34 / 60
34話 スザンヌの動向 その1
しおりを挟む(スザンヌ王妃視点)
「ウィンスタート、居るかしら?」
「はっ、こちらに」
「ありがとう」
私は専属の護衛であるウィンスタート・ドルチェを呼び出した。彼は影のような素早さで音もなく、私の前に現れる。スパイ活動などもこなせる、自慢の護衛の一人だ。
「陛下……ネプトのことは聞いているわね?」
「はい、伺っております。2日前に幼馴染であるアーチェ・ノーム伯爵令嬢に告白をされたとか……」
「ええ、そのようね。貴方はこの話を聞いてどのように思ったかしら?」
「わ、私でございますか?」
「ええ、貴方の意見は頼りになるから」
ウィンスタートは戸惑った様子を見せていた。質問の内容的には仕方ないかもしれないけれど、彼の意見は是非とも参考にしたいわ。
「僭越ながら申し上げます……」
「ええ、よろしくお願いするわ」
「国王陛下の考えには賛同できません。スザンヌ様というお方がいらっしゃるにも関わらず、側室になられるお方に愛の告白というのは……如何なものかと」
「なるほど、貴方はそういう意見を持っているのね」
「はい」
ウィンスタートの意見は正論にはなるだろう。ただし、国王と王妃が恋愛関係にならないのは、この国では通例だ。現に今までの歴史を振り返れば、側室を一番に愛した国王陛下は多かったはず。そう考えれば、今回の件は特に問題のある話ではないのだけれど……。
「ウィンスタートはこの国の歴史については知っているわよね?」
「もちろんでございます、スザンヌ様。通例を重んじる場合であれば、問題はないのかもしれませんが……ネプト国王陛下とスザンヌ様の間には愛情があると認識しております。それは、周囲の貴族達にも広まっているでしょう」
「そうだったわね」
私とネプトは年齢は22歳で同じ歳になる。正式な国王、王妃になる年齢としては若い方だけれど、それが災いしたのか、私達は愛を語ってしまったのだ。この時点で通例とは違う道を進んでいることになる。
「ウィンスタートが言ってくれた意見は正論だと思うわ。ネプトがアーチェ嬢に対して行った告白は、本来であれば間違っている。おそらくは正論でしょう」
「ありがとうございます、スザンヌ様。しかし……スザンヌ様は何か引っ掛かっておられるのでしょうか?」
流石は専属の護衛なだけあるわね、私の表情を上手く読み取っている。そこから私が、納得がいっていないことを想像したのでしょうね。
「正論を破るのがいけないのであれば、既に私とネプトの間で破られているわ。私達は一時的な感情を優先し、一緒になってしまった。つまり、ネプトが真実の愛としてアーチェ嬢を選ぶのは悪いことではないのよ」
「スザンヌ様……?」
私とネプトの関係とは違い、アーチェ嬢との関係はより本物に近いはず。もしも二人の愛情が本物なのであれば……私は何も言うことは出来ないわね。なぜなら私も、通例を破っている身なのだから。
「アーチェ嬢に会うことは出来るかしら? 一度、話しをしてみたいわ」
「畏まりました。早急に準備を致します」
「ありがとう、ウィンスタート」
まずはお互いに会ってみることが重要ね。相手の雰囲気などを見極める必要があるわ。私は彼女に会えることが密かに楽しみであった。ネプトが選んだ女性……興味が尽きないわね。
40
お気に入りに追加
3,625
あなたにおすすめの小説

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる