上 下
10 / 17

10話 勝手な言い分 その1

しおりを挟む
「話を整理してもいいかしら、クローヴィス?」


 私はクローヴィスが当たり前のように私に話しかけていることに、混乱しつつも話の状況を整理することにした。


「整理をするのは良いけれど、別にそんなに深く考える必要はないんじゃないかな? 僕たちが幼馴染であることに変わりはないのだし……」

「それはそうかもしれないけれど……」


 おかしい、この時点で既にクローヴィスの思考回路はおかしいと言わざるを得ない。私達は性格的な問題で婚約の解消をした。その時点で本来であれば、他人行儀に話す存在になるはずだ。しかし、今の彼は婚約をする前の彼とまったく変わらずに接して来ている。

 しかも、私の傍にはラインハルト様が居るというのに……まったく気にする素振りを見せずに。


「クローヴィス、何かおかしいとは思わないの?」

「えっ、何がだいレレイ? よく分からないんだけど……」

 もう駄目かもしれない……話すのが苦痛になってきたわ。

「あなたは、アルカと婚約しているはずでしょう? アルカはどうしたのよ?」


 とりあえず話の方向性を変えてみた。クローヴィスはあからさまに嫌な顔を見せている。何かあったわね絶対……聞きたくはないけれど。


「実は、アルカとの関係はあまり上手く行ってないんだ……彼女は僕の求める女性ではなかったのかもしれない」

 頭を抱えながらクローヴィスは悩んでいるようだった。そんなことだろうと思ったわ。大方、自分の理想像ばかりをアルカにも押し付けて、少しでも違うと文句を言ったのでしょうね。私と婚約していた時と何も変わっていない……彼は根本的に間違っていることに気付いていないのだ。


「僕はやっぱり、君との関係を続けたいと思っているんだ。レレイ、僕とやり直してくれないかな?」

「は?」

「……」

 あまりに予想外の言葉に、私は思わず呆けた声をあげてしまった。ラインハルト様も無言ではあったけれど、クローヴィスの言葉に目を見開いている。流石に予想外過ぎたようね……。


「別に問題ないだろう、レレイ? 君なら磨けばきっと、僕の理想の奥さんになってくれると確信したんだ。お願いだ、レレイ。もう一度、僕と付き合って欲しい!」


 全く悪びれている様子のないクローヴィス。これでは、アルカが可哀想になってくるレベルだ。彼の中では再婚約の敷居が異常に低いのかもしれない。本来はとてもハードルが高いことなんだけれどね。

「クローヴィス殿、それは流石に身勝手過ぎる言い分ではないですか?」


 私が反論しようとした時、ラインハルト様が代わりとばかりにクローヴィスに対して叱責の言葉を口にした。クローヴィスは目を見開いている……これから、現実を突きつけられるのだ。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて
恋愛
【本編完結】私の婚約者は、妹に会うために家に訪れる。 【ほか】続きです。

安息を求めた婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。 そして新たな婚約者は私の妹。 衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。 そう全ては計画通り。 これで全てから解放される。 ……けれども事はそう上手くいかなくて。 そんな令嬢のとあるお話です。 ※なろうでも投稿しております。

【完結】美しい人。

❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」 「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」 「ねえ、返事は。」 「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」 彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。

【完結】婚約破棄!! 

❄️冬は つとめて
恋愛
国王主催の卒業生の祝賀会で、この国の王太子が婚約破棄の暴挙に出た。会場内で繰り広げられる婚約破棄の場に、王と王妃が現れようとしていた。

美形揃いの王族の中で珍しく不細工なわたしを、王子がその顔で本当に王族なのかと皮肉ってきたと思っていましたが、実は違ったようです。

ふまさ
恋愛
「──お前はその顔で、本当に王族なのか?」  そう問いかけてきたのは、この国の第一王子──サイラスだった。  真剣な顔で問いかけられたセシリーは、固まった。からかいや嫌味などではない、心からの疑問。いくら慣れたこととはいえ、流石のセシリーも、カチンときた。 「…………ぷっ」  姉のカミラが口元を押さえながら、吹き出す。それにつられて、広間にいる者たちは一斉に笑い出した。  当然、サイラスがセシリーを皮肉っていると思ったからだ。  だが、真実は違っていて──。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、済まない。カノンが……。」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当に済まない。、ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものように済まなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ。ルミナス様、ゴホッ。さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

公爵令嬢の婚約解消宣言

宵闇 月
恋愛
拗らせ王太子と婚約者の公爵令嬢のお話。

可愛い姉より、地味なわたしを選んでくれた王子様。と思っていたら、単に姉と間違えただけのようです。

ふまさ
恋愛
 小さくて、可愛くて、庇護欲をそそられる姉。対し、身長も高くて、地味顔の妹のリネット。  ある日。愛らしい顔立ちで有名な第二王子に婚約を申し込まれ、舞い上がるリネットだったが──。 「あれ? きみ、誰?」  第二王子であるヒューゴーは、リネットを見ながら不思議そうに首を傾げるのだった。

処理中です...