9 / 22
9話 1000ルピーにしたけど……
しおりを挟む
「よっしゃあ! これで、エクストラダンジョンへ向かえるぜ!」
「ミシディアさん、ありがとう!」
「いえ、どういたしまして」
冒険者のお客さんからは称賛の嵐で正直、怖くなってくる……私がしていることと言えば、バリア展開と回復魔法くらいなのに。1000ルピーとい価格帯で商売を始めても、お客さんから文句を言われることはなかった。むしろ、ある程度有名な冒険者からは、「そんなに安くていいのか?」と言われる始末で……。
私、そんなに安く設定した覚えはないんだけど。平均的な宿屋の1泊の代金の2倍に相当する金額だ。冒険者の社会情勢はよく分からないけれど、宿屋に泊まっている人々も多いはず。私の価格設定は、効果に対して高くはないと考えればいいのかしら?
そんな声も聞いたことはあるし、現にお客さんは満足しているみたいだし……私が悩んでいても、仕方のない部分なのかもしれないけれど。とにかく私は、並んでいるお客さんの要望を満たすことに集中することにした。
-------------------------------------------------
「ミシディア、調子はどうかしら?」
「あ、ライズさん」
お客さん達の列が一段落ついた時、赤いスリットドレスの女性が私に近づいて来た。その派手な衣装に、私は視線を合わせなくても、ライズさんだと分かってしまった。今日はカインさんは一緒じゃないみたいね。
「調子は、ぼちぼちですかね……」
「ふふ、随分、繁盛しているみたいに見えたけれど? なるほど、あなたにとっては、ぼちぼちなのね」
「い、いえ……決してそういうわけでは……!」
正直、1000ルピーの金額でもお客さんの入りが変わらなかったことに驚きを隠せない。私は素直に打ち明けることにした。
「1000ルピーっていう額に設定はしたんですけど……正直、この金額が合ってるのか、不安ではあります」
「でも、今のところクレームは来ていないんでしょう?」
「そうですね……特に来ていないと思います」
感謝の声はたくさん貰えるけど、クレームの声は今のところ一つもないかな。
「それなら、あなたが選んだ価格設定に皆が満足しているということよ。自信を持っても良いと思うわ」
「ありがとうございます……ライズさんから見ても、私の価格設定は適正でしょうか?」
最強クラスの冒険者である彼女の意見は、とても参考になると思う。私は思い切って、聞いてみることにした。
「私はさらに、2~3倍くらいにしても問題はないと思うけど」
「に、2~3倍ですか……!?」
予想外のライズさんからの返答に私は驚きを隠せなかった。2000ルピーや3000ルピーにしても問題ないってこと……? そんな価格にしたら、1日の売り上げがどれ程になるのか想像も尽かない。
「ええ、あなたの能力はそれだけの価値があると思うわ」
「そ、そうですか……ありがとうございます……」
なんて形容したらいいのか……私はライズさんに賞賛されて、夢見心地な気分になっていた。
「でも、それだけに心配なのよね。プラティーン王国の方が……」
ライズさんの最後の一言は私には理解することが出来なかった。私への言葉というより、独り言のようだったから。
プラティーン王国が心配? 前にもそんなこと言っていたわよね。あそこは新しい聖女が二人も居るし、騎士団だって居るし、問題は起きないとは個人的には思う。
でも、レッドブラックのメンバーであるライズさんの言葉は、非常に重みのあるものだった。私も無意識の内に心配になっていたし。
「ミシディアさん、ありがとう!」
「いえ、どういたしまして」
冒険者のお客さんからは称賛の嵐で正直、怖くなってくる……私がしていることと言えば、バリア展開と回復魔法くらいなのに。1000ルピーとい価格帯で商売を始めても、お客さんから文句を言われることはなかった。むしろ、ある程度有名な冒険者からは、「そんなに安くていいのか?」と言われる始末で……。
私、そんなに安く設定した覚えはないんだけど。平均的な宿屋の1泊の代金の2倍に相当する金額だ。冒険者の社会情勢はよく分からないけれど、宿屋に泊まっている人々も多いはず。私の価格設定は、効果に対して高くはないと考えればいいのかしら?
そんな声も聞いたことはあるし、現にお客さんは満足しているみたいだし……私が悩んでいても、仕方のない部分なのかもしれないけれど。とにかく私は、並んでいるお客さんの要望を満たすことに集中することにした。
-------------------------------------------------
「ミシディア、調子はどうかしら?」
「あ、ライズさん」
お客さん達の列が一段落ついた時、赤いスリットドレスの女性が私に近づいて来た。その派手な衣装に、私は視線を合わせなくても、ライズさんだと分かってしまった。今日はカインさんは一緒じゃないみたいね。
「調子は、ぼちぼちですかね……」
「ふふ、随分、繁盛しているみたいに見えたけれど? なるほど、あなたにとっては、ぼちぼちなのね」
「い、いえ……決してそういうわけでは……!」
正直、1000ルピーの金額でもお客さんの入りが変わらなかったことに驚きを隠せない。私は素直に打ち明けることにした。
「1000ルピーっていう額に設定はしたんですけど……正直、この金額が合ってるのか、不安ではあります」
「でも、今のところクレームは来ていないんでしょう?」
「そうですね……特に来ていないと思います」
感謝の声はたくさん貰えるけど、クレームの声は今のところ一つもないかな。
「それなら、あなたが選んだ価格設定に皆が満足しているということよ。自信を持っても良いと思うわ」
「ありがとうございます……ライズさんから見ても、私の価格設定は適正でしょうか?」
最強クラスの冒険者である彼女の意見は、とても参考になると思う。私は思い切って、聞いてみることにした。
「私はさらに、2~3倍くらいにしても問題はないと思うけど」
「に、2~3倍ですか……!?」
予想外のライズさんからの返答に私は驚きを隠せなかった。2000ルピーや3000ルピーにしても問題ないってこと……? そんな価格にしたら、1日の売り上げがどれ程になるのか想像も尽かない。
「ええ、あなたの能力はそれだけの価値があると思うわ」
「そ、そうですか……ありがとうございます……」
なんて形容したらいいのか……私はライズさんに賞賛されて、夢見心地な気分になっていた。
「でも、それだけに心配なのよね。プラティーン王国の方が……」
ライズさんの最後の一言は私には理解することが出来なかった。私への言葉というより、独り言のようだったから。
プラティーン王国が心配? 前にもそんなこと言っていたわよね。あそこは新しい聖女が二人も居るし、騎士団だって居るし、問題は起きないとは個人的には思う。
でも、レッドブラックのメンバーであるライズさんの言葉は、非常に重みのあるものだった。私も無意識の内に心配になっていたし。
15
お気に入りに追加
3,208
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる