聖女だけど追放されました!~街で人々の為に商売始めたんだけど、王国の防衛は大丈夫ですよね?~

ルイス

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7話 宮殿の事情 その1 視点混在

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【グレス王子殿下視点】


「よし、平民を追放して、随分と風通しが良くなったな」


 私は、公爵令嬢のアンネ・クリストファーと、伯爵令嬢のリーア・シャルテナに話しかける。二人はミシディア・ファブニールなどとは違い、歴とした貴族の血を引く者達だ。そして……聖女の能力を有している。


「そうですわね、グレス王子殿下。由緒正しきオボンヌ宮殿に民間人が入るなど、本来、あってはいけないことですわ」

「確かに……アンネ様の言う通りかと存じます」


 アンネは自信に満ち溢れた表情をしている。貴族とは常に優雅で余裕に満ち溢れているものだからな。薄汚い平民風情との格の違いはこういう言動に出て来るというものだ。


「さてさて、二人の仕事は事前に伝えてはいるが……まずは、宮殿周辺の結界の展開だ。主に、賊の侵入を防ぐ狙いがある。このくらいは余裕だろう?」


 私の問いかけに、アンネは豊満な胸を強調するように答えた。


「当然ですわ、グレス王子殿下。下等な平民風情との格の違いを見せつけてやります」

「ふふふ、頼もしい限りだ」


 言葉にこそ出さなかったが、リーアも当然のように頷いていた。宮殿の守りは聖女の仕事としては、初歩の初歩だからな。由緒正しき家系に生まれた彼女らが出来ないはずはないが。


 薄汚い平民である、ミシディア・リンクスを追放したのは正解だった。私は余裕な態度のアンネとリーアの二人を見ながら、そう確信していた。




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【ミシディア視点】



「ふんふふ~~~ん」


 私は冒険者ギルドの隅で、鼻歌混じりにステップを刻んでいた。本日もお客さんの数は十分なものだった。それを見越したのか、1か月という期限を待たずして、正式にギルドの役員としての採用が決まったのだから。


 私がギルドで働き始めてから1週間程度……まさか、こんなに早く、正式採用になるなんて思わなかった。非常に嬉しいことではあるけれど、独立をする可能性もギルドには念の為に伝えている。客商売をする以上は、自分の店を持ちたいという思いは強いからね。


 これもレッドブラックの二人のおかげかもしれない。カインさんとライズさん……冒険者界隈では非常に影響力の強い二人だけに、私のことを軽く宣伝してくれるだけでも、集客力としては抜群なわけで……。


 お客さんも増えて来たし、そろそろサービス期間を終了させないといけないわね。う~ん、今後はどのくらいの金額で請け負うことにしようかしら? 他の似たような商売の相場とか、考えた方がいいのかな。意外にも頭を悩ませる課題でもあった。



 
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