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59話 ウォーレスとニーナのその後 その2
しおりを挟む私とニーナ、ウォーレスの3人は近くのレストランに入ることにした。目的は私の悩みを打ち明けるためと……雑談をする為だ。私達は幼馴染として過ごした期間が長いため、こういう場所で適当な雑談をすることも慣れている。
変に緊張するとかはない。
「アーチェあなた……兵器開発部門で働くことになったの?」
「その部分が悩みであって……私がそんな中央で働いて大丈夫なのかなって……あと、ネプト様も」
「そうね……他の貴族の反発があるかもしれないわよ。今からでも大臣に言って変えて貰った方が良いかもしれないわね」
ニーナの言うことはもっともかもしれない。ただでさえ、兵器開発部門は危険が伴うところだ。爆発事故とかだって起きるだろうし。それに、ネプト様はともかく、私が教えられて出来るようになるとは思えない。
「何か良い働き口はないかしらね……ウォーレス?」
「そうだな……辺境地開発の管理部門で働くとかは良いんじゃないか? 批判を避ける意味でもね」
「なるほど、辺境地開発か……」
確かにウォーレスの言う通り、そちらの方が目立たないだろう。やはり中央で働くよりは田舎で働いた方が良いだろうしね。ネプト様だって元国王という立場になるのだし……。
「まあ、その辺りはネプト様とゆっくり考えればいいじゃない」
「そうね、そうしてみるわ」
ニーナやウォーレスに相談するのは良いけれど、あくまで最終的な判断を下すのは私だ。良く考えて、他の人も相談して決めないとね。
「それにしても……私としては、ネプト様への傷害罪が軽減されたのが信じられないのよ。一体、何があったのか聞いていない?」
「ああ、そのこと……」
ネプト様への傷害罪というのは例の教会での事故のことだろう。危うくネプト様はあの時、死にかけたのだ。その原因を作ったのがニーナで……本来だったら、相応の罪が科せられるはずだった。
「最低でも爵位を剥奪になるかと思っていたわ……でも、それも免除された。一体、どうなっているの? アーチェは何か聞いていない?」
「ネプト様が今回の件の責任を取って退位されるから、それに関連してあなたの罪が軽減されたのだと思うわ」
「何それ? ネプト様が元国王になろうが、私の罪とは関係ないと思うんだけど……だって怪我をさせた時は王子殿下だったわけだし……」
ニーナの反応は正しいけれど、ネプト様も自分の周りの身辺整理を行ったつもりなのだと思う。その中で、ニーナとウォーレスの刑についても減刑という形を取ったのだろう。まあ、その要因は私になるけれど。
「……アーチェにはお礼を言わなければならないみたいね」
「さあ、何のことかしら? 意味が分からないわ」
「ふふ、まあどうでも良いけれど……」
私達はその後、適当な雑談を繰り返しながらレストランの食事を頂くことにした。気のせいかいつもよりも美味しく感じる。これも少し、悩みが解決に向かっている証拠なのかしら?
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