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16話 仲間 その1
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「と、言っても、俺たちで何かが出来るないようではないがな」
「えっ……?」
私とライズさんの部屋に勢いよく入って来たカインさんではあるけれど、すぐにオボンヌ宮殿に向かうとかそういう様子は見せていなかった。雰囲気的には私とライズさん、カインさんの3人でオボンヌ宮殿に加勢に向かってもおかしくはなかったのに。
「そうね……下手に今、宮殿付近に近づけば、私達も怪しまれる可能性があるわ」
そういうことか……私の代わりの聖女がおそらくは結界を展開しているだろうし、それに触れてしまったら面倒なことになりかねないわ。グレス王子殿下の性格だと、私まで賊の一人にするかもしれないし。
「しかし、ミシディアが最近まで働いていた場所でもある。侵入者によって怪我をしていないか等は、事前に調べられるかもしれないが、どうする?」
そっか……カインさんは、私の為に、いち早く情報を公開してくれたのね。う~~ん、どうだろう? オボンヌ宮殿にはあんまり良い思い出がないんだけど……。
アルガス第二王子殿下とか、何名かのメイドとかかしら? そこまで気に掛ける相手は居ないけど、だからと言って怪我をしてほしいと思う人も居ない。グレス王子殿下やその取り巻きも含めてね。
「侵入者のことなんですが……取り押さえることには、成功したんですか?」
ちゃんと準備をしていて、私以上の聖女の能力を有している人が居るなら、侵入者程度に遅れは取らないはず……。少なくとも、精鋭の騎士団だって居るんだし、王族や貴族が怪我をする事態にはならないと思うけど。
でも、やっぱり、元々働いていた場所だけに気にはなってしまう。誰かを守りたいという欲求よりは、以前に働いていた場所を、賊に好き勝手されるのが嫌なだけなんだけど。
「行ってみるか? ミシディア?」
「はい、許してもらえるのでしたら。私も結界が使えるので、遠くから察知するだけなら、そこまで怪しまれないと思いますし……」
「よし、決まりね。なら、すぐに出発しましょう」
「ああ、そうだな」
「すみません、カインさん、ライズさん……」
私はわがままに付き合ってくれる二人に感謝の意を表した。すると、私のお尻をライズさんが勢いよく叩いた。
「い、痛い……!」
「こんなことで、感謝しなくていいわよ。私達はもう、そこまで薄い関係でもないでしょう?」
「ライズさん……はいっ!」
ライズさんのとても嬉しい言葉に、私は涙が出そうになってしまった。オボンヌ宮殿に勤めていた時に、こんな言葉は聞いたことがなかったし。私は彼女に言われた通り、感謝の意は心の中に閉まっておくことにした。そのまま、足早に宮殿方向に向かうことにする。
「えっ……?」
私とライズさんの部屋に勢いよく入って来たカインさんではあるけれど、すぐにオボンヌ宮殿に向かうとかそういう様子は見せていなかった。雰囲気的には私とライズさん、カインさんの3人でオボンヌ宮殿に加勢に向かってもおかしくはなかったのに。
「そうね……下手に今、宮殿付近に近づけば、私達も怪しまれる可能性があるわ」
そういうことか……私の代わりの聖女がおそらくは結界を展開しているだろうし、それに触れてしまったら面倒なことになりかねないわ。グレス王子殿下の性格だと、私まで賊の一人にするかもしれないし。
「しかし、ミシディアが最近まで働いていた場所でもある。侵入者によって怪我をしていないか等は、事前に調べられるかもしれないが、どうする?」
そっか……カインさんは、私の為に、いち早く情報を公開してくれたのね。う~~ん、どうだろう? オボンヌ宮殿にはあんまり良い思い出がないんだけど……。
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「侵入者のことなんですが……取り押さえることには、成功したんですか?」
ちゃんと準備をしていて、私以上の聖女の能力を有している人が居るなら、侵入者程度に遅れは取らないはず……。少なくとも、精鋭の騎士団だって居るんだし、王族や貴族が怪我をする事態にはならないと思うけど。
でも、やっぱり、元々働いていた場所だけに気にはなってしまう。誰かを守りたいという欲求よりは、以前に働いていた場所を、賊に好き勝手されるのが嫌なだけなんだけど。
「行ってみるか? ミシディア?」
「はい、許してもらえるのでしたら。私も結界が使えるので、遠くから察知するだけなら、そこまで怪しまれないと思いますし……」
「よし、決まりね。なら、すぐに出発しましょう」
「ああ、そうだな」
「すみません、カインさん、ライズさん……」
私はわがままに付き合ってくれる二人に感謝の意を表した。すると、私のお尻をライズさんが勢いよく叩いた。
「い、痛い……!」
「こんなことで、感謝しなくていいわよ。私達はもう、そこまで薄い関係でもないでしょう?」
「ライズさん……はいっ!」
ライズさんのとても嬉しい言葉に、私は涙が出そうになってしまった。オボンヌ宮殿に勤めていた時に、こんな言葉は聞いたことがなかったし。私は彼女に言われた通り、感謝の意は心の中に閉まっておくことにした。そのまま、足早に宮殿方向に向かうことにする。
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