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42話 ネプトの想い
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「フォルセ……お前の言いたいことはよく分かった」
「はい、ネプト様……それで如何でございますでしょうか?」
フォルセは本当にネプト様が断ってくれることを望んでいるようだ。彼からしても、ネプト様は昔から兄のように映っていたはずだけれど……それでも、先ほどの言葉を曲げるつもりはないということか。
何よりもフォルセのここまで真剣な表情は、今まで見たことがなかったから。
「私が意見を変えることは簡単だ、前の告白はなしにして欲しいというだけで終わりだからな」
「左様でございますね、ネプト様。それでは、それを実行に移していただけませんでしょうか?」
「フォルセ……」
ネプト様は無言になっていた。私への告白をなしにするのを躊躇っているのだろうと思うけれど……。
「あの、ネプト様……よろしいでしょうか?」
「どうかしたのか、アーチェ?」
「ネプト様は……その、告白の件について、破棄するお考えはあるのでしょうか?」
「そうだな……私も自分の我が儘を押し通し過ぎたかもしれない、と反省しているところだ」
私はネプト様をフォローするつもりで割り込んだのだけれど、意外にもネプト様はフォルセの意見に賛同しているようだった。
「で、では……私を側室として迎えるという話は……」
なしになってしまうのだろうか? 私はまだ、あの時の告白の答えを出したわけではないけれど。私の心の中では大きな胸騒ぎがしていた。
「寂れた教会に来れたタイミングだったのだし……側室の件を改めるには本当に丁度良い機会なのかもしれないな」
「ネプト様……そんな……」
私は正直に言って、彼と一緒になる選択肢を選ぶつもりだった。スザンヌ様とも会話が出来たのも大きいけれど、側室としてのルールに則り、共に過ごして行こうと……。
でも、ネプト様はフォルセの意見を聞いて考えを改めつつあるようだ。寂れた教会を背景として見ているのも、その選択に拍車を掛けているのかもしれない。
「アーチェ、私の方から告白しておいて、誠に申し訳ないのだが……側室の件は一旦、白紙に戻してくれないか?」
ネプト様からの無慈悲な言葉と言えるだろうか……国王陛下である彼からの言葉を否定することは、私には出来なかった。自然と涙が私の頬から流れ出てしまう……ネプト様には見られたくなかったけれど、こればかりはどうしようもなかった。
ウォーレスやニーナに引き続き、ネプト様までも私の元から去ってしまうのだろうか……それは想像以上に悲しいことだった。でも、伯爵令嬢でしかない私では、どうすることも出来ないだろう。
と、そんな風に考えていると……ネプト様が言葉を続けた。
「もう一度、初めから開始していこう。この寂れた教会で出会った時の私と君みたいに……側室の話はまた、時間を置いてからでも問題はないだろうしね」
「……ネプト様?」
悲しみからの光明が見えた瞬間だった。
「最初から始めるというのは、お言葉の通りと受け取ってもよろしいのでしょうか?」
「もちろんだよ、アーチェ。君さえ良ければだが……お互いに親交を深めていこうじゃないか」
「はい! よろしくお願いいたします……!」
「こちらこそ」
私の涙はいつの間にか、嬉し涙に変わっっていた。何年先になるか分からないけれど、ネプト様と一緒になるチャンスがあるということなのだから。それだけでも本当に喜ばしいことだったのだ。
「こんな落としどころでどうだろうか、フォルセ?」
「概ね問題ないかとは思いますが……お二人が親交を重ねている間に、アーチェ姉さまに貴族の恋人が出来たとしても仕方がない、という考えでよろしいでしょうか?」
「ああ、それで構わないよ」
「畏まりました、ネプト様。そういうことであれば、納得いたします」
フォルセの最後の質問がやや不穏ではあったけれど、ネプト様の言うようにいい感じの落としどころだったのではないだろうか? 寂れた教会の前でのリセット宣言というのも、運命を感じてしまうわ。
