幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
上 下
38 / 60

38話 見えてくるモノ その1

しおりを挟む

「さてと……国王陛下の側室になる可能性のある者に対して、建前で話すのは失礼だったわね」

「す、スザンヌ様……?」


 側近であるウィンスタートさんに言われた影響もあるのだろうけれど、彼女の雰囲気は先ほどまでとは明らかに違っていた。なんというのか……王妃様の貫禄が出ているというか。

 本当に22歳なの、このお方は……?


「王室、王家、王族……様々な呼び方はあるけれど、いわゆる王家というものは決して一枚岩ではないわ」

「は、はい……様々な派閥や、味方になっている貴族も、王子殿下ごとに違うというのは存じております」

「そうね。アーチェの言っているのは王子同士の王位継承争いのことだろうから、今は少し違うけれどね」

「そ、そうでしたね……申し訳ございません」


 そうだった……王位継承争いは今は起きようはずもないことだった。ネプト様が22歳という若さで即位されているのだから。起こり得るとすれば……私やスザンヌ様の子供が生まれた時だろうか?


「私にも今は陛下……ネプトとの子供は生まれていないけれど、もしも私とあなたで男の子が生まれた場合、王位継承争いの火種にはなるでしょうね」

「い、いえ……でも、通常は王妃様であるスザンヌ様のお子様が選ばれるはずではございませんか?」

「ふふ、まだまだ考えが甘いわねアーチェ。そう簡単にはいかないからこその王家なのでしょう? 後ろ盾など、様々な要素がそこには絡んでくるわ」

「あ、そういえば……」


 当り前の話だけれど、順当に子供が生まれた場合でも第一王子殿下が国王陛下になるとは限らないわけだ。それに、もしかしたら私の方が先に子供を産んでしまうかもしれないのだし。

「もしも、私のネプト様の間に子供が生まれたとしても……王位継承権を与えない方法も考えられるのではないでしょうか?」

「その方法はこの王国では慣例とは言えないわ。王家の一夫多妻制を重んじている国でもあるのだし。これは私達の世代よりはるか昔からの慣例ね。マクスレイ王家を1000年以上存続させるというご先祖様の悲願から始まったのよ」

「1000年以上……」


 マクスレイ王国は建国して200年程度しか経っていない。まだまだ先は長いということね……。


「まあ、細かいことは良いとして。ネプトの心はあなたに向いているのは間違いないわ。それに対して、私は嫉妬をしている……でも、あなたが覚悟を決めて側室になる、あの人と一緒になると言うのなら、私は全力でサポートをするわよ? 様々な派閥からの介入などもあるだろうけれど……その辺りは使用人からの教育も含めて万全にやっていくわ」

「スザンヌ様……」

「アーチェ、あなたはあなたが幸せになれる最善手を考えた方が良いと思うの。ネプトと一緒になること……愛を全てに優先することは果たして、あなたの今後の幸せに繋がるかしら?」

「……」


 私は即答できなかった。スザンヌ様がおっしゃった内容はほんの一部でしかないはずだ。私が王家に入る場合、色々な覚悟が必要になるだろう。それらを全て背負ってネプト様……初恋の相手であるジョンと一緒になる。

 私はもう一度よく、考える必要がある気がしてしまった。お父様やフォルセへの相談……フォルセは反対しそうだけれどね。それから……あの、寂れた教会へも行ってみた方が良いのかもしれない。原点へと戻り、精査する。それが今の私の課題だ。

「アーチェ……あなたはこの7年間、色々と大変な目に遭ったでしょう? ノーム伯爵家と懇意にしている家の者との婚約を考えても良いと思うの。もちろん、例の幼馴染ではなくてね。あなたが少しでもその方面を望むのなら、私が探してあげても良いわよ?」


 スザンヌ様は本心で言っているのか、それともネプト様を取られたくないだけなのか、判断が出来なかった。いえ、そんな言い方は失礼ね。もしも私が望んだ場合、相手を探してくれるというのは事実だろうから。

 私はスザンヌ様を見据える……現状での想いを、そしてネプト様に対する愛情を彼女に伝えなければならない。

 私は大きく深呼吸をして────。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福

香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
 田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。  しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。 「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」  婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。  婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。  ならば一人で生きていくだけ。  アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。 「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」  初めての一人暮らしを満喫するアリシア。  趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。 「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」  何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。  しかし丁重にお断りした翌日、 「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」  妹までもがやってくる始末。  しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。 「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」  家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します

矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜 言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。 お互いに気持ちは同じだと信じていたから。 それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。 『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』 サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。 愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。

処理中です...