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20話 助けに向かう その3
しおりを挟む「覚悟しろ! 賊め!」
「待て、お前たち! 俺たちはレッドブラックの面々だ! 侵入者がオボンヌ宮殿に現れたと聞いたので、助けに来たんだ!!」
カインさんの叫び声にも近い発言にも、全く聞き入れる素振りのない兵士や騎士たち。おそらくは、宮殿内に居る聖女が私達を新たな侵入者と判断したんでしょうね。そして、その進言を受けてグレス王子殿下が、新たな侵入者の討伐を優先するようにしたといったところかしら。
当たらずとも遠からずって感じがする。私だったら、結界内にいる人物の特定までは流石に無理でも、敵意の区別は付けられる。それで侵入者かどうかの判断は可能なはず……新たな聖女はそこまでの領域には達していない?
そうなると、オボンヌ宮殿のすべての出入り口にバリアを展開することも出来ないかも……。私は嫌な予感がしていた。
「カイン、話していても埒が明かないわ!」
「わかった!」
そうこうしている間に、カインさんとライズさんは宮殿の兵士たちと交戦を始めていた。侵入者よりも弱い彼らはどんどんやられていく。おそらく二人からすれば、大した相手ではないので、命を狙わずに倒すことについて、先ほどの侵入者よりは勘単に行うことが出来たはず。
しかし、数が多い……この数の配置を指示したのがグレス王子殿下なのだとしたら……とんだミスになるわね。新しい侵入者を排除するよりも、オボンヌ宮殿の守りを固めるべきだったのよ。
「カインさん、ライズさん! 宮殿へ急ぎましょう! 心配です!」
「というより、こっちも色々と不味いんだけど……!」
確かに既に、兵士や騎士たちを倒しちゃってるしね……後々、問題になりそうだけど。でも、そこはレッドブラックの名声があるし、オボンヌ宮殿の侵入者と倒せば、なんとでもなるだろうし。もしも、オボンヌ宮殿に向かった2人の侵入者がグレス王子殿下や国王陛下を殺したりなんかすれば、大変なことになるわ。
敵の目的が王国の転覆なのだとしたら、アルガス王子殿下も殺されてしまうかもしれないし。
「でも! オボンヌ宮殿には2人の侵入者が向かっているのは確実なんです! 宮殿にいる聖女が能力不足の場合、全ての出入り口にバリアを張れていない可能性もあります!」
私の切実な叫びに、カインさんもライズさんも動きを止めた。あ、伝わったみたい……。
「そういうことか……よし、すぐに宮殿に向かうとしよう!」
「あとで弁解とか大変になるわよ! この状況で宮殿に向かったら……!!」
「人命を優先だ! 行くぞ、ライズ!」
「わかったわよ! ミシディア、行くわよ!」
「はいっ!!」
人命を優先……今日ほどこの言葉が活きたことはないと思う。とりあえず今の私達は、後先を考えずに進むことにした。
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