聖女だけど追放されました!~街で人々の為に商売始めたんだけど、王国の防衛は大丈夫ですよね?~

ルイス

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4話 ギルドの聖女 その2

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「ええっと……お客さんですか?」


 かなり有名な冒険者パーティだと思うけど、バリア展開を希望していたら悪いと思って、私は念の為に聞いてみた。すると、真っ赤なドレス姿の女性が首を横に振る。ロングスカートだけど、凄い切れ込みのスリットが幾つか付いている……男性の目線はそこにくぎ付けでしょうね。


「ごめんなさい、休憩中のようね」


 赤いとんがり帽子も被った、なんとも派手な女性だったけど、とても柔らかな物腰だった。どこかの王子様や兵士様に見せたいくらいに。私もなんだか恐縮してしまった。


「い、いえ……バリア展開や、回復希望というわけじゃないんですね?」

「ええ、そうね。ほら、カイン……あなたが先走って話しかけるから、変な誤解が出ているでしょ?」


 最初に私に話しかけた男性は隣に立っている。黒い髪の毛を真ん中で分けているけれど……細身だけど筋肉質な外見、とても二枚目な人だった。なるほど、カインさんね。


「ああ、済まない。君の言葉がふと聞こえたのでな。悪いとは思ったが、ついつい声を掛けてしまった」


「いえ、気になさらないでください」


 カインって呼ばれた人も物腰は柔らかかった。自然と私は肩の力を抜く。

「私たちは冒険者パーティなの。こっちがリーダーのカイン。私はライズ、よろしくね」

「よろしくお願いします。ミシディア、と申します」


 私はソファから立ち上がり、二人に挨拶をすると同時に握手を交わした。カインさんとライズさんね……2人とも私より少し上くらい? 20代前半くらいかしら?


「ミシディア……その名前、聞き覚えがあるな」

「ええ、おそらくオボンヌ宮殿に行った時よ。確か……王都セオガルの国家機関に勤めている聖女の名前だったはず。もしかして、あなたが……?」


 意外なことに私は二人から、名前を知られているようだった。確かに、王都セオガルの聖女としては有名かもしれないけれど、普通、個人名までは出回らないような気がする。聖女っていうワードが先走りするはずだから。彼らは有名な冒険者だと思うけど、その関係でオボンヌ宮殿にも出入りしていて、そこで知ったということかしら?


「はい、そうですけど……あはは、まあ、色々ありまして」

「色々か……」


 そう言いながらカインさんは周囲を見渡した。聞き耳を立てている人が居ないかをチェックしているのかな? いや……そんな感じじゃない。


「護衛も兵士も同行していないのか?」

「あ、えっと……」


 流石の洞察力ね……修羅場を潜っている数の差って言うのかな? 二人は予想は付いているみたいだけれど、敢えて私からの言葉を待っていてくれているみたいだった……。
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