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6話 公爵令息との出会い その2
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「ら、ラインハルト様……!?」
「レレイ・フォルスター伯爵令嬢……お久しぶりでございます。いえ、こうしてお話しするのは初めてでしたね」
「は、はい! 初めまして! お会い出来て光栄でございます……!」
私は緊張のあまり、直立不動になってしまっていた。こうして出会いお話しをするのは確かに初めてだ。パーティー会場ないですれ違ったことくらいはあると思うけど。間近に見ると長身で驚くほどの二枚目……もう、信じられないくらいに。
ラインハルト様が私の前に現れてから、私に対する視線が一気に引いていくのが感じられた。もしかしたら、ラインハルト様に遠慮してのことなのかもしれない。お兄様の話では他にも私と話をしたい、という方々がいらっしゃったみたいだから、悪いことをしてしまったかもしれないわね。
私はその方々に心の中で謝罪をしておいた。
「ラインハルト様、よろしければレレイと話をしてやってもらえませんか?」
「本当によろしいのですか、ウッドロウ殿? 私などとレレイ嬢が……」
「ええ、大丈夫かと思います。レレイも緊張はしておりますが、嫌がっていることはありませんので」
「それなら安心なのですが……」
ラインハルト様はそれでも遠慮気味に私とお兄様を交互に見やっていた。もちろん、私が嫌がっているはずはないけど、ラインハルト様は慎重なご様子だ。そんなに見つめられたらどんどん緊張してしまう……色々とマズイ気がしてしまった。
「お、お兄様!」
「び、びっくりしたぞ……! どうしたんだ、レレイ?」
「私はラインハルト様とお話しをしておきますので、お兄様はお気に入りの令嬢のところへ向かっては如何でございますか?」
緊張感を少しでも拭いたかったので、話を進めることにした。今にして思うと、お兄様が居なくなったら、より緊張してしまいそうだったけれど……いまさら遅かった。
「そうだな……お前がシルヴィアのことを知っているとは驚きだったが、流石に妹にはバレてしまうか」
えっ? シルヴィア様……? お目当ての令嬢が居たの? しまった、抜かったわ……。
「ふふふ、ウッドロウ殿は隅に置けないお方のようだ」
「ラインハルト様に言われるとは……なかなか、複雑な気分ですね。では、妹のことを宜しくお願いいたします」
「畏まりました、お任せください」
そう言ってウッドロウお兄様はその場から去って行った。残されたのは私とラインハルト様だけ……ええっ? 本当におしゃべりをするの!? 何の話題から切り出そうか……私の脳はフル回転をしていた。
------------------------------
(クローヴィス視点)
「なあ、アルカ……だから、そこは違うと言っているじゃないか」
「何言ってるの?」
「食事の後に入浴するのが普通であって……」
「そのくらいどっちが先でも問題ないでしょう?」
僕は大好きだったレレイと別れた。昔からの幼馴染だったし、女性としてはアルカよりも好きだったのだ。しかし、一緒に生活する機会が増えたことで、細かい部分での不一致が原因ですれ違いが起きてしまう。
僕がアルカとレレイを比べるものだから、それに怒って婚約解消という結果になってしまった。
とても残念だった……レレイがあんな女性だったことは。僕はアルカとなら、確実に幸せになれるだろうと思い、彼女と婚約することにした。
「アルカ、この間のパーティーだって、もっと婚約者として働いてくれないといけないよ」
「私、それなりに働いていたと思うけど……少なくとも、あなたの顔は立てていたと思うわ」
「あれくらいじゃダメだよ。もっと、僕が気持ちよくなるレベルで立ててもらわないと……婚約者の意味がない」
「はあ……ごめんさない」
「全然、気持ちがこもってないよね、その謝罪」
「だって……」
僕とアルカの婚約関係も少しずつおかしくなって来ている。まあ、僕が好きだったのは元々はレレイだったわけだし、しょうがないのかもしれないけれど。彼女に理想的な婚約者を演じてもらうのは荷が重すぎたのかな?
