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12話 イグーロス帝国 その1

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 突然、ゴーストタウンに現れた、イグーロス帝国の騎士二人。重そうな鎧を身に着けていたけれど、兜は外しており顔は見えていた。


 私とフェンリルは近くの廃屋の陰に隠れて、二人をやり過ごしている。もう……せっかく、天候操作で色々したかったのに。ゴーストタウンで誰も棲んでないとか思っていたけれど、普通に人がやって来るのね。まあ、あの騎士っぽい二人がこの街に住んでいるってことはなさそうだけれど。


「で、ユトレヒト王国の方は大丈夫なのかよ?」

「どうも、最近はゴタゴタがあったって話しだぜ」

「ゴタゴタ~~? なんだよ、そりゃ……」


 二人は仕事をサボってここに来ているのかしら? ユトレヒト王国のゴタゴタって多分、私のことや魔物から身を守れなくなっている事柄よね?


「よくわからねぇが、ユトレヒト王国の戦力が弱くなってるんじゃないかって話しだ」

「本当か? 確か最近は兵力の増強や、魔法技術の向上とかを謳っていたはずだが……」


「そうだな。でも、それが奴らのハッタリかもしれねぇ。今度の二国間協議でハッキリするだろう」


「はっ、もしも事実なら忌々しい王国を占領とかできないかねぇ……俺はあの国は好きになれねぇしな」

「同感だぜ」


 なんだか笑えない話になってきているわね……私もあの国、特に王族とか貴族は好きになれないけれど。あの二人が協力的とも思えないわ。顔を合わせないで正解だったかも。


「このゴーストタウンは、更地にして新しく施設を建てるらしいよな」

「ああ、そうらしい。やっぱり時代はイグーロス帝国だぜ、俺は帝国の騎士で良かったと思ってるよ」

「同感だな、女にも困らねぇしな、ふはははははっ!」


 なんとなく嫌な予感はしていたけれど、やっぱり二人とも、真人間ではなかったわね。私の存在がバレていたら襲われていたかも……とりあえず、空気を読んで息を潜めているフェンリルには感謝しないと。

「よし、そろそろ戻ろうぜ。ゴーストタウンの様子も見れたことだしな」

「おう、わかったよ」


 二人はそう言いながら、物陰に隠れている私とフェンリルには気づかずに、そのまま去って行った。ふう……危なかった……。サボりではなく、ゴーストタウンの調査にやって来たのね、あの二人……。


「グルルルルルル……」


「よ~し、私達も戻ろうか、フェンリル?」


「グルルッ!」


 私の言葉にフェンリルは力強く頷いた。もう、私の言葉はかなり理解しているのかもしれない。一度、大森林に戻ってシード様にも報告しないと、色々と不味いことが起きかねないわね。
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