナにもぜひ、同席してもらいたいのだが」
「アミーナ嬢でございますか……?」
「ああ、そのとおりだ」
アミーナ・ファルス伯爵令嬢……確か、家族全体で他国に遠征をしていた家系のはず。ダイダロス王国に戻って来たということね。つまり、リグリット様はその幼馴染のアミーナ嬢と会う、ということか。
少しだけ、不安がよぎってしまった。いえ、考え過ぎね。リグリット様に限って間違いなんて起こすわけはないし。
「畏まりました、リグリット様。私も婚約者として、同席させていただきます」
「ありがとう、エレナ。助かるよ」
リグリット様の満面の笑みが私の瞳に入って来た。そんな笑みを見せられてはわがままを言うわけにはいかない。私にだって会いたい幼馴染は居るのだから……。幼馴染という存在は何時の時代に於いても特別な存在だ。それを無下にするのはおかしいと思っている。
私はそこまでは肯定的に考えていた……リグリット様の裏切りに直面するまでは……。
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