幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
上 下
41 / 60

41話 寂れた教会 その2

しおりを挟む
「アーチェ姉さまの話を聞いて、ジョンという人物がネプト国王陛下だと分かり……全ての元凶はこの教会なのだと思っていました」

「フォルセ……」

「姉さまはニーナ嬢やウォーレス殿との結びつきが強くなったのもこの教会での出来事が原因だと言っていましたが、それはネプト国王陛下が正体を明かさなかった……ジョンが生きていることを、もっと前に知らせていれば、今回のような事態にはならなかったと思うのです」


 フォルセの言っている意味は理解できる。おそらくは正論なのだろう。ネプト様も頷いているし……。


「フォルセ、あなたの言いたいことは分かるけれど……ネプト様の側室話とは直接は関係ないと思うのだけれど」

「直接関係はなくとも、私はどうしてもアーチェ姉さまをネプト国王陛下の側室にしたいとは思いません。不敬罪に問われるかもしれませんが、私はもっと姉さまには普通の幸せを満喫して欲しいのです」

「なるほど……それが、フォルセの本音というわけか」

「はい、ネプト国王陛下。国王陛下はどのように思っているのですか? 突然の告白もそうですが……スザンヌ様も愛しているのに、姉さまを一番に愛することは本当に出来るのですか?」

「ふむ、難しい質問だな。私の口から何を言っても、フォルセの疑念が晴れなさそうだ」

「そうですね……私は姉さまのことを愛しているのなら、姉さまを諦めて欲しいと心から思っていますので」

「フォルセ……」


 これがフォルセの本音か……完全にネプト様に敵意を見せているようだった。私のことを想ってくれているのは間違いないだろう。だからこそ、国王陛下が相手でも臆することなく自分の意見をハッキリと述べているのだ。

「フォルセの気持ちは理解できた。確かに国王である私からの告白の場合、アーチェの方から断るのは難しいかもしれないからな」

「そうですね……私の見立てではアーチェ姉さまは、今回の告白を受けようと考えているかと思います。それは国王陛下から告白されたから了承するのではなく、ネプト様自体を愛しているからだと思いますが」


 いつの間にか、フォルセには見抜かれていたみたいね……私は言葉を出すことが出来なかった。


「姉さまがネプト様の告白を受けるのは、この教会での思い出があるからでしょう。それ以外にも、7年間の交流もあるかとは思われますが……ネプト様がジョンであることを知った時の、姉さまの表情はとても嬉しそうでしたから」

「良く見ているのだな、フォルセ。本当に姉のことを大切に想っているようだ。私としてもとても嬉しいよ」

「ありがとうございます、ネプト様。そこで失礼を承知で申し上げますが……アーチェ姉さまのことを大切に想っているのはネプト様も同じはずです。大切に想われているのであれば……今回の告白はなしにていただけませんか? アーチェ姉さまにとって大切なのは、寂れた教会での出来事を完全に忘れることにあると思うので……」

「……」


 ネプト様は即答しなかった。無言になっている……。どのような返答が返って来るのかは分からないけれど、私は完全に蚊帳の外に追いやられてるようだった。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける

堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」  王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。  クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。  せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。  キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。  クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。  卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。  目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。  淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。  そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

処理中です...