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26話 ニーナは騙された その1
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「父上! なんとか言っていただけますか!? どういうことなのです?」
「……」
フォルセの質問にお父様はすぐには答えなかった。その態度がフォルセをヤキモキさせている。前のパーティーでウォーレスにやった焦らしと似たようなものかもしれないけれど……お父様のそれは、技量からして違うような気がしてしまった。
「父上……! なぜ何も言わないのですか……!?」
「落ち着け、と言ったはずだぞフォルセ? 聞こえなかったのか?」
「ち、父上……」
少ない言葉でお父様はフォルセを黙らせた。この辺りの技量は流石としか言いようがない……。ニーナやウォーレスは今の状況をどのように感じているのかしら? 私はさりげなく二人に視線を移していた。
「ま、まさか……ノーム伯爵が、崩落しそうな屋根に仕掛けを施していたのか?」
「そ、そうね、ウォーレス。とても信じられないわ……でも、そう考えると辻褄が合うかもしれないですね……」
ニーナもウォーレスもまともな思考はしていないようだけれど、お父様が屋根に仕掛けを施したのだとしたら、二人にとっては良い方向に進むかもしれない。だからこそ、特にニーナはお父様が犯人であって欲しいと思っているはず。
ネプト様に国王陛下殺人未遂事件なんて言われたから、猶更でしょうね。
「とにかくだ、ニーナ嬢。何のためにジョンを脅そうとしたのか、話して貰おうか」
「そ、それは……はい。アーチェをその……」
「アーチェをなんだ?」
ニーナはかなり言いにくそうにしていた。理由はなんとなく分かるけれど、敢えて本人に言わせようとしている辺り、ネプト様の手腕? が垣間見える気がした。
「アーチェを……私達のところへ戻す為です……」
「そうだろうな。というより、それしか考えられない。ニーナ嬢がジョンを疎ましく思って、驚かそうとするなど。あの場所は危険だと認知させて、教会へ来させないようにしたわけだな?」
「は、はい……左様でございます……ネプト国王陛下」
「ジョンを遠ざけて、アーチェを自分の物にしようとしたといったところか。下衆な考え方だが、子供の割には機転が利くじゃないか。結果としてはジョンが死んだことになり、ニーナ嬢の思惑通りになったのだからな」
やっぱりそういうことか……ニーナも積極的な肯定こそしなかったけれど、否定をすることもなかった。私の幼馴染への固執は……ある意味ではニーナによって作られた、ということなのか。そう考えると本当に残念でならない。
「ですが、ネプト国王陛下……私は屋根の仕掛けや細工なんて知らなかったですし……あんなに屋根が崩落するなんて思わなかったのです!」
「ノーム伯爵にそそのかされて行ったわけではなく、あくまでも自分の意志で行ったと言いたいのだろう?」
「さ、左様でございます……! ですので、ノーム伯爵が細工を行ったというのであれば、私も被害者に該当するわけでして……!」
ニーナも相当に必死みたいだった。ウォーレスも自分に被害ことを祈っているのか、ニーナの言葉に頷いているようだ。でも、流石に被害者というのはあり得ないと思うけど。それに……。
「ニーナ嬢」
「は、はい……ネプト国王陛下?」
「ニーナ嬢が自らの意志で行った……その言葉を聞きたかったのだ。そして、屋根に細工がされていた場合、自分も被害者だと言うだろうと思っていたぞ。ノーム伯爵がニーナ嬢を騙したり、結託してそんなことを行っているとは思っていない」
「ど、どういうことでしょうか……?」
「簡単なことだ。寂れた例の教会だが……屋根の細工がされた痕跡などなかったのだからな。ゆえにノーム伯爵は全く関係がない」
そこまでネプト国王陛下は述べると、しばらく無言になった。皆の反応を見ているのだと思うけれど……私やニーナは勿論、フォルセ達も開いた口が塞がっていなかった……。
「……」
フォルセの質問にお父様はすぐには答えなかった。その態度がフォルセをヤキモキさせている。前のパーティーでウォーレスにやった焦らしと似たようなものかもしれないけれど……お父様のそれは、技量からして違うような気がしてしまった。
「父上……! なぜ何も言わないのですか……!?」
「落ち着け、と言ったはずだぞフォルセ? 聞こえなかったのか?」
「ち、父上……」
少ない言葉でお父様はフォルセを黙らせた。この辺りの技量は流石としか言いようがない……。ニーナやウォーレスは今の状況をどのように感じているのかしら? 私はさりげなく二人に視線を移していた。
「ま、まさか……ノーム伯爵が、崩落しそうな屋根に仕掛けを施していたのか?」
「そ、そうね、ウォーレス。とても信じられないわ……でも、そう考えると辻褄が合うかもしれないですね……」
ニーナもウォーレスもまともな思考はしていないようだけれど、お父様が屋根に仕掛けを施したのだとしたら、二人にとっては良い方向に進むかもしれない。だからこそ、特にニーナはお父様が犯人であって欲しいと思っているはず。
ネプト様に国王陛下殺人未遂事件なんて言われたから、猶更でしょうね。
「とにかくだ、ニーナ嬢。何のためにジョンを脅そうとしたのか、話して貰おうか」
「そ、それは……はい。アーチェをその……」
「アーチェをなんだ?」
ニーナはかなり言いにくそうにしていた。理由はなんとなく分かるけれど、敢えて本人に言わせようとしている辺り、ネプト様の手腕? が垣間見える気がした。
「アーチェを……私達のところへ戻す為です……」
「そうだろうな。というより、それしか考えられない。ニーナ嬢がジョンを疎ましく思って、驚かそうとするなど。あの場所は危険だと認知させて、教会へ来させないようにしたわけだな?」
「は、はい……左様でございます……ネプト国王陛下」
「ジョンを遠ざけて、アーチェを自分の物にしようとしたといったところか。下衆な考え方だが、子供の割には機転が利くじゃないか。結果としてはジョンが死んだことになり、ニーナ嬢の思惑通りになったのだからな」
やっぱりそういうことか……ニーナも積極的な肯定こそしなかったけれど、否定をすることもなかった。私の幼馴染への固執は……ある意味ではニーナによって作られた、ということなのか。そう考えると本当に残念でならない。
「ですが、ネプト国王陛下……私は屋根の仕掛けや細工なんて知らなかったですし……あんなに屋根が崩落するなんて思わなかったのです!」
「ノーム伯爵にそそのかされて行ったわけではなく、あくまでも自分の意志で行ったと言いたいのだろう?」
「さ、左様でございます……! ですので、ノーム伯爵が細工を行ったというのであれば、私も被害者に該当するわけでして……!」
ニーナも相当に必死みたいだった。ウォーレスも自分に被害ことを祈っているのか、ニーナの言葉に頷いているようだ。でも、流石に被害者というのはあり得ないと思うけど。それに……。
「ニーナ嬢」
「は、はい……ネプト国王陛下?」
「ニーナ嬢が自らの意志で行った……その言葉を聞きたかったのだ。そして、屋根に細工がされていた場合、自分も被害者だと言うだろうと思っていたぞ。ノーム伯爵がニーナ嬢を騙したり、結託してそんなことを行っているとは思っていない」
「ど、どういうことでしょうか……?」
「簡単なことだ。寂れた例の教会だが……屋根の細工がされた痕跡などなかったのだからな。ゆえにノーム伯爵は全く関係がない」
そこまでネプト国王陛下は述べると、しばらく無言になった。皆の反応を見ているのだと思うけれど……私やニーナは勿論、フォルセ達も開いた口が塞がっていなかった……。
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