あとは……ジョンの墓参りに行かないとね。本人は死亡していないので、張りぼてのお墓になるんだろうけれど。
「はい、ネプト様……それで如何でございますでしょうか?」
フォルセは本当にネプト様が断ってくれることを望んでいるようだ。彼からしても、ネプト様は昔から兄のように映っていたはずだけれど……それでも、先ほどの言葉を曲げるつもりはないということか。
何よりもフォルセのここまで真剣な表情は、今まで見たことがなかったから。
「私が意見を変えることは簡単だ、前の告白はなしにして欲しいというだけで終わりだからな」
「左様でございますね、ネプト様。それでは、それを実行に移していただけませんでしょうか?」
「フォルセ……」
ネプト様は無言になっていた。私への告白をなしにするのを躊躇っているのだろうと思うけれど……。
「あの、ネプト様……よろしいでしょうか?」
「どうかしたのか、アーチェ?」
「ネプト様は……その、告白の件について、破棄するお考えはあるのでしょうか?」
「そうだな……私も自分の我が儘を押し通し過ぎたかもしれない、と反省しているところだ」
私はネプト様をフォローするつもりで割り込んだのだけれど、意外にもネプト様はフォルセの意見に賛同しているようだった。
「で、では……私を側室として迎えるという話は……」
なしになってしまうのだろうか? 私はまだ、あの時の告白の答えを出したわけではないけれど。私の心の中では大きな胸騒ぎがしていた。
「寂れた教会に来れたタイミングだったのだし……側室の件を改めるには本当に丁度良い機会なのかもしれないな」
「ネプト様……そんな……」
私は正直に言って、彼と一緒になる選択肢を選ぶつもりだった。スザンヌ様とも会話が出来たのも大きいけれど、側室としてのルールに則り、共に過ごして行こうと……。
でも、ネプト様はフォルセの意見を聞いて考えを改めつつあるようだ。寂れた教会を背景として見ているのも、その選択に拍車を掛けているのかもしれない。
「アーチェ、私の方から告白しておいて、誠に申し訳ないのだが……側室の件は一旦、白紙に戻してくれないか?」
ネプト様からの無慈悲な言葉と言えるだろうか……国王陛下である彼からの言葉を否定することは、私には出来なかった。自然と涙が私の頬から流れ出てしまう……ネプト様には見られたくなかったけれど、こればかりはどうしようもなかった。
ウォーレスやニーナに引き続き、ネプト様までも私の元から去ってしまうのだろうか……それは想像以上に悲しいことだった。でも、伯爵令嬢でしかない私では、どうすることも出来ないだろう。
と、そんな風に考えていると……ネプト様が言葉を続けた。
「もう一度、初めから開始していこう。この寂れた教会で出会った時の私と君みたいに……側室の話はまた、時間を置いてからでも問題はないだろうしね」
「……ネプト様?」
悲しみからの光明が見えた瞬間だった。
「最初から始めるというのは、お言葉の通りと受け取ってもよろしいのでしょうか?」
「もちろんだよ、アーチェ。君さえ良ければだが……お互いに親交を深めていこうじゃないか」
「はい! よろしくお願いいたします……!」
「こちらこそ」
私の涙はいつの間にか、嬉し涙に変わっっていた。何年先になるか分からないけれど、ネプト様と一緒になるチャンスがあるということなのだから。それだけでも本当に喜ばしいことだったのだ。
「こんな落としどころでどうだろうか、フォルセ?」
「概ね問題ないかとは思いますが……お二人が親交を重ねている間に、アーチェ姉さまに貴族の恋人が出来たとしても仕方がない、という考えでよろしいでしょうか?」
「ああ、それで構わないよ」
「畏まりました、ネプト様。そういうことであれば、納得いたします」
フォルセの最後の質問がやや不穏ではあったけれど、ネプト様の言うようにいい感じの落としどころだったのではないだろうか? 寂れた教会の前でのリセット宣言というのも、運命を感じてしまうわ。
あとは……ジョンの墓参りに行かないとね。本人は死亡していないので、張りぼてのお墓になるんだろうけれど。
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