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21話 オボンヌ宮殿 その1【グレス王子視点】
しおりを挟む「今はどんな状況だ? アンネ、リーア!」
オボンヌ宮殿を目指して一直線に向かって来る気配を感じているのはアンネだ。先ほどから、神経をすり減らしながら侵入者の警戒に当たっている。父上や大臣参謀等は既に玉座の間に避難してもらっている。玉座の間の守りを最大限に引き上げて。
「グレス王子殿下……! 宮殿の周囲にいる騎士団は敗北していっているようですわ!」
「申し訳ありません、グレス王子殿下! やはり、私の能力では……全ての窓まではバリア展開が間に合いません!」
「ちいっ、そうか……! まあいい、そのまま進めてくれ」
「畏まりました!!」
結界内の動きをサーチしているアンネと、正面と裏口、さらに全ての窓へのバリア展開を進めるリーア。リーアに関しては時間を掛ければ目的を達成できるかもしれないが、それではあまりに遅すぎる。
オボンヌ宮殿の外に居る精鋭の騎士団たちがやられているようでは猶更だ。残りの侵入者二人が、バリアが張られていない窓を見つけ、侵入してくる確率の方が高いだろう。とにかく今は、リーアのバリア展開だけだ頼りであった。
「そういえば……新しく入って来た、侵入者はどうしている? 倒されたのか?」
オボンヌ宮殿に向かって来た二人の侵入者に、注視しすぎていたかもしれない。この二人は、アンネの意識を逸らす為の囮かもしれないのだから。私はアンネに新たな侵入者を注視するように指示を出す。すると、しばらくもしない間に、アンネの顔色が変わった。
「どうしたのだ、アンネ?」
「こ、これは……どういうことでしょうか……!」
「なんだ、何が起きている!?」
結界内の出来事は、現在はアンネしか分からない。その彼女の表情を見て、私は相当な事が起きていると予想していた。
「どうやら、一番最初に侵入した3人の侵入者は倒されたようです。状況から察するに新しく壊れた門から入って来た連中が倒したようですわ!」
緊急事態を強く意識するようになったからか、アンネの感覚も相当に正確になってきたようだ。気の流れから、どの人物が倒したのかまで予測できるか。しかし……後かは入って来た者達は、バロウィンの手の者とは関係ないのか
? もっとも、最初の5人の賊もバロウィンの手の者と決まったわけではないが……。
しかし、騎士団ですら歯が立たなかった侵入者の内の3人を倒すとは……これは、利用できるかもしれんな。どういう連中かは不明だが、残りの賊も始末してもらおう。そいつらを捕らえるのはその後で良い。
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