幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
上 下
43 / 60

43話 新たな一歩

しおりを挟む

 私とフォルセ、ネプト様の3人は、ジョンの墓参りに来ていた。教会の近くに埋葬されたということになっているけれど、張りぼてでしかない。

 ただ、思い出の中のジョンにはもう会うことは出来ないので、その弔いという意味を込めている。フォルセも付き合ってくれたのは嬉しかった。


「フォルセ、ありがとう。お墓参りに付き合ってくれて」

「何を言っているんですか、アーチェ姉さま。ここまで来ているんですから、喜んで付き合いますよ」

「本当にありがとうね」


 前から思っていたけれど、フォルセは16歳とは思えない性格をしている。ノーム伯爵家の次期当主ということもあり、精神年齢は私よりもずっと高いと言えるだろうか。姉弟で話すときくらい、もっと砕けた会話をしても良いはずなのに、フォルセはそれすら行わないのだ。

 フォルセの婚約者はわりとすぐに見つかりそうね。私は……どうなるんだろう。


「ネプト様、これからのことなんですが」

「ああ、私は一旦、ウォーレスとニーナの処罰に注視しようと思う」

「あ、左様でございますか……」

「アーチェ、君は直接あの二人には関わらない方が良いだろう。結果報告は後程するので、私に任せておいてくれ」

「か、畏まりました……」


 ネプト様は私を単純に心配してくれているのと同時に、距離を置こうと言っているようにも感じられた。ウォーレス、ニーナと距離を置くのは当然だけれど、ネプト様とも距離を置くことになるのよね。

 仕方ないことだけれど……やはり少し、寂しい気持ちになってしまう。


「アーチェ姉さま、今度の舞踏会には是非、私と一緒に参加しましょう」

「フォルセ……?」

「きっと、アーチェ姉さまに相応しい人が見つかると思いますよ」

「あ、それは……」


 フォルセは本気で言っているようだ。やはり、私とネプト様が一緒になることには反対なのね。ここまであからさまだと、逆に清々しく感じてしまう。まあ、フォルセはそう思われることを前提でやっているのだろうけれど。

「フォルセ……なかなか、挑戦的だな。それでこそ、ノーム家の次期当主だ。将来が楽しみだよ」

「ありがとうございます、ネプト国王陛下。アーチェ姉さまのことは私に任せてくださいませ。国王陛下はスザンヌ様との愛を育み、次期国王陛下をお作りいただくのが先決でございましょう」

「ははははっ、まるで退路を断たれた気分だよ」


 ネプト様はフォルセの言葉に腹を立てている様子はなかった。逆に楽しんでいるまであるようだ。私とネプト様の関係は一旦、白紙に戻った。今回のジョンの墓参りを契機としてより鮮明になった形だ。

 今日で過去の遺産に決着をつけたのだから……今後、私達は新たな一歩を踏み出すことになる。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

処理中です...