やっぱり、僕にはレレイしか居ないのかもしれない……彼女なら、もっと勉強すれば確実に光るはずだ。
「レレイ・フォルスター伯爵令嬢……お久しぶりでございます。いえ、こうしてお話しするのは初めてでしたね」
「は、はい! 初めまして! お会い出来て光栄でございます……!」
私は緊張のあまり、直立不動になってしまっていた。こうして出会いお話しをするのは確かに初めてだ。パーティー会場ないですれ違ったことくらいはあると思うけど。間近に見ると長身で驚くほどの二枚目……もう、信じられないくらいに。
ラインハルト様が私の前に現れてから、私に対する視線が一気に引いていくのが感じられた。もしかしたら、ラインハルト様に遠慮してのことなのかもしれない。お兄様の話では他にも私と話をしたい、という方々がいらっしゃったみたいだから、悪いことをしてしまったかもしれないわね。
私はその方々に心の中で謝罪をしておいた。
「ラインハルト様、よろしければレレイと話をしてやってもらえませんか?」
「本当によろしいのですか、ウッドロウ殿? 私などとレレイ嬢が……」
「ええ、大丈夫かと思います。レレイも緊張はしておりますが、嫌がっていることはありませんので」
「それなら安心なのですが……」
ラインハルト様はそれでも遠慮気味に私とお兄様を交互に見やっていた。もちろん、私が嫌がっているはずはないけど、ラインハルト様は慎重なご様子だ。そんなに見つめられたらどんどん緊張してしまう……色々とマズイ気がしてしまった。
「お、お兄様!」
「び、びっくりしたぞ……! どうしたんだ、レレイ?」
「私はラインハルト様とお話しをしておきますので、お兄様はお気に入りの令嬢のところへ向かっては如何でございますか?」
緊張感を少しでも拭いたかったので、話を進めることにした。今にして思うと、お兄様が居なくなったら、より緊張してしまいそうだったけれど……いまさら遅かった。
「そうだな……お前がシルヴィアのことを知っているとは驚きだったが、流石に妹にはバレてしまうか」
えっ? シルヴィア様……? お目当ての令嬢が居たの? しまった、抜かったわ……。
「ふふふ、ウッドロウ殿は隅に置けないお方のようだ」
「ラインハルト様に言われるとは……なかなか、複雑な気分ですね。では、妹のことを宜しくお願いいたします」
「畏まりました、お任せください」
そう言ってウッドロウお兄様はその場から去って行った。残されたのは私とラインハルト様だけ……ええっ? 本当におしゃべりをするの!? 何の話題から切り出そうか……私の脳はフル回転をしていた。
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(クローヴィス視点)
「なあ、アルカ……だから、そこは違うと言っているじゃないか」
「何言ってるの?」
「食事の後に入浴するのが普通であって……」
「そのくらいどっちが先でも問題ないでしょう?」
僕は大好きだったレレイと別れた。昔からの幼馴染だったし、女性としてはアルカよりも好きだったのだ。しかし、一緒に生活する機会が増えたことで、細かい部分での不一致が原因ですれ違いが起きてしまう。
僕がアルカとレレイを比べるものだから、それに怒って婚約解消という結果になってしまった。
とても残念だった……レレイがあんな女性だったことは。僕はアルカとなら、確実に幸せになれるだろうと思い、彼女と婚約することにした。
「アルカ、この間のパーティーだって、もっと婚約者として働いてくれないといけないよ」
「私、それなりに働いていたと思うけど……少なくとも、あなたの顔は立てていたと思うわ」
「あれくらいじゃダメだよ。もっと、僕が気持ちよくなるレベルで立ててもらわないと……婚約者の意味がない」
「はあ……ごめんさない」
「全然、気持ちがこもってないよね、その謝罪」
「だって……」
僕とアルカの婚約関係も少しずつおかしくなって来ている。まあ、僕が好きだったのは元々はレレイだったわけだし、しょうがないのかもしれないけれど。彼女に理想的な婚約者を演じてもらうのは荷が重すぎたのかな?
やっぱり、僕にはレレイしか居ないのかもしれない……彼女なら、もっと勉強すれば確実に光るはずだ。
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