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1話 アーチェとネプト その1

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 私達は様々な困難の元、一緒になることが出来た。

「アーチェ、身体の方は大丈夫か?」

「ええ……大丈夫よ、ネプト。問題ないわ」


 私達が辺境地の専用の屋敷に住むようになって1年以上が経過していた。その間、中央には戻れなかった。ネプトは元国王陛下という肩書きだけれど、私と一緒になる上でノーム家の姓に変わったのだ。彼はもう王家とは関係のない人間になっている。

 現国王陛下であるレメゲット様は、新しい姓を与えてくれる予定だったけれど、その予定も流れてしまった。私達は便宜上はノーム伯爵家の人間という立ち位置だ。

「未開拓地の経営や辺境地の経営は想像以上にきつかったな……」

「そうね……ネプトでもキツイんだから、私はもっとキツかったわ……」


 最初は現場監督に怒られてばかりだった。なんとか仕事について行けるようになるまで、半年以上は掛かったかと思う。ネプトは元々、国王陛下をしていた要領なのか、それ程の失態を見せてはいなかったけれど。

「しかし……私達がこの屋敷に住んで、1年以上になるんだな」

「そうね、時が経つのは早いものだわ」


 この1年の間で、マクスレイ王国の中央は大分落ち着いて来たと聞いている。一番の問題はスザンヌ様の家系との交渉だったようだけれど……ネプトの弟であるレメゲット国王陛下の頑張りでなんとか、大事には至らなかったようだ。

「そろそろ仕事にも慣れて来た。アーチェも弟や父上には会いたいんじゃないのか?」

「そうね……流石にそろそろ会いたくなってくるわ」

「ふむ……私も立場上はノーム家の人間だしな。そろそろ挨拶回りを始めようか」

「挨拶回り……? でも、大丈夫かしら……」

 私達は仕事に慣れて来たらお世話になった人々に挨拶回りをしようと決めていた。確かに仕事には慣れてきたけれど……今のタイミングで行って大丈夫だろうか?

「私達はこの1年以上、子供を作ることはしなかった。ずっと避妊していたからな……まあ、それが免罪符になるとは思っていないが、そろそろ子供を儲けても良いかも含めて確認をする必要があるだろう? レメゲットにも会う必要があるだろうな」

「子供のこと? まあ、確かに……そうかもしれないわね」


 周囲が許してくれるのなら、やはりネプトとの子供は欲しいところだ。その確認の為の挨拶回りと考えれば……今の時期に行うのは正解かもしれない。否定されたら、その時に止めれば良いのだし。

 お父様、フォルセ、レメゲット様、ニーナやウォーレス……そしてスザンヌ様とウィンスタート。挨拶回りをしたい人々は多岐に渡っていた。私達の間に子供を作って良いかどうか、その答えを聞く以外にも単純に会いたい。

「ネプト、挨拶回りはしましょう。もしも否定されれば、その時に中断すれば良いのだし」

「そうだな。恐れているだけでは前に進むことは出来ない。思い切って中央に出向いてみようじゃないか」

「ええ、そうね」

「まあ……念のため、正体がバレないように変装はしてだな……」


 肝心なところでネプトは弱気だった……まあ、分からなくはないのだけれど。1年以上振りの中央への遠征か……楽しみでもあり、怖くもある内容だった。
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