27 / 60
27話 ニーナは騙された その2
しおりを挟む「へっ……陛下、今なんとおっしゃったのですか……?」
「聞こえなかったか? 屋根に細工などされていないと言ったのだ」
ネプト国王陛下の言葉の意味が分からない、といった表情をニーナはしている。自分が騙されたことにすら、まだ気付いていないのかもしれないわね、この様子だと。
「ネプト様……それでは今までの話は……」
「アーチェにフォルセ、君たちには余計な心配を掛けたようで申し訳なかった。ノーム伯爵が教会の屋根に細工をしたなどという事実はないので、安心してくれ」
「で、では……父上は無実だということで宜しいのですね!?」
「そうだな。あくまでもニーナ嬢を騙す為のブラフということさ。ノーム伯爵、感謝する」
「いえ、とんでもないことです、国王陛下」
フォルセもようやく笑顔になっていた。お父様が何もしていないことが分かったからね。さて、ニーナはと言うと……まだ開いた口が塞がっていなかった。
「そんな……騙し討ちだなんて! 陛下、それが最高権力者のすることなのですか!?」
ニーナはようやく状況を理解できたようだけれど、ネプト様に対してとんでもないことを言いだした。その言葉、普通に不敬罪になりそうだけど……大丈夫なのかしら。
「騙し討ちとは、言い掛かりも甚だしいな。元々はニーナ嬢がジョン……私を脅そうとしたのが原因だろう? その結果、私は怪我をしてしまったのだからな。7年前のこととはいえ、これは大罪であるぞ」
「そ、それは……! も、申し訳ございませんでした……!」
ニーナはそれ以上何も言えなくなっていた。まあ、彼女が何を言おうともネプト様に怪我を負わせた事実は変わらないからね。でもこの場合、どのくらいの罪になるのかしら? ウォーレスは直接的には関わっていないようだけれど。
「ネプト様、ニーナはどのくらいの罪になるのでしょうか?」
「おや、気になるのか?」
「そうですね……もしかしたら、金輪際見ることが出来なくなるかもしれませんから……」
「えっ……嘘でしょう?」
ニーナは顔面蒼白になっていた。自分から出した話題でまさか、自らの首を絞める結果になるとは、流石に予想してなかったか……不敬罪などが追加されれば、表舞台に出て来れない可能性は十分に考えられた。
「な、7年前の話ですし……! そ、それにあれは事故だったのですし……! 私はネプト国王陛下だなんて、全く知りませんでした……!」
「そんな言い訳が通用するとでも思っているのか? まずはニーナ嬢の両親に連絡が必要になるな。それから……議会へも話を通しておこう。其方の罪は重い……覚悟しておけ」
「そ、そんな……! アーチェ、お願い……助けて!! 私達、仲の良い幼馴染だったわよね!? お願い!」
「ニーナ……」
まさかここに来て、私に縋って来るとは思わなかった。私のことを都合よく利用していた癖に……信じられない。
さてと、そんな私の大親友へ掛ける言葉と言えば……。
83
お気に入りに追加
3,625
あなたにおすすめの小説

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる