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2話 パーティーへの参加 その1

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「どうしたらいいんだろう、私は……」

「お嬢様……大丈夫でございますか?」

「アルウェン……ありがと。大丈夫よ……」

「そ、それならば良いのですが……」


 私の心配をしてくれているのは、執事の一人であるアルウェンだ。年齢は15歳だけれど、とてもしっかりとしている。私からすれば、可愛い弟みたいな存在かな……色々と助けてもらっている。

「公爵様からの婚約破棄……私としては、とても信じられません! 名誉ある公爵家がそのようなことを……!」

「アルウェン、私を思ってくれるのは凄く嬉しいわ。でも、言葉には気を付けてね?」

「あ、も、申し訳ございませんでした……!」


 彼は自分の失言を自覚したのか、私に90度の角度で頭を下げていた。アルウェンはとても生真面目なのだ。そんな彼を私は好いていた。

「いえ、そんなに謝る必要はないけどね。そのように思ってくれるのは、すごく嬉しいし……」

「お嬢様……そのようにおっしゃっていただき、光栄でございます!!」

「気持ちは凄く嬉しいんだけど……もう少し、普通に接してくれてもいいのよ? あなただって男爵家系の人間なんだし、私と2つしか違わないんだし……」

「いえ、勿体ないお言葉です、アメリアお嬢様……! お気持ちは嬉しいのですが、やはり私がお嬢様と親しくするのは、色々と問題があるかと思いまして……」

「ま、まあ……そうなのかな? う~ん……」

 私としては弟みたいな存在だし、もっと仲良くはしたいのだけれど……アルウェンはそれ以上の関係を望んでいないようだった。まあ、本人が望んでいないのであれば、私から進んでいくのも逆に迷惑になりそうよね……。


「アメリアお嬢様は、これからどのようになさるおつもりなのですか?」

「そ、そうね……ええと……」


 ああ、いけないいけない……上位者としての威厳が……。ザックス・オルタナティブ公爵に婚約破棄をされたダメージが思いのほか大きいのかもしれない。いえ、彼に対しての未練はないはずだけれど……それよりも、聖女としての価値を一笑に伏されたダメージが大きかった。軽い人間不信とでも言えばいいのだろうか……。お父様達は私を責めることはしなかったけれど、やはり申し訳ないという思いが強くなってしまう。

 なにせ、公爵家との縁談が反故になったのだから……長女としては許されないことだ。これからは、もっと慎重に進めた方が良いのかもしれない。

「ねえ、アルウェン。今後の私の予定はどうなっているか、聞かせてもらえる?」

「はい、お嬢様。予定では1週間後に大規模な舞踏会が王宮内で予定されております。王族の方々も出席されるようでございますので……レイカールト家としては、非常に有意義な催し物にはなるかと思われますが……」


 アルウェンは私に遠慮しているような素振りを見せていた。きっと、私に気を使っているのでしょうね。ありがたいことだけれど、それは意味を成さないわ。

「なら、その催し物には参加した方が良さそうね。準備をしておくわ、ありがとうアルウェン。教えてくれて」

「お嬢様……はい、それでは準備について、お手伝い申し上げます!」

「ありがとう、よろしく頼むわね」


 王族の方々が出席されるのであれば、伯爵家として出ないわけにはいかない。最低限の礼儀というものがあるから。気分的にはとても、参加できる状態ではないけれど……仕方ないわね。私は運命の出会いがあることを祈って、1週間後のパーティーを楽しみにすることにした。人生、そんなに上手くいかないけれど、信じなければ何事も引き寄せられないからね。
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