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1話 3人の幼馴染
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伯爵令嬢のレレイ・フォルスターは私の名前。同じく伯爵令嬢のアルカ・クインス。そして、伯爵令息のクローヴィス・タイラー。私達3人は幼い頃からの幼馴染だった。
同じくらいの家柄だったこともあり、自然と友人関係になっていた。同じ伯爵家とはいっても、クローヴィスの家系だけは少し上になるけれど。でも、いつまでも子供ではいられない……大人になる時は必ずやってくる。
私達が17歳になった時。
「僕と婚約をしてほしい、レレイ」
「クローヴィス……私で良いの? 本当に……?」
「ああ、僕は君じゃないと嫌だ」
「ありがとう! クローヴィス!」
伯爵家系同士の婚約……政略結婚という概念はほとんど存在しないと言っていいだろう。私はそんな婚約が叶って、とても嬉しかった。幼馴染であるクローヴィスとなら、きっと良い関係を築けるはず。私はそのように思っていたから。
「レレイ、クローヴィス。おめでとう」
「ありがとう! アルカ!」
同じ幼馴染のアルカも私達の婚約を祝福してくれた。私達は必ず上手くいく……そして、3人の幼馴染の関係はこれからもずっと続いていくのだと思っていた。しかし、そうではなかった。
--------------------------------
「この前の舞踏会でのことだが、どうして王族の方々が来てくれていたことを教えてくれなかったんだ?」
「ごめんなさい、クローヴィス。エトワール公爵と話していたから、つい……」
「そんなの理由にならないよ。僕の婚約者なら、もっとしっかりとサポートしてくれないと困るな」
「ご、ごめんなさい。これからは気を付けるわ……」
「まったく……これが、アルカなら、きっちりとサポートしてくれていただろうにね」
なぜそこでアルカの名前が出て来るのか分からないけれど、最近、クローヴィスはアルカと私を比べる発言ばかりしてくる。アルカなら、こうしてくれる。アルカなら、自分のことを第一に考えてくれると。
彼は少し、理想論に走っているのではないかと思えた。おそらくアルカでも、彼が望むようなサポートはできないだろう。というより、そういったサポートはむしろ、私の方が得意なはずだから。
でも、それを彼に話しても喧嘩になってしまうだけだ。私はなるべく自分が我慢することで、その場の空気を落ち着かせることを選んでいた。
その流れで私達の関係も落ち着いていくものと思っていたけれど……クローヴィスはなんと、もう一人の幼馴染であるアルカと浮気紛いのことをするのだった──。
私という婚約者を差し置いて、二人だけで出掛けることが多くなったり……明らかにおかしい。私の中で何かが崩れ始める音がしていた。彼は……クローヴィスはアルカの方を好きになっているのではないのか? という思いが心を満たしていった。
幼馴染でもあったクローヴィスを疑いたくなんかない。でも、私の表向きの考えとは裏腹に心の内部は、どんどんと疑いの眼差しを彼に向けて行くのだった……。
同じくらいの家柄だったこともあり、自然と友人関係になっていた。同じ伯爵家とはいっても、クローヴィスの家系だけは少し上になるけれど。でも、いつまでも子供ではいられない……大人になる時は必ずやってくる。
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「ああ、僕は君じゃないと嫌だ」
「ありがとう! クローヴィス!」
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「レレイ、クローヴィス。おめでとう」
「ありがとう! アルカ!」
同じ幼馴染のアルカも私達の婚約を祝福してくれた。私達は必ず上手くいく……そして、3人の幼馴染の関係はこれからもずっと続いていくのだと思っていた。しかし、そうではなかった。
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「ごめんなさい、クローヴィス。エトワール公爵と話していたから、つい……」
「そんなの理由にならないよ。僕の婚約者なら、もっとしっかりとサポートしてくれないと困るな」
「ご、ごめんなさい。これからは気を付けるわ……」
「まったく……これが、アルカなら、きっちりとサポートしてくれていただろうにね」
なぜそこでアルカの名前が出て来るのか分からないけれど、最近、クローヴィスはアルカと私を比べる発言ばかりしてくる。アルカなら、こうしてくれる。アルカなら、自分のことを第一に考えてくれると。
彼は少し、理想論に走っているのではないかと思えた。おそらくアルカでも、彼が望むようなサポートはできないだろう。というより、そういったサポートはむしろ、私の方が得意なはずだから。
でも、それを彼に話しても喧嘩になってしまうだけだ。私はなるべく自分が我慢することで、その場の空気を落ち着かせることを選んでいた。
その流れで私達の関係も落ち着いていくものと思っていたけれど……クローヴィスはなんと、もう一人の幼馴染であるアルカと浮気紛いのことをするのだった──。
私という婚約者を差し置いて、二人だけで出掛けることが多くなったり……明らかにおかしい。私の中で何かが崩れ始める音がしていた。彼は……クローヴィスはアルカの方を好きになっているのではないのか? という思いが心を満たしていった。
幼馴染でもあったクローヴィスを疑いたくなんかない。でも、私の表向きの考えとは裏腹に心の内部は、どんどんと疑いの眼差しを彼に向けて行くのだった……。
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