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57話 選択 その2
しおりを挟む「な、なに……!? 国王を退位するだと……?」
「そういうことだ、アルダー。私は自分の犯してしまったことへの償いとして、自らの地位を退こうと思う」
ネプト様の決意を聞いた、大臣のアルダー様はなんとも言えない表情になっていた。頭ごなしに否定をする気はないのだろう。
「本気なのか……?」
「ああ、本気だ。今の私に国王としての責務を全う出来るとは思えない。この地位は弟のレメゲットに譲ろうと思っている」
「レメゲットを国王にか……」
アルダー様は非常に悩んでいるようだ。レメゲット様は第二王子殿下だったお方だ。今は兵器開発部門の総責任者を担っているはずだけれど。まだ、21歳と若いけれど人望のあるお方だと伺っている。
「確かにレメゲットならば、ネプトの代わりとしては十分だろう。私達、大臣がサポートすることで国の立て直しも出来る可能性は高い」
「済まないアルダー……まだ、大して時間が経過していないのに、退位などという言葉を口にしてしまって……」
「まったく、手の掛かる甥だ。まあ、今に始まったことではないがな。自らの愛を貫くつもりか」
「ああ、そういうことになる」
アルダー様は私の方向に視線を合わせた。「やれやれ」と小さく溜息を吐いていた。
「いいだろう……ネプト。お前の意志を尊重し、国王は退位という方向で調整してみよう」
「ありがとう、アルダー。いや、叔父上」
「いまさらその呼び名は照れてしまうな……まったく。ただし、お前には国家の要職に就いてもらうからな。兵器開発室室長あたりから始めてもらうとするか。同時に、アーチェ嬢にも同じ部門で働いてもらうぞ」
「アルダー様……!」
兵器開発部門は確か、宮殿から離れた場所にあったはず。そこの責任者であるレメゲット様が居なくなるなら、確かに穴埋め要因は必要になるけれど……まさか、私達を指名してくれるなんて思わなかった。これは、アルダー様なりの優しさなのではないだろうか。
「もちろん良いことばかりではないはずだ。元国王が室長として働くことになれば、様々な噂が広まるだろう。その噂に耐えられる覚悟はあるんだろうな?」
「ああ、もちろんだ。アーチェと一緒になれるという喜びに比べれば、そのくらいの噂、大したものではない」
「ほう、言うじゃないか……アーチェ嬢もそれで大丈夫か?」
「はい、アルダー様……お気遣いありがとうございます」
「ふむ……」
話はスムーズに進んでいる気がする。もちろん実際は超えるべき壁が大きいのだろうけれど。でも、私とネプト様の二人であればきっと超えられるはずだ。私はそのように確信していた……。
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