どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

ルイス

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4話 舞踏会への参加

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「お父様。婚約解消になってしまった件につきまして、本当に申し訳ございませんでした」

「気にするな、レレイよ。クローヴィス殿との間に色々な葛藤があったことは、薄々ではあるが気付いていた。今回の件は確かに残念ではあるが……仕方ないだろう」

「ありがとうございます、お父様……」


 クローヴィスとの婚約解消に掛かる一通りの手続きが完了した頃、私は改めてお父様に謝罪していた。婚約解消自体は私の精神状態などが考慮され、ほとんどのことをお父様とお母様が処理してくれたから。今、お母様は不在だけれど、二人には感謝しか出来ない。

 私の隣にはお兄様のウッドロウ・フォルスターが立っており、私に心配そうな視線を送っていた。


「残念だったな、レレイ。仲の良い、幼馴染として今までずっと育ってきたというのに……」

「左様でございます、お兄様。クローヴィスとの婚約解消は……本当に悲しいことです」

「そうか……しばらくはゆっくりと休んでおけ。お前の仕事はなるべく減らしておくから」

「申し訳ございません……」


 本来ならば、無理にでも舞踏会等の予定には参加した方が良いのだろうけど……我がゼグラス王国の貴族間での噂話というのは、非常に早く進む。しばらくの間はあまり、目立った動きをしない方が良いと私も考えていた。こんな悲しい気持ちのまま仕事をして失敗でもしたら、恥の上塗りのようになってしまうしね。


「しかし、クローヴィス・タイラー伯爵令息か。同じく幼馴染のアルカ・クインス伯爵令嬢と浮気をするような男だったとは……」

「お兄様……」


 正確にはおそらく、浮気をしていたわけではないだろうけど、それに限りなく近いと言えるだろう。お兄様は年齢で言えば5歳上になるけれど、彼らとは共通の知り合いでもある。それだけに、残念でならないといった感情を露わにしていた。

「お兄様、お父様。申し訳ございませんが、本日は先にお休みをしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、もちろんだ。レレイ、しっかりと休みなさい」

「しっかりと休め」

「はい、畏まりました。それではおやすみなさい」


 これ以上、クローヴィスのことを考えても悲しみが増えていくだけだ。私は話をそこで切り、自分の部屋へと戻ることにした。まだ就寝には早い時間だけれど、早めに寝てしまおう。



--------------------------------



「ふう……婚約解消から、今日で1カ月ね」


 私は決して数えたいわけではないけれど、自然とクローヴィスとの婚約解消の日付をカウントしてしまっていた。あれから、クローヴィスともアルカとも会っていない。その間に出る予定だった舞踏会はキャンセルという形を取った。

 現在は細々とした仕事のみを行っている。でも、そろそろ舞踏会には出席しておいた方が良いかもしれない。あまりにも参加していないと、それはそれで別の噂が流れてしまいそうだから。


 私はお兄様に、直近の舞踏会への参加について相談することにした。


「なに……? 舞踏会への参加を希望するだと……?」

「は、はい……今後もずっと出ないわけにもいかないかと思うので、この辺りで出席をしようかと思いまして……」

「そうかそうか、それは良いことだな! レレイがそう言ってくれて、私としては嬉しいぞ!」


 普段は比較的冷静なはずのお兄様だけど、やけにテンションが高いような? どういうことかしら?


「どうかしたのですか、お兄様? なにかいつもとご様子が違うように思えるのですが……」

「うむ、実はな……お前の婚約解消の件が貴族で広まり、もしかしたら下世話な噂が流れるかもと思っていたが、そうでもないのだ」

「そうなのですか?」


 予想外、といえば変に聞こえるかもしれないけれど、個人的には意外だった。


「それどころか、何名かの貴族が私にコンタクトを取るようになってな。どうも、目的はレレイらしいのだ」

「えっ? それって……」

「うむ、婚約解消を機に脈ありだった連中がレレイと親交を深めようと躍起になっているようだぞ」


 ええと、それは……喜ぶべきことよね? いまいち、実感が湧かないけれど……。


「しかもその中には、あの公爵令息であるラインハルト様もいらっしゃるのだ」

「ら、ラインハルト様……!?」


 ラインハルト・グローリー公爵令息と言えば、貴族の間では相当に有名なお方だ。国一番の剣術を体得しているのだから。そんな有名な方がお兄様にコンタクトを取ってくるなんて……これは期待しても良いのかしら? 実はお兄様が目的……とかじゃないわよね。

 私は胸は自然と高鳴っていた。新たな恋を見つける、というのには程遠いかもしれないけれど、クローヴィスのことを完全に忘れた生活をすることが出来そうだったから。
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