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56話 選択 その1
しおりを挟む「アーチェ……私はどうしたら良いと思う?」
「ネプト様……申し訳ありません。今の私は側室教育中の身……正しい回答を出せる身ではないと思っています」
私はネプト様の側室になることを受けれ入れてから、宮殿内に住むようになっている。私の部屋にネプト様が来ているのだ。かなり悩んだ様子で……。仕方ないのかもしれない、スザンヌ様の一件は彼の精神に、相当なダメージを与えたと思うから。
「私が正室であるスザンヌの気持ちをもっと考えていれば、こんなことにはならなかっただろう。全ては私の責任だ。王妃不在の国王か……ふはは、他国が知ったらどのように思うかな」
「ネプト様……」
「いや、その前に貴族や国民からのバッシングを受けることになるだろう。そればかりは仕方ないか……」
ネプト様は本当に疲れているようだった。私は気の利いた言葉を掛けられないのが悔しくてしょうがない。今の彼にどういう言葉を掛ければ通じるのか分からないのだ。なんとか力になってあげたいけれど……。
「ネプト様、今は捜索隊からの報告を待った方が良いのではないでしょうか? その後のことを今考えても仕方ないと思いますが」
「アーチェの言うことはもっともだが、私はスザンヌをこの国に戻したいとは考えていないのだ。彼女も一生戻って来ないつもりで出て行っただろうからな。アルダーはスザンヌが居なくなれば色々と大変だと言っていたが、無理矢理連れ戻す方が危険な例もある」
確かにそれは正しいのかもしれない。スザンヌ様一人だけならともかく、護衛のウィンスタートまで居るのだから。こちら側の人間……最悪の場合、ネプト様に危害が加えられないとは限らないのだ。
ウィンスタートは必死でスザンヌ様を守ろうとするだろうし、その時に捜索隊にも被害が出るだろう。
ネプト様はそういうところも懸念されているに違いない。
「ネプト様……それではこういう選択をするのは如何でしょうか?」
「アーチェ……? どういう意味だ?」
「失礼ながら申し上げます。大臣のアルダー様がスザンヌ様を連れ戻そうとしているのは、ネプト様がいらっしゃるからです」
「そ、それは確かにそうだな……まあ、スザンヌ派を大人しくさせる狙いが大きいだろうが……」
「それならば、ネプト様が国王陛下を退位されるとどうなるでしょう? スザンヌ様を無理に連れ戻す意味合いは減るかと思われますが……」
「アーチェ……! な、なるほど! その手があったか……!」
ネプト様が国王陛下を退位されるとなると、私も側室ではなくなる。でも、多少の罪滅ぼしにはなるかもしれない。スザンヌ様を悩ませ、国から逃亡させたことに対する罪滅ぼしだ。
完全に新しい国王陛下と王妃様が選定されれば、無用な反乱を招く心配も軽減されるはずだ。スザンヌ様はもう、この国には戻らない方が良いと思う。彼女は彼女なりの幸せを見つけて欲しいと思うし。私もネプト様との幸せを模索していくつもりだから……。
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