聖女だけど追放されました!~街で人々の為に商売始めたんだけど、王国の防衛は大丈夫ですよね?~

ルイス

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9話 1000ルピーにしたけど……

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「よっしゃあ! これで、エクストラダンジョンへ向かえるぜ!」

「ミシディアさん、ありがとう!」

「いえ、どういたしまして」


 冒険者のお客さんからは称賛の嵐で正直、怖くなってくる……私がしていることと言えば、バリア展開と回復魔法くらいなのに。1000ルピーとい価格帯で商売を始めても、お客さんから文句を言われることはなかった。むしろ、ある程度有名な冒険者からは、「そんなに安くていいのか?」と言われる始末で……。


 私、そんなに安く設定した覚えはないんだけど。平均的な宿屋の1泊の代金の2倍に相当する金額だ。冒険者の社会情勢はよく分からないけれど、宿屋に泊まっている人々も多いはず。私の価格設定は、効果に対して高くはないと考えればいいのかしら?



 そんな声も聞いたことはあるし、現にお客さんは満足しているみたいだし……私が悩んでいても、仕方のない部分なのかもしれないけれど。とにかく私は、並んでいるお客さんの要望を満たすことに集中することにした。




-------------------------------------------------




「ミシディア、調子はどうかしら?」

「あ、ライズさん」


 お客さん達の列が一段落ついた時、赤いスリットドレスの女性が私に近づいて来た。その派手な衣装に、私は視線を合わせなくても、ライズさんだと分かってしまった。今日はカインさんは一緒じゃないみたいね。


「調子は、ぼちぼちですかね……」

「ふふ、随分、繁盛しているみたいに見えたけれど? なるほど、あなたにとっては、ぼちぼちなのね」

「い、いえ……決してそういうわけでは……!」


 正直、1000ルピーの金額でもお客さんの入りが変わらなかったことに驚きを隠せない。私は素直に打ち明けることにした。


「1000ルピーっていう額に設定はしたんですけど……正直、この金額が合ってるのか、不安ではあります」


「でも、今のところクレームは来ていないんでしょう?」

「そうですね……特に来ていないと思います」


 感謝の声はたくさん貰えるけど、クレームの声は今のところ一つもないかな。


「それなら、あなたが選んだ価格設定に皆が満足しているということよ。自信を持っても良いと思うわ」

「ありがとうございます……ライズさんから見ても、私の価格設定は適正でしょうか?」


 最強クラスの冒険者である彼女の意見は、とても参考になると思う。私は思い切って、聞いてみることにした。


「私はさらに、2~3倍くらいにしても問題はないと思うけど」


「に、2~3倍ですか……!?」


 予想外のライズさんからの返答に私は驚きを隠せなかった。2000ルピーや3000ルピーにしても問題ないってこと……? そんな価格にしたら、1日の売り上げがどれ程になるのか想像も尽かない。


「ええ、あなたの能力はそれだけの価値があると思うわ」

「そ、そうですか……ありがとうございます……」


 なんて形容したらいいのか……私はライズさんに賞賛されて、夢見心地な気分になっていた。


「でも、それだけに心配なのよね。プラティーン王国の方が……」


 ライズさんの最後の一言は私には理解することが出来なかった。私への言葉というより、独り言のようだったから。


 プラティーン王国が心配? 前にもそんなこと言っていたわよね。あそこは新しい聖女が二人も居るし、騎士団だって居るし、問題は起きないとは個人的には思う。

 でも、レッドブラックのメンバーであるライズさんの言葉は、非常に重みのあるものだった。私も無意識の内に心配になっていたし。
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